表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/40

#014「点と線」

#014「点と線」

@桑港の出版社

春麗「リハビリテーションも兼ねてる訳であるし、とりあえず試用期間として一ヶ月契約ということで良いね?」

東海林「はい。よろしくお願いします、チュンリー」

春麗「こちらこそよろしく頼むよ、トンハイリー」

春麗、ソファーから立ち上がり、テーブルにつく。

春麗「さて。そろそろ解凍できて食べ頃になっただろう。君も一口どうだい?」

春麗、箸で肉を一枚つまむ。

東海林「いえ。火の通ってない肉は、ちょっと」

春麗「そうかい。それじゃあ、一人でいただくよ」

春麗、肉を食べる。

――よく食べるものだな。ユッケとかタルタルステーキとか、生のまま食べる料理があるのは知ってるけど、どうしても抵抗感がある。仮に衛生面に全く支障が無いとしても、だ。

春麗、箸で部屋の奥を指す。

春麗「アー、そうだ。食事中は暇だろうから、その辺の棚を漁ってごらん。シュエメイのイラストがあるはずだ」

東海林「拝見して良いんですか?」

春麗「我が許可する。もっとも、見られて困るようなものは持ち去っただろうけどね」

東海林、部屋の奥へ行き、棚に積んである紙束を見ていく。

――透明感のある、繊細なイラストだな。アッ、詳しい図解もある。自分にも、こんな緻密な絵が書けるだろうか? いや、チュンリーは店のポップを見て頼んだってことは、こういうタッチの絵を望んでるとも限らないのか。ウーン。

東海林「つかぬことを伺いますけど、シュエメイは、どんなかたなんですか?」

春麗「どんなって、何? スリーサイズ? 音域?」

東海林「いえ、容姿や歌唱力ではなくてですね」

春麗「血圧? ガンマジーティーピー?」

東海林「健康状態でもありません」

春麗「真面目だね。軽いジョークだよ。そうだな。種族は百合の亜人で、近寄ると仄かに甘い香りがする。普通の食事も出来るけど、液体肥料と日光だけでも生きていける体質の持ち主。良くも悪くも、マイペースでおっとりとした性格」

――植物系の亜人も居るのか。この分だと、菌類や無生物系の亜人も居そうだな。

春麗「ついでに彼女の夫についても軽く触れておくと、彼の名前はシーヘイ。日系三世で見た目は日本人だけど、それほど日本語は達者ではない。言葉を交わさずとも手を触れるだけで、触れた相手の思考や感情を読み取ることが出来るテレパシー能力の持ち主。二人の出会いは州立大学。彼が教授で、彼女は学生。よくある出会いのパターンだな」

――教員と、その教え子が恋に落ちたのか。歳の差や種族の差は問題にならなかったのだろうか? 愛があれば関係無いとは言うけれど、現実には障壁になりそうなものだ。

東海林「失礼ですけど、二人は何歳なんですか?」

春麗「シュエメイは君と同じ二十一歳で、シーヘイは二百歳を超えてる。ヒューマノイドは長寿だからね。ちなみに、二人の名前を漢字で書くと、こうなる」

春麗、チョークで近くの黒板に縦書き。

――雪梅と書いてシュエメイ、石黒と書いてシーヘイか。それにしても、年齢に関して予想の斜め上の答えが返ってきたものだ。いや、待てよ。これも自分をからかうための冗談なのかもしれないな。この場で本人に確認をとれない以上、話半分に聞き流しておこう。 

春麗「シュエメイも、もう臨月らしいからね。無事に産まれたら一緒に祝福に駆けつけようじゃないか。我が言葉を尽くして説明するより、実際に会ったほうが手っ取り早かろう」

――知り合いの輪がドンドン広がって行くものだな。亜人って、案外に友好的な生き物なのかもしれないな。

春麗「コネクションは多ければ多いほうが有利だ。もちろん、相互に依存関係に無いことが前提だけどね。伊達に長生きしてないから、その気になれば全世界を恐怖政治で支配できるだけの人脈を有してるんだけど、あいにく我は独裁者というものに魅力を感じないのでね。カッカッカ。――ごちそうさま」

春麗、箸を擱く。

――得体の知れない恐ろしさも含んでるから、接触には細心の注意が必要だけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ