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Estate.  作者: 本庄茉白
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9/15

Date 8/8

「すっ、げ……」

 思わず言葉が零れた。

「すごいでしょ?ここ、真宏に一回見てもらいたかった」

 サキが、微笑んで言った。

 サキに連れられて、小道を抜けた先にあった景色。

 それは、一面の向日葵畑だった。

 目の前に広がる景色は、ただ、遠い。

 真っ青な空と、真っ白な雲、明るすぎるくらいに輝く太陽。

 鮮やかな緑の葉に、太陽に向って精一杯咲いている黄色い花。

 見渡す限りどこまでも続く、絵のような景色。

 サキは黙っていたし、俺も声が出なかった。

 頬を掠めた優しい風が、一面の向日葵をそっと揺らした。

「真宏、中、行ってみない?」

「入っていいのか、ここ」

「うん。大丈夫。行こう」

 サキは、俺の手を取ると、向日葵畑の中へ足を踏み入れた。

 咲き誇る向日葵は、酷く背が高い。まるで競い合うように、太陽に向かって伸びていた。

 そう離れた位置にいるわけではないというのに、時折、その大きな葉に、サキの姿は隠されてしまう。

 ただ繋いだ手だけが、サキが、そして俺が、この場所にいる、証明だった。

「!」

 不意に、繋いだ手が離れた。

 ――――風。

 向日葵が、ざわめく。

 そして風が止んだとき、そこには何の音もしなかった。

 まるで、俺一人が、この世界に取り残されたように。

「サ……キ?」

 呟いた声は、多分届かない。

 俺は近くの花を掻き分けて、サキの姿を探した。

 掻き分けても掻き分けても、そこにあるのは、鮮やかな緑の葉と、黄色の花だけ。

 終わりの来ない、広い広い向日葵畑。

 ここは、本当に現実だろうか。

 いつしか俺は、向日葵の迷路の中で立ち尽くしていた。

 その時。

「真宏」

 すぐ傍で聞こえた、聞きなれた声。

 俺の存在を証明する、その声。

「どこ行ったのかと思った。いきなり居なくなんないでよ」

 困ったように、サキが微笑んだ。

「……バカ、それはこっちの台詞だ」

 思ったより、すんなり声が出た。

 きっと今、酷く俺は情けない顔をしているだろうと、どこかで思った。

 サキの手を引き寄せて、抱きしめる。

「え、え、真宏?」

「悪い。……ちょっとこうしてて」

 閉じ込めた腕の中に感じる、サキの熱。

 存在。

「真宏」

 俺を呼ぶ、サキの声。

 そして、行き場を求めるようにして、ぎこちなく回されたサキの腕。

「……ねえ真宏、大丈夫。俺は、ちゃんとここにいる。ここにいるよ、真宏」

 微笑みを伴ったサキの声が、耳元で聞こえた。


 大輪の向日葵が、風に揺れてざわめいた。

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