兵士への憧れ
私は一人、ぬいぐるみを買いに電車で少し遠くの街まで来ていた。
今日の目的はお気に入りのメーカーから発売された手のひらサイズのクマのぬいぐるみ。
目的地までおよそ半分ほど進んだところで、とてつもない轟音が上空から響いた。
しかし、その音を誰も気にとめない。
それは私も同じ。
今日は偵察の日。
その為の上空扉が開く音だ。
偵察は予めテレビやラジオ、ネットニュースや新聞などあらゆるメディアを通じて大衆に伝えられる。
そしておよそ30分後、再度大きな音が鳴り響く。
今回の轟音は偵察部隊が帰還するための音だ。
当然、機械獣の襲撃なんてものは伝えられない。
歩道を歩いていた見知らぬ男性が空を指さし、大声をあげる。
「上を見ろ!機械獣の脱走だ!!」
一瞬にして背中や額に大量の冷や汗が滲む。
バッと上を見上げるとライオンのような容姿をした機械獣が真っ逆さまに落下してきている。
それを目撃した全ての人がその瞬間パニックに陥る。
徐々に機械獣の姿が大きく、そして鮮明に見えるようになると、呆けた意識は体に帰り、私もまた周囲と同じようにパニックになる。
「おい!応援が来たぞ!」
再度上を見上げると赤色の機体が機械獣目掛けて一直線に向かってくる。
そして私の上で機体が激しく衝突する。
私は来た道を必死に辿り、家へと逃げる。
その途中、小さく震えている女の子に出会った。
年齢は私より3つほど下だろうか。
「いっしょに逃げよう?」
女の子は青ざめた顔で私の顔を長め小さく頷く。
女の子の手を取り一目散に走り出す。
機械獣は赤い機体のナックルを受け、後方へ吹き飛ぶ。
しかし機体を翻し上手く着地、再度大きく赤い機体に向けて跳ね、鋭いツメを振りかざす。
私はそんな様子を見るような余裕などあるはずもなく、ただひたすら自らの命と女の子の命を守るべく走り続ける。
瞬間、これまで以上の金属音が響く。
思わず私も振り返りとちょうど私の頭上を機械獣が通り――――――
私の、目の前に着地した。
私を含め周囲の人間のパニックは最高潮に達する。
今来た道を引き返すようにして逃げ惑う私たちは機械獣からすればさながら隊列を乱されたアリ程度のものだろう。
「はっ、はっ、お姉ちゃ―――――あっ!」
周囲にもみくちゃにされ、私は女の子と固く握っていた手を離してしまった。
そのまま声をかけることも出来ず、女の子の姿は人の山に埋もれてしまった。
「それで、そのあとはどうなったの?」
葉菜が尋ねる。
「私はなんとか家まで着いてお父さんとお母さんといっしょに車で逃げることが出来たんだけど……」
女の子のその後の安否はわからない、と話すと葉菜の表情も曇ったものになる。
「あのあと人類側の機体が機械獣を倒して事態は収束したけど……あの事件で何十人もの人がなくなったんだよね」
その死者の中に女の子が含まれていないことを切に願う。
事件の発端は実験台として機械獣を破壊せず持ち帰った際、門をくぐる際にトラブルが発生。
逃走を許してしまったがために起きた事故だと言うことだ。
今思い出しても背筋が凍るような体験。
それがきっかけで兵士になりたいと思ったなんて、なかなかに辻褄が合わない話だと思われるだろう。
それでも私は思った。
あの時の赤い機体は最高にかっこよかったと。
命を賭して敵と戦う兵士に最高の憧れを抱いた。
私も、人々を守るヒーローになりたいって。
怖いのは確か。
死にたくなんてない。
それでも、この思いは今も変わっていない。
「ともかく紗愛が無事でよかったよ……きっと、その女の子も無事だよ」
「……うん、葉菜、ありがとう」
今は私の夢に両親も賛同してくれている。
自分の道を進みなさいと、背中を押してくれている。
「葉菜との約束のためにも、負けられないもんね」
「そうだなー……いつになるのかな」
「わからないね……でも絶対、いつか叶えよう」
「もちろん!頑張ろうね、紗愛!」
イロハです!こんばんは!
あるいはおはようございます、こんにちは!
作者は最近猛烈な首と肩の凝りに大層
困っております。
日頃からなるべく背筋を真っ直ぐにして
生活をするように心がけるようにしては
いるんですがなかなか背中が曲がる
癖が抜けなくて……治ってほしいです。(悲)
今回のお話はそこそこ大切なお話です!
楽しんで頂けたでしょうか!
また次回もよろしくお願いします!
それではっ!さらばです!
【次回投稿予定日は 7月14日 です】




