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鉄の世界に咲く花は  作者: イロハ
二捻生
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122/247

緊張への対処

『フィリ!』


『大丈夫だったのか!?』


初の実機訓練を終えたフィリが、よろけた足取りで待機室へと帰ってきた。

入口付近に立つ彼女はただでさえ白い肌を、青みがかったものにしており、普通の状態でないことは明らかだ。

傍目に見ていても事故、トラブルであったとわかる先の出来事が、珍しくフィリを堪えさせたのだろうか。


『こ、怖かったんだよ……………』


らしからぬ、弱々しい声を吐きながら、倒れ込むように近くにいたマヤへもたれかかる。


『ちょっと!大丈夫なの!?』


『フィリ、これからマヤが訓練の番だから、こっちおいで』


手を差し出し、ぐったりしているフィリを呼ぶ。

フィリはそれに従い、ヨタヨタと葉菜の手に抱かれにきた。


『じゃあ私行ってくるから。フィリをよろしくね』


『うん、頑張ってね』


『なんか、母親と保育士と園児の図だな』


朝、仕事へと向かう母親が、信頼のおける保育士へ我が子を預ける構図が完成している。

フィリのおかげで緊張を忘れたらしいマヤが、普段の足取りでグラウンドへと向かっていった。


=======================



『それで、フィリ、一体どうしたの?』


私たち3人は、フィリからの話を聞くために一旦部屋の外へ出た。

腕の中でうずくまるオレンジの毛玉のようになったフィリに対し、優しく語りかける。

日頃から年齢よりよっぽど幼く見えるフィリだが、今の様子ではリアの言う通り本当に園児のようだ。


『えっっとね、フィリも、よくわかってないんだけど………………』


薄氷のような声で、事について話し始めるフィリ。

その右手は葉菜の服の裾を掴んでおり、服のシワは話が進むにつれ、より多く、深くなっていく。


『リアも葉菜も、今日はなんだか様子がおかしいって、言ってたじゃん?』


『言ってたな。今日のフィリはいつにも増してやかましかったぞ』


朝、登校してからのフィリの言動を思い返す。

他の子へのスキンシップが多かったり、そもそも声が大きかったりと、野性味がマシマシだった。


『多分ね…………………………これが、緊張だと思うんだよ……』


『フィリが……………緊張?』


少々驚いた様子で、リアが聞き返す。


『うん、緊張しちゃったか』


葉菜もリア同様、意外ではあるが、その動揺をフィリに悟られないよう、綺麗なオレンジ色の髪をすきながら話を促す。


『今まで、緊張なんてしたことなかったから、どうすればいいのか分からなくて………………。それで、落ち着かなかったんだよ』


フィリの発言が、少しずつ震えを帯びていく。

縮こまっている体が、より萎縮していくのを感じる。


『落ち着けなくて、無意識に暴れてたってことか』


『それでも、ちゃんと原因が把握出来てる。偉いよーフィリ』


そう言って、葉菜は右手でフィリの体を抱き込む。

すると、フィリが花をすする音が聞こえ始めた。


『そのまま……………………落ち着き方が分からなくて、胸も、お腹も……………フワフワしたまま、P1に乗ったら………………』


『パニックになっちゃったんだね』


途切れ途切れのフィリの言葉を引き継ぐと、フィリの首が上下に動いた。


『しょうがないね、初めてだもんね。よく頑張ったよ』


いよいよ、フィリの涙腺が決壊し、泣き出してしまう。

それが緊張からなのか、事故の恐怖からなのか………………はたまた(いず)れでもないまた別の理由なのかは分からないけれど。

リアは、何も言わずに待機室へと戻っていった。


葉菜もまた、それ以上言葉を発することなく、ただフィリが落ち着くまで瞳を閉じて、フィリの背中をさすっていた。

みなさまこんばんは、イロハです。

あるいはおはようございますこんにちは。


第122話を迎えました、

お読みいただきありがとうございます。

今回は少々ネガティブめな内容となっております。

久しぶりにこういったお話を書いたような

気がしますが、いつもと違って新鮮ですね(笑)

フィリの意外な面を存分に

出せたのではないかと思っております。


それでは、今回はここで終わります。

また次回もぜひよろしくお願い致します。

宜しければ、感想をくださると嬉しいです!


【次回投稿予定日は 7月15日 22時 です】

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