◇289 新月の試練:「月を消してみせよ」
一体なにを企んでいるのかな?
「まぁよい。我の試練でも受けてみるがいい」
いよいよSin=ナルツキノミコトさんの試練だ。
一体どんな無理難題を言いつけられるのかな?
不安をよそに、フェルノは拳を振り上げた。
「どんとこーい!」
「来るな」
Nightは即座に否定する。Me=チルツキノコトさんの試練も大概だった。
私は「あはは」と笑って誤魔化すと、Sin=ナルツキノミコトさんは言い付けた。
「我の下す試練、試練。それは……月を消してみせよ」
また凄いことを言われちゃったよ!?
しかも今度は月を射抜くって話じゃなくて、月を消すってどういうこと?
(消すってことは、隠すのとは違うってことかな?)
ふと考えられる可能性。
例えば、Sin=ナルツキノミコトさんを目隠しして、「はい、月が消えました」が通用するのかな? 何となくだけど、しないと思った。
「月を、消す?」
「うむ。うぬ等に与えし試練など、精々その程度のこと」
「その程度ってレベルじゃないよ」
ボソリと思ったことを口にした。
吐露して零れ落ちたみたいだけど、流石に聞こえていないらしい。
よかったとホッとするのも束の間で、無理難題への糸口を導く。
「無論、何人が集まり束となろうが構わんぞ」
「つまり協力はありだな……人数が必要な試練か」
Nightは少し複雑なことを考えているみたい。
もしかして、協力して乗り越える試練なのかな?
Me=チルツキノコトさんの試練とは何処か重きが違う気がするけど、“月を消す”って?何だろう?
「あの、一つよろしいでしょうか?」
「なんだ、人間よ」
「月を消すというのは、比喩的な意味合いが強いのでしょうか?」
雷斬は恐る恐る、でも礼儀た正しく手を挙げた。
Sin=ナルツキノミコトさんに質問をする。
気になっていたことで、“比喩的な月”の可能性の話だ。
「フン。人間の考えることだ」
「では、よろしいのですね」
「……いいんだ」
それがありなんだ。ってことは、それでいいのかな?
何の月を消せばいいのか分からないけれど、多分お月様じゃない。
どの月のことを言ってるのか、明確に答えがありそうで、足りない頭を悩ます。
「ただし、枷を出そう」
「「「枷?」」」
「うむ。この社の中にあるものだけだ。加え、貴様らの妙な力は認めんがな」
条件を出されちゃった。もしかして、Me=チルツキノコトさんの件を怒ってるのかな?
Nightが作った立体物に不満があるみたいで、さっき作った月の置物を消すのはダメになっちゃった。あー、如何しよう。しかもこの社の中ってことは、何処かに月に関するものがあるのかな?
(月に関するもの……いっぱいあって分からないよ!)
ここは満月神社だ。今は新月神社なのかもしれないけど、結局は同じ。
至る所に視線を向ければ、月が飾られている。
月に関するものはいっぱいあるってことで、この中かから何を消すのが正解か分からなかった。
「理解したなら早く行け。我は気が短いのでな」
突き放されちゃった。でも、やるべきことは分かった気がする。
まずは行動を起こす前に、一回集まる。
私は「みんな、一回話してみよう」と声を掛けた。
「どうしたのー?」
「Sin=ナルツキノミコトさんが、月を消してみせよ、って言ってたよね? どうしよう」
「んー、私には分からないよー」
フェルノは考える前から放棄していた。
考えようとしてくれているけれど、首を横に捻っている。
ポカンとしていると、私はNightを頼ることにした。
「Night、どうしよう?」
「条件提示はされた。答えは見えている」
「答えって、いっぱい月はあるよ?」
満月神社or新月神社、ここには月の要素が多い。
別に飾りって言っても、飾り付けが多い訳じゃない。
色んな所に月の要素が垣間見えるだけで、何処の何を消したらいいのか不明だった。
「Nightはなにを消したらいいのか分かるの?」
「一番象徴になる物だろ」
「象徴……扁額!?」
「おー、アレか―」
ここに来て扁額が関わって来るとは思わなかった。
普通に看板としての役割かなって思ってたけど、違ったみたいだ。
いやいや、それは思わなかったよ。でも、どうやって消すのかな?
「雷斬、どう?」
「そうですね。扁額には、月の模様はありません」
「嘘でしょ? ここだと思ったのに」
雷斬とベルは鳥居をチラッと見た。
視線を飛ばして、頭上を見上げると、首を捻っている。
何かあったみたいで、私は二人に訊ねた。
「雷斬、ベル、どうしたの?」
雷斬とベルは困り顔を浮かべていた。
先に扁額を見たけど、思ったものが無かったみたい。
もしかして、ここじゃないのかなって不安になる。
「Night。話は聞き耳を立てていたから分かるわよ。でも、それっぽいものが無いわよ」
「なにを想像していたんだ?」
「月が描かれていると思ったのですが、違ったみたいです」
二人は先手を打ってくれた。扁額に月があるって思ったんだ。
でも、月のマークは何処にも無い。つまり、Nightの考えは間違っていたのかな?
ここが一番それっぽいし、色んな可能性はあるけど、ここを消せばSin=ナルツキノミコトさんも認めてくれると思った。でも、そもそも月が描かれていないなら、消すことも出来ないんだ。
「それじゃあ、もっと無難な形で探す?」
「例えばなんだ」
「えっと、由緒板とかかな?」
まだ由緒板を見ていない。
絶対に月のことが書かれている筈で、ここを消せばいいのかも。
そう思うと、Nightは「ふっ」と不敵に笑う。
「確かにお前の言うことは正しいな」
「そうだよね。それじゃあ……」
「だが、この神社に由緒版は無い」
「あっ!?」
そう言えばそうだった。この神社には何故か由緒板が無い。
もしかして、これはそのための伏線だったの!?
私は困り顔を浮かべると、Nightに頼った。
「そうだよ。それじゃあどうしたら……」
「他にもあるだろ、月が描かれている物が」
「月が描かれている、ですか?」
雷斬が首を捻っていた。
けれど何か察しが付いたのか、ベルと顔を見合わせる。
この神社の中に、他にちゃんとした月があるってことだよね?
何処にあるのかな。でもそれって、引っ掛けじゃないよね?
「ああ。なにも真っ向から相手をする必要は無い。この神社にあるものなら何を使ってもいいんだ。試してみるぞ」
何だかNightが嫌な奴の顔をしていた。
絶対に何か企んでいるんだよ。
もしかして、また頓智かな?
「それじゃあ聞かせて、Nightの考え」
私は息を整えてから、Nightの話に耳を傾けた。
幸い、Sin=ナルツキノミコトさんには聞こえていない。
瞼を閉じ、私達を待ってくれていて、Nightの話に「えっ?」ってする顔も隠し通した。
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