「【緊急生配信】エルフの里が変態の巣窟になってるんだがw――仕立ての良いオーク軍団をガチ解体!」
前書き
エルフの里を襲った前代未聞の危機に、ハヤト社長と配信クルーが立ち向かう第6話!
前回の出会いから急展開を迎え、一行は謎に包まれたオーク軍団の本拠地へと突入します。1日3回という厳しい制限があるチート能力『カット』と、現実世界で培ったガチの現場筋肉を駆使して、ハヤトは里の平和と最高峰の「撮れ高」を掴み取ることができるのか? 画面の向こうの視聴者たちも大熱狂の、緊迫と爆笑の緊急生配信がいよいよスタートです!
「ブモォオオオッ! 我が美の方程式の前にひれ伏すんだブモッ!」
オーク・プロデューサーが、大剣と見紛うほどの巨大な裁縫バサミをジャキジャキと打ち鳴らしながら突進してくる。その巨体からは想像もつかないほど軽快なステップ。まるでランウェイを歩くトップモデルのような無駄のない動きだ。
「おいおい、あのデカブツ、見た目に反して体幹がしっかりしすぎだろw」
俺はスマホを左手でがっちりホールドしたまま、ボスの動きを冷静に見切る。
『ハサミのサイズがおかしいwww』
『オーク・プロデューサーのガチ勢感』
『ハヤト! 左から来てるぞ!』
「ハヤト、危ない!」
セレシアが悲鳴のような声を上げるのと同時に、ボスの巨大バサミが俺の首元をめがけて横一線に奔った。風を切り裂く凄まじい風切り音。まともに喰らえば、俺のパーカーごと上半身が『カット』される。
だが、俺は焦らない。現場仕事の基本は「予測」と「確実な回避」だ。重い鉄骨がクレーンで運ばれてくる下で何度も修羅場をくぐってきた俺にとって、この大振りの一撃は軌道が丸見えだった。
深く膝を折り、頭上を通り過ぎるハサミの風圧を頭皮で感じながら、俺は一気に懐へと踏み込む。
「よっしゃ、本日2回目の――『カット』発動!!w」
パチン!!!
世界の時間がほんの一瞬だけ消し飛ぶ。
ボスがハサミを振り抜き、次の動作に移ろうとした「予備動作の数秒間」を丸ごとタイムラインから削除したのだ。
「ブモッ!? 何が……!?」
次にボスが気づいたときには、ハサミを振り抜いた無防備な姿勢のまま、俺の目の前で完全にバランスを崩していた。
「現場の鉄則! 隙を見せたら一気に解体だぁぁぁ!!」
俺は地面に落ちていた、先ほどオーク兵が落とした巨大なシルクハット(なぜか鉄板が仕込まれていてクソ重い。推定30キロ)を両手で拾い上げると、腰のひねりを利用してボスの顎めがけてアッパーカットの要領で叩きつけた。
ガァァァァァン!!!
「ぶひょおおおっ!?」
鉄板入りシルクハットの強烈な一撃を顎に喰らい、ボスの巨体が宙を舞う。モノクルがパリンと割れて飛び散り、綺麗なタキシードの襟元が派手に乱れた。
『シルクハット(物理)www』
『ハヤトの現場筋肉、今日もキレッキレだな』
『編集スキルと肉体労働のハイブリッド戦術強すぎ』
「リィン! 今だ、トドメ合わせるぞ!」
「合点承知さ! あんたの後に続くよ!」
俺の呼びかけに、リィンが疾風のごとき速度で応じる。宙に浮いたボスの着地際に滑り込み、二振りの短剣でボスのタキシードの背中を十字に切り裂いた。
「ブモォォォッ! 我が完璧なコーディネートがァァァッ!」
精神的にも肉体的にも大ダメージを受けたボスが、地面にドシャリと這いつくばる。
「最後はこれだ!」
俺は手にした鉄板入りシルクハットを、ボスの頭めがけてフリスビーのように全力で投げつけた。
ドカッ!!!
「ブモフッ……」
見事なヘッドショットが決まり、オーク・プロデューサーは完全に白目を剥いて沈黙した。周囲に残っていたオーク兵たちも、ボスが倒れたのを見るや否や、「ブヒィィィ!」と悲鳴を上げてクモの子を散らすように街道の奥へと逃げ去っていった。
『お仕事完了キタあああああ!!!』
『変態オーク軍団、完全解体www』
『ハヤト社長、本日もノー労災で素晴らしい』
「ふぅ……。エルフの里の解放作業、これにて終了っす!w」
俺は額の汗を拭いながら、三脚からスマホを回収してインカメラに向かってピースサインを作った。
同接続数はついに大台の20万人を突破。画面の中央には、待ってましたと言わんばかりに輝かしい通知が乱舞する。
【スーパーチャット受信】
ユーザー:裏切りの田中(¥50,000)
「オークのパンツ見せられたの草。口直しに美味いエルフの飯でも配信しろよ!」
⇒ 異世界通貨:金貨50枚に変換・実体化しました。
『チャリンチャリンチャリンチャリン!!!』
頭上からバラバラと降り注ぐ純金貨の雨。それを見ていた里のエルフたちが、無理やり着せられていたドレスを脱ぎ捨てながら(男エルフたちは涙目で安堵していた)、俺たちの周りに集まってきた。
「ああ……本当に、本当に里を救ってくださったのですね……!」
セレシアが感動のあまり、目に大粒の涙をためて俺の胸に飛び込んできた。柔らかい感触と、どこか森の香りがする優しい匂いが鼻腔をくすぐる。
「ちょっとあんた! どさくさに紛れてハヤトに抱きつくんじゃないよ!」
すかさずリィンがセレシアの襟首を引っ張って引き離そうとするが、セレシアは「命の恩人に対して感謝の意を示すのは聖女として当然の義務です!」と一歩も引かない。
『正妻戦争セカンドシーズンwww』
『エルフの聖女様、意外と積極的で草』
『ハヤトのハーレムメーターが上昇しています』
「ハヤト社長」
背後から、集まった金貨を手際よく数えてカバンに収納していたエレナが、相変わらず冷徹なジト目を向けてきた。
「オーク軍団の排除にともなう地域貢献報酬の回収、およびリスナーからのインセンティブ(スパチャ)の確保が完了しました。さらに、里の長老とおぼしき人物が、我が社に対して『最高級の世界樹の蜜酒』と『古代の魔導書』を進呈したいと申し出ております。これは極めて高い実利です」
「長老さん太っ腹じゃん!w よし、みんな、今日の配信の締めはエルフの里の祝宴会場からお届けするからな!」
俺はカメラをエルフの美しい街並みと、ご馳走が並び始めたテーブルへと向けた。
「変態オークをぶっ飛ばした後の飯は最高だわ! お前ら、画面の向こうでしっかり羨ましがれよな!w 次回の配信もお楽しみに! バイバイ!」
配信の画面を閉じると、そこには賑やかな宴の音と、俺を巡ってまだ小さな火花を散らしているリィンとセレシアの姿があった。俺の異世界放浪配信は、どうやらまだまだ退屈する暇はなさそうだ。
お読みいただきありがとうございました!
強烈な個性を持つボスオークとの激闘(?)が繰り広げられた今回、ハヤトの機転と圧倒的なフィジカルがまたしても大炸裂する爽快な結末となりました。
戦いが終わった後のコメント欄の盛り上がりや、ヒロインたちの間で静かに勃発する新たな火花など、配信活動もプライベートもますます賑やかになっていくハヤト社長。エレナの完璧なビジネスサポートのおかげで、今回も無事に(?)大きな利益を上げることができたようです。
里を救った一行に用意された豪華な報酬の行方、そして次なる旅路でどんなトラブルが待ち受けているのか、ぜひ次回の配信もお楽しみに!




