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ごめんね、この裏で食べてるよ


ニイカとの会話を切り上げ、世話人が出してくれた朝餉を食べながらミズキは思考を巡らせる。


相次ぐ殺し合いに絶望して服毒自殺とか。だとするなら、ニイカと話して不安を共有するなんてことするだろうか。胸の内を打ち明けて、さて、なんて踏み切るだろうか。自殺するなら誰にも恐怖と不安を打ち明けずに抱え込むが普通では。

他人に打ち明けて共有するなんて、へこたれずに立ち向かおうとする気丈な行動のあらわれじゃないか。

じゃぁやっぱり自殺の線はない。なら他殺だろうか。


誰がやった。そんなもの未嫁の誰かだろう。ラカや世話人たちがモミジに手を出す理由がない。外部からの侵入者という線もない。我らが一族の誰が本邸に忍び込むなんてことをするだろうか。

何のために。犯人が未嫁の誰かなら、おそらくライバルを減らすためだろう。


じゃぁどうやって。それはわからない。なにせ、自分はモミジの異能すら知らないのだ。


「ねぇ、モミジの異能ってどんなのだったの?」


膳を下げに来た世話人に訊ねてみる。知っているのかどうなのか確証はないがとりあえず。エンゲージを取り仕切る裏方、黒子の役割ならばある程度はラカから聞いているのじゃないかという淡い期待を込めて。


「毒を操る、と、鹿神様より伺っております」


知らないと返ってくるかと思っていたが、意外にも答えが返ってきた。


「毒? 詳しく教えてくれる?」


ラカから伺っているというならもう少し詳しく知っていそうだ。掘り下げを頼むと、わかりました、と世話人は淡々とした声で答えた。

曰く。モミジの家は医者の家系で、彼女は薬にも詳しかったし毒にも詳しかった。普段は自分の体液を毒物に変換するという異能でもって、害獣を駆除するための毒餌を作ったり、あるいは作物を害する虫などを避けるための忌避剤などを作っていたそう。

シンプルに他者を傷つけ、死に至らしめることができる異能だからこそその扱いには気をつけていたとか。自身の体液を変換した毒を詰めた小瓶を持ち歩いていたが、それは誰にも触れさせなかったと。世話人たちにも触れぬよう警告していたそうだ。


「なぁるほど……?」


と、いうことはその毒を逆利用されての毒殺とか。それが一番有り得そうだ。隣の部屋で寝ているニイカに悟られず殺すなんて、毒殺くらいしかないだろう。モミジ自身が毒を持っていたのならなおさら。


ふんふんと推理に打ち込んでいると、失礼します、と世話人が入ってきた。朝起こしに来たり食事を運んできたりと身の回りをする世話人たちではない。見知らぬ顔だ。世話人たちの中でも担当があって、きっとこの世話人は未嫁の世話以外のことを任されているのだろう。

まぁ、そんな個など置いといて。世話人曰く、話があるから座敷へどうぞと呼びに来たそうな。


「話?」

「えぇ。本日のエンゲージについて、です」


***


順番にいけば、今日はクズノとモミジの対決のはずだった。そのモミジが『病死』だ。その死の不審さはとりあえず置いておいて、対戦相手がいなくなったことでエンゲージはどうなるかは聞かないと。


呼ばれて座敷へ行く。本館の座敷にはすでにラカやクズノたちが揃っていた。昨日いなかったカエデもきちんといる。無理をしているのか、その表情は固くこわばり、青ざめてはいるが。


「あれ、遅刻? 待たせちゃった?」

「いいや。皆来たばかりだよ」


待たせるというほどの時間は経ってない。ふるりと首を振ったラカはそのまま口を開いた。


「さて、今日のエンゲージだけど……お休みにしようか」


対戦しようにもモミジは死んでしまっているし、繰り上げようにもシダリとニイカの心の準備はできていないだろう。

別に1日1戦と決まってはないが、何となくその流れができあがってしまっている中で、はい繰り上げて今日やれ、なんて言われても戸惑うだけ。1日1戦と決まってないのだし、だったら無理に繰り上げず、今日は何もない日にしたっていい。


「なら、私は不戦勝ってことでいいのよね? ね?」

「そうだね」


うん、とラカがクズノに頷く。やったぁ、とクズノが見るからにほっとした顔をした。


「よかった、やり合うなんて怖くてたまらなかったんだもの」


手合わせとして対決するだけでも怖い。それが殺し合いに発展するならなおさら。

それが免除されるというのなら嬉しい。なんと運がいいんだろう。


素直に喜ぶクズノを誰も不謹慎だとは言わなかった。

じっとりと嫌な沈黙が降りる。ラカは意に介する様子もなく微笑むだけだった。

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