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ブレイブリバース!~二人で魔王倒せるの?会社員なゲーマー勇者と器用貧乏な吟遊詩人が、データ通りじゃないRPG異世界(101周目)を独自ルートで攻略した話~  作者: 鳴海なのか
第1章 初めての街、初めての仲間

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第10話「1+1の、可能性(1)」


 森の中の開けた場所。

 手早く昼食を終えた俺たち2人は、早速テオの魔術の強化方法を模索し始めた。


「テオは火・水・風・土属性の魔術スキルは習得してるってことだったけど、それぞれの属性の(オーブ)系魔術は、ひととおり使えるか?」

「もちろんいけるよー」


 通称『(オーブ)系』。


 魔力を球形にして具現化する術式だ。

 ゲームでも、「魔術を覚えた者がまず練習する術式」といわれる基本中の基本。

 俺が初めて使う【光魔術】として、『光球(ライトオーブ)』を選んだ理由もそこにある。


「じゃあテオ、試しに(オーブ)系でどれか使ってみせてよ」

「OK、水球(ウォーターオーブ)!」





 ――シャラッ



 テオの指先に渦巻くように現れたのは、直径10cmほどの水の球。





「無詠唱で即発動って……まじかよ……」


 俺は度肝(どぎも)を抜かれてしまった。




 Brave(ブレイブ) Rebirth(リバース)の『魔術』とは、『精霊』の力を借りて発動する術である。

 術者のイメージを伝えるために、(ふし)をつけて唱える言葉を『詠唱』と呼ぶ。


 ただし、あくまでゲーム内の“設定”だ。


 オプションで「詠唱のON/OFF」を選ぶこともできる。

 発動が早いほうが戦闘で有利だし、設定のデフォルトは『無詠唱』。

 もっとも「詠唱こそがかっこいいんだろ、省略なんてありえないッ!!」と熱く主張するプレイヤーも一定数はいたけどな。


 そんなゲームの常識は、現実(リバース)だと全く通用しなかった。

 俺が【光魔術】を使ったとき、詠唱の省略どころか、かなり時間をかけて集中したりイメージを固めたりしなければ、術の発動自体すらも危うかったのだ。



 対してテオは『無詠唱』で魔術を発動させた。

 つまり言葉に頼ることなく、一瞬で精霊にイメージを伝えきったということ。


 ――俺は素直に、すごいと思った。




「なぁテオ、元から無詠唱で魔術を使えたわけじゃないよな?」

「うん。最初は発動すらできなかったよ」

「けっこう練習したのか?」

「まぁね! じゃあ術を解除するぞー」


 宙にふわふわ浮いていた球体は、テオが解除した途端“ただの水”に戻って落下。

 そのまま地面へと吸い込まれていった。


「へぇ……現実(こっち)では術式を解除しても、魔術で出したものは残るのか」


 ゲームだと『術式解除=具現化した物は消滅』が当たり前だったのを思い出す。


「意識して消さない限りは残るよ。だから【水魔術】や【火魔術】の使い手は、旅の冒険者パーティで重宝されるんだよね!」

「なんで?」

「あちこち旅してると、どうしても野宿が多くなるだろ? そんな時、水や火を出せると旅の快適さが全然違うってわけ」


 確かに、飲み水にも料理にも便利だもんな。


「……だったら両方使えるテオは大人気じゃん」

「生活面ではね。俺の場合、スキルが全部LV1だからさ……戦闘じゃ使い物にならないんだけど」

「そんなことないさ! 今から証明してやるよ」


 寂しそうな笑顔のテオを励ますよう、俺は明るく笑った。





 ゲームの魔術スキルは、LV1でもLV5★でも使える術式の種類は変わらない。

 影響するのは『最大威力』のみである。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

●魔術LV1:最大威力1倍

●魔術LV2:最大威力8倍(2×2×2倍)

●魔術LV3:最大威力27倍(3×3×3倍)

●魔術LV4:最大威力64倍(4×4×4倍)

●魔術LV5★:最大威力125倍(5×5×5倍)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 なお有志の研究によれば、(オーブ)系の直径サイズはスキルLVに比例する。

 つまりLV3の『水球(ウォーターオーブ)』は、最大でLV1の27倍の体積ということ。

 他の術式もサイズ増減はほぼ同じ。「具現化できる物の体積がスキルLVの3乗に比例するから、そのぶん与えるダメージが増える」って説が有力だ。


 魔術の威力を強化するなら、普通はスキルLVを上げることになる。



 だが、俺が思い出した1人のプレイヤー。


 彼女は「勇者(キャラクター)のスキルをLV1から上げない」という制限を設けた『縛りプレイ』の元で魔王討伐(ゲームクリア)を成し遂げた。

 そのために、普通ならやらない()()()()()を極めたのである。





「テオは【魔術合成(ハーモナイズ)】っていうスキルを知ってるか?」

「いや、初めて聞いた」

「だろうな……でも【万能術】を持ってるなら、たぶん習得してるはずだぞ」

「確認してみる」


 テオはスキル欄を開くと、画面をスクロールし始めた。


 【万能術LV5★】は、固有のものを除く全スキルを習得するというスキルだ。

 その習得数が多すぎて、本人すら把握しきれていないようだが。


「……あっ、習得してた!」


 俺の読みは当たったようだ。

 表示されたスキル詳細を確認しつつ、テオは首をかしげる。


「【魔術合成(ハーモナイズ)LV1】の効果は『複数の魔術を合成できる』って書いてあるけど……いまいちピンとこないな~」

「ああ、それはな――」




 本来、1つの魔術には1つの属性しか入れ込めない。

 その鉄則を破れるスキルが【魔術合成(ハーモナイズ)】である。

 別に発動した2つ以上の術式を合成し、特性融合・効力倍増などを狙えるのだ。


 ゲームでは、とある依頼(クエスト)をこなすと、報酬として習得できる。

 だけど依頼者は辺境に住んでいるし、他からこの話題が出ることもない。

 結果、プレイヤーからはレア扱いとなっていた。



 ただしはっきり言って、わざわざ合成するメリットはあまりない。

 あまりにも、デメリットが多すぎる。


 ゲームで普通に魔術を使う場合は、ボタン1つで確実に発動できる。 

 対して合成する場合、以下のように複雑な操作をしなければならなくなる。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1つめの魔術を発動

→魔術の威力調整

→2つめの魔術を発動

→魔術の威力調整

→スキル【魔術合成(ハーモナイズ)】発動

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 しかも魔術の威力調整は、操作がリズムゲームに近い。

 決められたコマンドを、タイミングを合わせて入力する必要がある。

 ほんの少しでも間違えると、狙った効果が出ないどころか、魔術が暴走して自分にダメージが跳ね返ることもあるなど、失敗リスクが非常に高いのだ。



 なお、やろうと思えば10でも20でも制限なく合成できる。


 しかし数が増えれば増えるほど操作は難しくなる。

 2つの時点で、既に難易度が高い。

 それ以上ともなると、普通のプレイヤーならお手上げだ。


 俺も試したが、すぐにやめてしまった。

 かかる手間と時間とリスクに対し、見返りが釣り合わなかったのである。


 だが魔術スキルLV1のまま火力を出す、という前提なら話は別だ。

 ――【魔術合成(ハーモナイズ)】こそが、唯一の解決策なのだから。




「……と、はっきり言って実戦で使いこなすのが難しいんだよ」

「なるほどねぇ……」


 ゲーム特有の諸々をごまかし解説すると、テオは難しい顔で考え込んでいた。


「どうするテオ? 無理に挑戦しなくてもいいんだぞ?」

「いや。せっかくだからやってみたい!」


 テオの決意は固いようだ。

 なら俺も、ちゃんと教えてやんないとな……!


「合成で最も大事になってくるのは『威力調整の精度』なんだけど……テオはどれぐらいの精度で調整できるんだ?」

「割と得意だよっ。特に【火魔術】は調整できると料理とかに便利なんだよね~」

「やってみせてくれるか?」


 森の木々に火が燃え移らないよう陣取ってから、テオは【火魔術】を使う。


火球(ファイアオーブ)




 ――ボワッ




 人差し指の先に現れたのは、直径10cmぐらいの真っ赤な火の球。

 軽く説明しながら、テオはその威力を調整していく。


「これが俺の最大火力。炒め物がおいしく作れる強火だな。こっから少しずつ弱めていくぞ。続いては中火。食材を焦がさずに火を通すには1番使い勝手がいい火加減だっ! で、お次は弱火。長く煮込みたい時なんかに便利だな。最後はとろ火。スープなんかの保温に使えるすごく弱い火だぜ」

「……ああ」


 コントロールの正確さに感心しつつも……俺は何だか、切ない気分になった。


 ここまで細かくテオが調整できるようになるまで、相当な修練を積んだはずだ。

 だけど、そんな威力じゃ、強い魔物には通用しない。

 例えが全て『料理の火加減』だったあたり、彼の魔術が役立ったのは、本当に生活面がメインだったことは想像できる。


 ――強くなることへの憧れを、人一倍持つテオ。

 いったい彼はどんな思いで修練し、どんな思いで魔術を使ってきたのだろう。



 そんなことを考えていると、テオが声をかけてきた。


「今の威力調整、どうだった?」

「ここまで正確にできる奴は初めて見たよ……お前、けっこう凄いな」

「えへへ」


 嬉しそうに笑うテオ。




「じゃあこっからは実践に入るぞ。まずは『同じ属性の魔術2つ』の合成だ」

「おう!」


 同じ属性同士2つまでなら、威力調整ミスによる失敗判定が発生しない。

 リスクがないぶん最初に試すにはぴったりだ。

 わざわざ【魔術合成(ハーモナイズ)】するメリットもないのだが……テオの場合は特殊だな。


 まずはテオに、両手それぞれ火球(ファイアオーブ)を1つずつ出してもらった。

 どちらも最大威力だ。


「テオ、もしこの同じ威力の火球(ファイアオーブ)2つをぶつけたら、何が起こるか分かるか?」

相殺(そうさい)して、消えるっ」

「普通はそうだな。だけど【魔術合成(ハーモナイズ)】を使うと、面白いことになるんだ!」


 ゲーム内の動き(モーション)や操作を思い出しながら、俺はやり方を教えていく。


「今、両手に火球(ファイアオーブ)を1つずつ持ってる状態だな」

「うん」

「ベースは左手。合成素材が右手。ここで【魔術合成(ハーモナイズ)】を発動し、ベースの『火球(ファイアオーブ)』に、素材の『火球(ファイアオーブ)』をぶつける。これでOKだ」

「いくよっ、【魔術合成(ハーモナイズ)】!」


 スキルを発動したテオが、左の『火球』に、右の『火球』を勢いよくぶつける!




 ――ゴオゥッ!


 瞬間、左手の球体がもう一方を吸収した。

 赤く燃え上がってうねり、ひとまわり大きな火球(ファイアオーブ)へ姿を変えたのだ。




「おおっ、すげぇ!」


 素直にテンションを上げるテオ。


「大きさだけじゃなくて、これで火球(ファイアオーブ)の威力は元の2倍になったはずだ」

「2倍!?」

「驚くのはまだ早いぞ。【魔術合成(ハーモナイズ)】の凄さはこっからだからな!」



 威力が上がったとはいえ、せいぜい2倍。

 魔術師の基準となる『魔術LV3の威力/27倍』には遠く及ばない。


 だけどこれから教えることを習得できれば……いや、テオならできる。確実に。


 ――何となく、そんな気がした。




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