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ブレイブリバース!~二人で魔王倒せるの?会社員なゲーマー勇者と器用貧乏な吟遊詩人が、データ通りじゃないRPG異世界(101周目)を独自ルートで攻略した話~  作者: 鳴海なのか
プロローグ 旅立ちの日

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第5話「よし、今後の計画を立てよう」【イラスト/世界地図ver.1】


 行き倒れそうだった俺を助けてくれた守衛の男。

 彼は『ウォード・アクランド』と名乗った。


 ゲームでも、彼は守衛としてエイバス正門を守り続けていた。

 ただし何回話しかけても「……ここはエイバスの正門だ」しか台詞が無い。

 門の前から1歩も動かない、地味なNPCノンプレイヤーキャラクターでしかなかったのだ。


 そんなウォードが普通に喋ったり、門から離れて動いたり。

 まさに、現実ならではの光景というやつだろう。




「ではウォードさん、明日の夜また!」

「おう。楽しみにしてるぞ」


 翌日の夜にウォードと飲む約束を交わした俺は、正門の中へと入っていった。





*************************************





 エイバスは、別名『職人の街』とも呼ばれている。


 税金も物価も安いし、港もあるから輸出入にも向いている。

 これに目をつけた生産系の職人たちが多く住みつき、この街でアイテムを作っては他へ輸出する、という産業が盛んになった。


 エイバスならではの「来るもの拒まず」な気風きふうと活気に惹かれる者も多い。

 他国から流れてきた人々が事業を始めたり、雇われ労働者として働いたり。

 そんなサイクルが続いた結果、辺境の割には発展している街である。





「すっげぇ…………本当に……本物の、エイバスだ……!!」


 俺の目の前に広がるのは。

 この世界で初めての、活気あふれる()()の街並みと群衆だった。




 エイバスはちょうど平日の夕暮れ時。

 多数の労働者の仕事が終わり、街へと繰り出し始める時間帯。

 繁華街はんかがいには飲食店の明かりが並び、笑い合う人々でごった返している。

 一見すると、日本の飲み屋街にもどこか近い。


 だがすぐに違うと分かるはず。

 地球じゃお目にかかれないものが、そこかしこに溢れているからだ。




 例えば、屋台で「特大の串焼き」を売る若いお兄さん。

 自家製のタレを塗って串に刺した大量の肉を焼きながら実演販売中だ。

 使っているのは、()き火でも七輪でもガスコンロでもない。


 ――そう、【火魔術】だ。


 火の形状や色味を自由自在に派手に変え、パフォーマンスで客の足を止める。

 肉とタレが焦げる香ばしい匂いもあいまって、売れ行きは好調のようだ。



 街に暮らす“人”は人間だけじゃない。

 獣の耳や尻尾を生やした獣人だって、当たり前のように馴染んでいる。

 ゲームだと、エイバスの住民は人間族が8割、他の種族が2割って設定だった。


 店先の看板や貼り紙の文字も、日本じゃ見ないものばかり。

 最も普及している共通言語(ラグロス)文字をはじめ、様々な独自文字が使われている。

 これがゲームの攻略ヒントになることも多く、時々俺も解読に挑戦していた。

 まぁ今は神様の『翻訳アイテム』のおかげで、ストレートに読めるわけだけど。






「……とはいえ、まずは冒険者ギルドに行かないと」


 幸い建物の配置もゲームと変わらない。


 ギルド方面へと歩きながら、【収納(アイテムボックス)】から1枚の紙を取り出した。

 神殿のエレノイアに「エイバス到着後、冒険者ギルドへ入る前に目を通してくださいね」と渡されたメモ書きである。



「え~と、何々……」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タクト様へ


無事にエイバスに到着されたようで、何よりでございます。

さて僭越せんえつながら、滞在にあたっての助言をさせてください。


●“人の口に戸は立てられぬ”と申します。現段階では勇者であると明かしてはなりません。神殿におきましても、(わたくし)とイアンだけの秘密といたします。


●生い立ちを下手へたに語っては、ボロが出る可能性がございましょう。しばらくは打ち合わせ通り「神殿前で倒れていたのをイアンが見つけ介抱した。その前の記憶は一切ない」との設定を貫いていただければ幸いです。


●お勧めの宿屋は『エイバス野兎(のうさぎ)亭』です。手頃な値段で個室を借りられる上、ご主人も奥様も誠実な方だと伺っております。


●冒険者ギルドでは「原初の神殿の紹介で、ダガルガ・ボア様へお会いしたい」とお伝えください。紹介状と手土産をお渡しいただければ話が伝わるかと思います。


●紹介状は『記憶喪失の男が自立できるよう、冒険者の基礎と剣術を教えてほしい』との内容でございます。詳しくはダガルガ様にお尋ねくださいませ。冒険者としても剣士としてもベテランで、エイバスはもちろん世界中に顔が広い御方です。


以上となります。

タクト様の旅路に神様の祝福がありますように。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「……エレノイア様って10代前半のはず……あれぐらいの年頃の俺には、こんな文章書くの絶対無理だったな」


 細やかな気遣いにも感心しつつ、俺は石畳の中央通りを進んでいた。





*************************************





 ややあって冒険者ギルドの前に到着。

 俺はここで首をかしげた。


「……あれ? 部屋の明かりが付いてない?」


 ギルドの扉には、見慣れない看板がかけてあった。



・・・・・・・・・・

Closed

営業時間:8時~18時

・・・・・・・・・・



「閉まってんじゃん! まじか……」


 ゲームではギルドをはじめ、全ての商店が24時間営業だったはずなんだが――



 ――待てよ。

 さっき、神様が「気をきかせての、食事や睡眠や掃除や洗濯なんぞの必要性をはじめ、楽しみを邪魔しそうな要素は無くしておいてやった」とか言ってたな。


「もしかしてそれ、勇者(プレイヤー)だけじゃなく全キャラに適用されてたのか?」


 そういえばゲームは、守衛のウォードもずっと正門を守り続けていた。

 普通に考えて、休みもせず永遠に立ち続けるなんて無理な話だ。


 ギルドへの訪問は翌日に延期し、まずは今夜泊まるための宿を探すことにした。





*************************************





 エレノイアお勧めの『エイバス野兎亭』は、中央通り沿いにある小さな宿屋だ。


 ゲームでも泊まれるから、探索拠点にしているプレイヤーも割といた。

 といってもブレリバ内では睡眠をとる必要が無い。

 HPやMPなどの「宿泊による回復効果」がお目当てである。


「確か野兎(のうさぎ)亭の店名の由来って、近くの森に野兎(ワイルドラビット)がよく出るからっていう、割とそのままな理由だったな……」


 そんなゲーム設定を思い出しつつ歩くうち、特徴的な野兎亭の看板を見つけた。




 中へ入り、カウンターで作業をしていた宿の主人に話しかける。


 飛び込みだったが、個室に空きはある模様。

 値段は1泊朝食&共同浴場付きで25R(リドカ)

 手持ち――100R(リドカ)のみ――と相談し、ひとまず1泊分だけ料金を支払う。

 ついでに主人に聞いてみた。


「ちなみに、この辺で『生活雑貨を買える店』って無いですか?」

「あるっちゃあるけど……この時間だと、飲み屋以外は閉まってるよ」


 だが、体を拭く布や紙や筆記用具等なら多少在庫があるとのこと。

 別料金――まとめて5R(リドカ)――で色々分けてもらうことができた。




 先に共同浴場での入浴を済ませてから、あてがわれた客室へ。

 6畳ほどの部屋には、シンプルな木製ベッドと椅子とテーブルが1つずつ。


 扉を閉めるなり、ブーツを脱いでベッドに飛び込む。

 お手頃価格の宿泊料金の割には、寝心地がいい。

 このまま寝入ってしまいたいぐらいだよ。


「はぁ……長い1日だった……」


 いつも通り起きて、会社に行って帰ってきて。

 ゲームクリアしたら異世界に召喚されて、神様に会って。

 神殿で話を聞いて、光魔術を使えるようになって。

 魔物を討伐しまくって、空腹で行き倒れそうになったところを助けてもらって。

 街に来たら、冒険者ギルドが閉まってて、そして今ココ(宿屋)。


「まぁでもギルドに行く前に考える時間ができて、案外良かったかもな……よっ」



 頭を切り替え、ベッドから勢いよく降りて椅子に座る。



「さて、今後の計画でも立てますか!」


 この世界(リバース)に来てから初めて、せっかくゆっくり時間がとれたんだ。

 今後のためにも、まずは状況を整理したい。

 あと「当面の目標」「今後の方針」だけでもザックリ決めておきたいよな。





 ひとまず、しまいっぱなしの【収納(アイテムボックス)】の中身確認から始めてみる。


 ――アイテムボックス、アイテム一覧。


 ゲームの要領で念じてみると、俺の前にウィンドウが飛び出してきた。

 ついでに「詳細」と念じて説明も加えておく。


「だいぶスキルを使いこなせてきた気がするな……ん? 思ったより手持ちアイテム増えてるかも」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ■アイテム一覧■

神の翻訳首飾りLV1:所持していると、スキル【言語自動翻訳LV1】使用可能

神の攻略知識人形LV1:所持していると、スキル【攻略サイトLV1】使用可能

綿(めん)の布(×5):綿でできた厚手の布

庶民(しょみん)の歯ブラシ:一般に広く使われる、安い歯ブラシ

庶民の石鹸(せっけん):一般に広く使われる、安い石鹸

庶民の紙(×10):一般に広く使われる、安い紙

筆記用具セット:筆記用具の詰め合わせ

錆止めの鉄箱:錆びないよう加工された、丈夫な鉄の箱

エレノイアのメモ:エレノイアがタクトの為に書いたメモ書き

エレノイアの紹介状:エレノイアがダガルガに()てて書いた紹介状

エレノイアの手土産:エレノイアがダガルガの為に用意した手土産

鉄鉱石・小(×56):生産用素材

鉄鉱石・中(×8):生産用素材

石炭・小(×21):生産用素材

70R(リドカ)この世界(リバース)の共通通貨


 ■神の一言メモ■

収納アイテムボックス】にしまっている間は時間が経過しないんじゃ。

生き物や魔物はさすがに無理じゃが、それ以外の自分の持ち物であればなんでも入るからの、料理とか食材とか腐りやすい物の持ち歩きに便利なんじゃよ。できる限り食べ物は多めに持っておくがよかろう!


その…………さっきは、すまんかったのう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「!!!!! ……あの神様が……謝った、だと?!」


 驚きで固まる。





 ……気を取り直し、1つずつアイテムをチェックしていこう。


「ん~、やっぱり上2つのアイテムはすごいな……この世界の文明から考えると、絶対に世に出しちゃいけないやつだ。あとは布と歯ブラシと石鹸に、紙と筆記用具、と。……ん? 『錆止めの鉄箱』ってなんだっけ?」


 一瞬考えたところで。

 マントを掘り出したとき、箱を【収納(アイテムボックス)】に放り込んだのを思い出す。あれか。


「で、エレノイア様の3点セットと。手土産ってなんだろ? ま、中は見ずにそのまま渡すのが礼儀だよな! そんで、鉄鉱石に石炭は魔物討伐のドロップ品っと……え、こんなに溜まってんの?」


 そういや魔物を1体倒すごとに、何かのアイテムが1個ずつドロップしてたな。


「じゃ俺、85体も倒してたのか。初戦闘(バトル)の割にがんばったなー……これ、いくらで売れるんだ?」


 俺の声に反応するように、ウィンドウ更新。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

名前 鉄鉱石

種別 素材

売却目安価格 小/1R(リドカ)、中/2R(リドカ)、大/3R(リドカ)


名前 石炭

種別 素材

売却目安価格 小/2R(リドカ)、中/4R(リドカ)、大/6R(リドカ)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「売却目安価格はゲームとそんなに変わらないな。てことは買い取りもゲーム通り冒険者ギルドでやってくれるのか? ……明日聞けばいいか。そんで……鉄鉱石と石炭が、仮に目安価格で全部売れたとして……えーっと」


 紙と筆記用具を取り出し、計算してみる。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

鉄鉱石・小 1R(リドカ)×56個=56R(リドカ)

鉄鉱石・中 2R(リドカ)× 8個=16R(リドカ)

 石炭・小 2R(リドカ)×21個=42R(リドカ)


合計:114R(リドカ)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「手持ちが70R(リドカ)だろ。合わせて184R(リドカ)てことは、日本円に換算すると、全財産が約18400円……うわ、生活するのも厳しそう……最低でも食費と宿代だけは何とかしないと」


 当面の目標は『資金稼ぎ』だな。

 具体的には森へ(もぐ)って魔物を倒しまくるのが先決。

 話はまずそれからだ。


 街で暮らす以上、何かにつけてお金は必要。

 だけど、お金さえあれば大抵のことは何とかなるもんだ!





 あと、今後の方針も考えておきたい。


 色々不安もあるが、俺は『Brave(ブレイブ) Rebirth(リバース)』が大好きだ。

 まるでその中に入り込んだような今の状況が、正直楽しくてしょうがない。


 でもゲームには、分岐がたくさんある。

 全部を楽しみ尽くすのは難しい。

 100周した俺だって全て遊びきれてないんだから、絶対無理に決まってる。

 それでも今のうちに方針を決めておけば、後悔しにくくなる気はする。


「にしてもゲーム(架空世界)この世界(現実世界)で仕様が結構違うのは……やっぱり気になるよな」



 ゲームの出来事(イベント)が、そのまま現実でも起きていた。

 自分が未来を知ってるみたいで、思わずニヤッとしまう。


 だけど既に、ゲームに無かった出来事(イベント)も発生している。

 今日1日だけでこの量だ。

 きっと先に進めば進むほど、何かがずれてくるんじゃないか……?


 ひとまず「気になること」をザッと書き出してみる。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 <架空世界(ゲーム)のリバース>

●食事・睡眠は不要で、店も24時間営業

●生活品・寝床は不要

●攻撃・詠唱はボタン押すだけでOK

●武器・防具はボタン押すと自動装備

●アイテムは入手すると自動収納

●神様とはスタート時に会うだけ

●初期スキル2個


 <現実世界(この世界)のリバース>  

●食事・睡眠が必要で、店の営業時間が短い

●生活品・寝床が必要(そのぶんお金かかる)

●攻撃・詠唱は動いたりイメージ固めたり

●武器・防具は自分で装備

●アイテムは、自分で拾って収納

●『神の一言メモ』で神様と会話できる

●初期スキル9個


 <ゲームに存在しないはずのイベント>

●神様やエレノイアとの会話(※ゲームは機械的だった)

●勇者であることを隠すよう言われた(※ゲームは勇者で通してた)

●【偽装(ぎそう)】を習得(※ゲームで見たことないスキル)

●イアンと剣装備→光魔術を試した(※ゲームに無かった)

●ウォードに命救われ→飲む約束(※ゲームのウォードは機械的なNPC)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「うん、こんなもんか……あ、忘れてた」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 <未確認だけど重大な疑問>

●現実世界で死んだらどうなる?(※ゲームでは、セーブ地点からやり直し)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「これ1番大事じゃん! なら今後の方針は決まってるよなっ!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 <今後の方針>

1、なるべく安全第一に、この世界を楽しむ!

2、神様の報酬でもらうアイテム確保!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「せっかくブレリバの世界に来れたんだし、できる範囲で楽しみたいけど、やっぱ安全第一は譲れないし……となると、まずは戦力を強化しないとか」


 手っ取り早いのは『LV上げ』だろう。

 基本能力値が上がるから、手堅く戦力アップできるはず。

 ドロップ品を売れば資金稼ぎもできて、一石二鳥ってやつだな!


「あ~、信頼できる仲間も欲しいよなぁ。単独(ソロ)のままだと限界あるし」


 仲間がいれば戦略のバリエーションが増えるし、不測の事態にも備えやすい。

 ゲームのパーティは、勇者(プレイヤー)を入れて最大5人。

 4人までなら仲間を増やせる。


「待てよ。ゲームだとルート選択で仲間にできるキャラを決められるけど、現実も同じとは限らないか。強キャラで固めりゃいいわけでもないし……難易度高いな」


 ひとまずは単独(ソロ)で様子を見つつ、状況で判断しよう。




「よし、次! 魔王討伐(クリア)報酬アイテムどうするか……!」


 神様は「世界を救ったら、何でも1つ地球に持ち帰ってOK」だと。

 その候補アイテムは魔王討伐(ゲームクリア)段階で所持しているのが望ましいだろう。


 となると、生産準備もふまえてルートを選ぶ必要がある。

 レシピは攻略サイトに載ってるけど、素材を集めなきゃ作れないしな。


「やっぱり第1候補は『自由転移扉テレポーテーションドア』だけど、もし無理でも他に凄いアイテムはたくさんあるからなぁ。何にするかゆっくり考えよ!」



 ――もしアレを、地球に持ち帰れたら……?


 妄想するだけで自然と顔がニヤけてきてしまう。

 何となく楽しくなってきた俺は、幸せな気持ちで眠りについたのだった。




お読みいただき、またブックマーク登録や評価等もありがとうございます。

1~5話時点の世界地図ワールドマップです。

挿絵(By みてみん)

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