第二話 慣れるものとは
目を覚ました日から、数日が経った。
私はまだ、フィリンの家にいる。
折れた脚は厚く固定され、歩くことはできない。
寝台と窓辺と食卓。
その三つの場所を、車椅子でゆっくり行き来するだけの生活が続く。
ここで私ができることは多くない。
食器を拭く。火に置かれた小さな鍋を見張る。フィリンが干しておいた薬草を、言われた通りの籠へ分ける。
家事と呼ぶにはあまりにもささやかな手伝いばかりだったが、それでも何もせずにいるよりはよかった。
何もしない時間は、嫌に長く感じる。
そもそも士官学校では、そんな時間は存在しなかった。
起床。点呼。食事。座学。訓練。シャワー。睡眠。
一日の中には常に規律があり、次にすべきことがあり、遅れれば警告の声が響いた。
だからだろう。
この家の静けさに、最初はひどく落ち着かなかった。
フィリンの家は、村から少し離れた場所に建っているらしい。
窓の外には、緩やかな草地が広がっていた。遠くには森があり、木々の向こうから川の音が聞こえる。雨上がりの日には土の匂いが濃くなり、風が吹くと、草の海が太陽の光を返しながら波打った。
そこには、私の知る世界の気配がほとんどなかった。
壁を這う配線もない。
遠くから響く機関音もない。
夜を白く塗り潰す灯りもない。
床を震わせる機械の駆動音すら、ここには存在しなかった。
ただ、火が燃える音と、木の軋む音と、風の音だけがある。
最初は、それが頼りなく思えた。
だが、何日か過ごすうちに、少しずつ別の感情が生まれてきた。
この場所に、ラフの技術を持ち込む必要はあるのだろうか。
鋼鉄と煙で塗り潰す必要があるのだろうか。
このまま残しておいた方がいいのではないか。
そんな考えが、ふとした瞬間に胸の奥へ浮かぶ。
けれど、すぐに頭を振って追い出した。
私はラフの士官候補生だ。
たとえ帰りたくないと思っていたとしても、その考えまで否定したわけではない。
それなのに、窓の外を眺めていると、そんな余計なことばかり考えてしまう。
暇なのがいけないのだ。
そう結論づけて、私はある日の夕食中、フィリンに尋ねた。
「本は、ありますか」
フィリンは匙を持つ手を止め、少し意外そうに私を見る。
「本?」
「はい。読めるものがあれば、貸してほしいです」
何もすることがない時間は、居心地が悪い。
そう正直に言うと、フィリンは少しだけ笑った。
「あるにはあるが……君に読めるかどうかは分からないな」
そう言って、彼は席を立った。
私には上がれない階段を、フィリンは慣れた足取りで上っていく。
二階。
この家はおそらくフィリンの一人暮らしのはずだ。
村の外れに男一人で暮らすには、随分と広い家のように思える。
実はお金持ちだったりするのだろうか。
しばらくして、彼は数冊の本を抱えて戻ってきた。
古びた革表紙の本が二冊。布で補修された分厚い本が一冊。もう一冊は、装丁こそ簡素だが、表紙に色のついた絵が描かれていた。
フィリンはそれらを食卓へ置く。
随分と古く見えるそれを見て、もしかしたらこの国では本は貴重なのだろうかと疑問を抱く。
「魔法の基礎書が二冊。こっちは種族についての概説書。これは……まあ、昔からある冒険譚だな」
冒険譚。
その言葉に、私は少しだけ興味を引かれた。
士官学校にも読み物はあった。
だが、そこに置かれていたのは戦史、技術書、言語教材、政治資料ばかりだった。
ただの物語など、課業の合間に偶然見つけた古い電子書籍で読んだ程度だ。
「俺たちの文字は読めるのか?」
フィリンが尋ねる。
「少し……なら」
士官学校では、他種族の言語も叩き込まれた。
この大陸で使われる共通語。
獣人たちの言葉。
魔族語。
それから、今ではほとんど使われていない古語まで。
流暢に扱えるわけではない。けれど、簡単な会話や文章なら、どうにか理解できる。
以前は、そんなものを学ぶ必要があるのかと不思議に思ったものだった。
機械翻訳が存在するのに、なぜわざわざ『肉体』へ覚え込ませる必要があるのかと。
皮肉なことに、今ならその理由が少し分かる。
誘拐。
潜入。
諜報。
あるいは、通信機器を失った時のため。
ラフにとって言葉は、武器でもあったのだろうと、苦い思いが浮かぶ。
それを見たフィリンが小さく笑う。
「分からないところがあれば聞いてくれ」
彼は自然にそう言った。
その言い方に、本当にただの親切心だけが感じられて私は少し戸惑う。
ラフ人である私に、なぜこの人はここまで普通に接するのだろう。
私が、他のラフ人とは違うから?
他のラフ人から感じるという、“怒り”が、私の中にないからなのだろうか?
ぐるぐると頭の中に疑問が浮かぶ。
「……ありがとうございます」
口から出てきたのはそれだけだった。
小さな声でそう言うと、フィリンは穏やかに頷いた。
翌日。
私はさっそく、一階の窓辺で魔法の基礎書を開いた。
外はよく晴れていた。
窓の外では、風に揺れる草の上を小さな鳥が跳ねている。
フィリンは朝から二階にこもっていて、家の中は静かだった。
ラフでは禁忌とされ、存在することは教えられても、教わることの技術が書かれた本。
本を持つ手に力が入り、知らず心臓が早鐘を打つ。
膝の上に本を置き、慎重に古い表紙を開く。
その瞬間。
目の奥と頭蓋の内側に、鋭い痛みが走った。
「ッ……!」
反射的に本を閉じる。
心臓が本を開く前とは違う理由で、早く鳴り響く。
耳元で鳴る心臓の音に合わせて、頭の奥を細い針で掻き回されたような激しい痛みを感じる。
視界の端が白く滲み、しばらく呼吸が整わない。
身体が、拒絶した。
最初に浮かんだのは、そんな考えだった。
本を開いた瞬間に反応した。
書かれていた文字か。
紙だろうか。
それとも、本そのものに何かが施されているのか。
少なくとも私が知らなかったのだから、フィリンも知らなかったのだろう。
ラフで魔法を教えなかった理由は分かった。
私は痛む頭を押さえながら、しばらく閉じた本を見つめる。
興味がないとは言えないが、少なくとも今すぐあの痛みをもう一度味わいたいとは思えなかったので、別の本へ手を伸ばした。
表紙に剣を持った青年と、黒い影のような怪物が描かれている。
題名は、『勇者アーロの魔王撃退』。
いかにも古い冒険譚という雰囲気で、少し胡散臭い。
けれど、こういう本は読んだことがない。
私は恐る恐る頁を開いた。
薄目で本を見るが、痛みはない。
今度は、何も起こらなかった。
私は眉を寄せる。
やはり、痛んだのは魔法書だからか。
魔法に関する本には、単なる文字以上の何かが含まれているのかもしれない。
魔法的な処理。
実際にどんなものがあるかは詳しく知らないが、記憶媒体に施す魔力付与があるとは聞いている。
長期保存用だとか、読む者の理解を補助するための術式だとか。
それが、私の神経に繋がるインプラントと干渉したのだろう。
そう考えれば、説明はつく。
完全に納得できたわけではないが、今はそれ以上確かめようがなかった。
私は冒険譚の方を読み進める。
古い言い回しが多く、ところどころ意味を取り違えそうになる。それでも、内容の大筋は追えた。
物語によれば、およそ六百年前。
魔王アクシアは、空よりワァーロン大陸へ現れた。
魔王は多くの魔族を従え、ワァーロン大陸を支配しようとした。しかし、人族の勇者アーロによって撃退され、魔王軍は海を越え、サーベント大陸へ追いやられたという。
サーベント大陸。
そちらは現在、ラフ国が存在する大陸でもある。
もしこの物語が、ただの作り話ではなく、少しでも歴史を元にしているのなら。
これはラフ国が「魔王」のように見られていても、不思議ではない。
物語の中の魔王とラフ国の誕生とは、二百年以上ずれているが。
それでも。
空から現れた異邦の民。
異質な力。
サーベント大陸。
外から見れば、似て見えるのかもしれない。
今度、私の考えがあっているのかフィリンに聞いてみよう。
そう考えながら、私は本から視線を上げた。
その時だった。
一人の少女が、家の前の道を通り過ぎていった。
水色の髪をした、エルフの少女だった。
腕には籠を抱えている。
この家の前は、人通りが多くない。
たまに農作業へ向かう者が通る程度で、人よりも馬や牛を見かけることの方が多いくらいだった。
だからこそ、その少女の姿は妙に目を引いた。
水色の髪が、陽の光を受けて淡く光っている。
歩き方は静かで、急いでいる様子はない。けれど、迷っているようにも見えなかった。何度もこの道を通り慣れているのだろう。
私は、無意識に彼女を見つめていたらしい。
少女がこちらに気づいた。
整った顔立ちだった。
美しい、という言葉が自然に浮かぶ。
だが、それ以上に、ひどく落ち着いた目をしていた。
こちらを見て驚くでも、怯えるでもない。
少しだけ首を傾げたあと、彼女は小さく手を振った。
私は反応が遅れた。
それでも、なんとか手を振り返す。
少女はそれを見ると、わずかに笑ったようだった。
そして、そのまま道の先へ歩いていく。
姿が見えなくなってからも、しばらく私は窓の外を見ていた。
時折、通りすがりのエルフや人族と目が合うことはある。
だが、大抵は怪訝そうに一瞥されるだけだ。
あの少女は、何を思ったのだろう。
私はしばらく考え、それから本へ意識を戻した。
次に手に取ったのは、種族について書かれた本だった。
人族、エルフ、獣人、魔族。
それぞれの文化。
信仰。
身体的な特徴。
扱う魔法の傾向。
士官学校で習った内容と重なる部分もあったが、視点がまるで違っていた。
ラフの教材では、他種族は脅威として分類されていた。
どの種族がどのような魔法を使い、どの距離で危険で、どの部位を狙えば無力化しやすいか。
そういう知識ばかりだった。
だが、この本では違う。
彼らが何を信じ、どのように暮らし、何を美しいと思うのか。
そうしたことまで書かれていた。
私は頁を捲る。
やがて、魔族の章に差しかかった。
そこには魔法陣らしき挿絵があった。
何気なく視線を落とした瞬間、再び痛みが走る。
けれど、先ほどよりは随分と軽い。
頭の奥が軋むように痛むが、訓練の時と比べれば大したことはない。
そう自分に言い聞かせて私は眉を顰めながらも、そのまま読み進めた。
『空を飛べるのは魔族のみである』
その一文が、まず目に入った。
『また、魔族の魔法は他種族の魔法と似た形を取ることもあるが、魔力の構成が大きく異なるため、解析は進んでいない』
その下には、複雑な魔法陣の挿絵が添えられていた。
私はそれを、もう少し詳しく見ようとした。
瞬間。
今までで最も強い痛みが、脳天を貫いた。
「ッ……!」
本を閉じる。
今度は、しばらく息ができなかった。
指先が震えている。
痛みだけではない。
脳の奥に、触れてはならないものへ触れたような気味の悪さが残っていた。
今日は、もうやめた方がいい。
私は本を膝の上へ置き、窓の外へ目を向ける。
風だけが、静かに草原を揺らしていた。
その日の夕食で、私はぽつりと零した。
「私はどうやら……魔力に弱いみたいです」
以前よりは、少しだけ自然に言葉が出るようになっていた。
フィリンは食事の手を止め、興味深そうにこちらを見る。
「ほう?」
「魔法の本を開くと、頭が痛みます。それと、魔法陣を見たりしても」
「魔法陣を見るだけで?」
フィリンは少し考えるように顎へ手を当てた。
「ラフ人は魔法を使えないとは聞いていたが、魔力そのものに弱いというのは……」
そこで一度、言葉を切る。
「いや。まったく魔力に触れてこないと、そういうことも起こるのかもしれないな」
それも十分あり得る話だと思った。
インプラントのせいかと考えたが、私は魔法がある世界で生活したことなどなかったのだから。
魔法も魔力も、私にとっては本の中だけの存在だった。
知識として知っていることと、実際に触れることは違う。
士官学校の資料で火傷について学んでいても、本当に火に触れれば熱いのと同じだ。
私は少し迷ってから、問いかけた。
「私も……いつか魔法を使えるようになりますか」
フィリンはすぐには答えなかった。
代わりに、私の顔をじっと見る。
それから、少しだけ笑った。
「どうだろうな。魔法書を開くだけで痛むんだろう?」
その答えに、私は肩の力を落とす。
「だが、その姿勢は買おう。まずは魔力に慣れることからだろうな」
「はい」
「なら、本を読むことに慣れてみろ。話はそれからだ」
それは、痛みに慣れろと言われている気がする。
思わず、そのまま顔に出てしまったのだろう。
フィリンは悪戯っぽく小さく笑った。
「無茶はするな。倒れられると面倒だ」
「……分かりました」
それから私は、毎日のように魔法の基礎書を開いた。
最初は、頁を少し開くだけで頭痛が走った。
それでも、すぐに閉じれば耐えられる。
次の日には、数行だけ読めた。
さらに次の日には、半頁。
痛みに慣れたのか。
身体が魔力に順応し始めたのか。
それとも、インプラントが干渉を避ける方法を学習しているのか。
理由は分からなかった。
けれど、少しずつ読める量は増えていった。
読めた内容によれば、使える魔法は種族ごとに性質が異なるらしい。
生まれつき持つ魔力量にも差があり、得意とする属性も変わる。
そして魔法とは、想像によって形を成す力だと書かれていた。
想像力に優れた者ほど、高度な魔法を扱える。
熟練した者は、詠唱すら必要としない。
ただし、無詠唱の魔法には繊細な制御が必要であり、未熟な者が真似れば暴発の危険がある。
そこまで読んで、私は本を閉じた。
ほんの少ししか読めていない。
それでも、確かに“理解”へ近づいている気がした。
当然だが、私のように魔力へ一度も触れずに育った存在についての記述は見つけられていない。
もし私が急に魔法を使えばどうなるのか。
身体が耐え切れず、壊れる可能性はないのか。
あるいは、インプラントが誤作動を起こすのか。
そんな考えばかりが浮かぶ。
だからまだ、実際に試す勇気はなかった。
その日も、私は窓辺で本を読んでいた。
ふと、外へ目を向ける。
あの少女がいた。
水色の髪を揺らしながら、また家の前の道を歩いている。
農作業をするような格好には見えないし、誰かといるところも見ない。
少し前までは他人に意識を割くような余裕はなかった。
けれど、今は暇を持て余しているせいか彼女に興味が湧く。
彼女の名前は何というのだろう。
なんのために、この道を通るのだろう。
そんなことを考えながら見つめていると、少女はまたこちらに気づいた。
立ち止まり、小さく手を振る。
今度は、すぐに振り返せた。
少女はそれを見ると、どこか満足そうに微笑み、また歩き去っていった。
脚が治ったら、名前くらい聞いてみようか。
そう思ってから、私自身の考えに少し驚いた。
この家に来てから、数週間が経っていた。
魔法の基礎書も、以前よりはずいぶん読めるようになっている。
痛みが完全に消えたわけではない。
魔法陣を見ると、まだ頭の奥が鈍く疼く。
それでも、最初のように視界が白く弾けるほどではなくなった。
慣れているだけなのか。
適応しているからなのか。
インプラントが原因なのか。
まだ何も分からない。
ただ、読み進めるほど痛みが薄れていく感覚だけは確かにあった。
その日も、私は初級魔法について書かれた頁を読んでいた。
水属性。
魔力を水の性質へ寄せ、形を与える魔法。
魔法の初歩の訓練では、小さな水球を作ることから始めるらしい。
曰く、魔力操作を誤ったときの危険が少なく、材料の調達が楽だからだそう。
その説明を読んでいると、珍しく昼間にフィリンが部屋へ入ってきた。
普段の彼は、二階にいるか、仕事で外へ出ていることが多い。
この時間に一階へ降りてくるのは珍しかった。
フィリンは私の膝の上にある本を見て、少し口角を上げる。
「読めるようになってきたみたいだな」
「少しずつです」
「それで?」
彼は机へ片手をつき、身を屈める。
「君にも使えそうか?」
「ど、どうでしょう……」
答えに困っていると、フィリンは私の本を取り、慣れた手つきで頁を捲った。
そして、水属性初級魔法の頁で手を止める。
「これなら簡単だぞ」
彼はそう言って、手のひらを上へ向けた。
「水球を作ってみろ」
言葉が終わるのとほとんど同時に、彼の掌の上へ透明な水の球が浮かび上がった。
私は思わず目を見開く。
水が浮いている。
それだけでも十分異常なのに、何もない空間から水が生まれている。
私の知る理が、目の前であっさり踏み越えられていた。
フィリンは水球をふわりと揺らし、それから消してみせる。
「やり方は本に書いてある通りだ。水を思い浮かべて、形を与える」
簡単に言ってくれる。
私は真似をして、手を差し出した。
水。
水を想像する。
けれど、水とは何だ。
蛇口から流れる透明な液体。
雨。
川。
実験室で見た、超音波振動によって宙に留まる液体。
映像資料で見た、無重力空間の水滴。
考え始めると、別の記憶まで連鎖していく。
浮遊戦車。
航空機。
反重力機構。
推進装置。
兵器。
想像が水から離れていく。
分かっているのに、止められない。
私の頭は、現象を見れば仕組みを探そうとする。
浮くなら、なぜ浮くのか。
形を保つなら、どのような力が働いているのか。
どこから質量を得ているのか。
熱量は。
圧力は。
保存則は。
無数の理論が、勝手に頭の中を走り始める。
私は目を閉じ、必死に水の形だけを思い描こうとした。
その時。
フィリンが、私の手首を掴んだ。
「今日はここまでにしよう」
静かな声だった。
だが、その指には力がこもっていた。
私は目を開ける。
周囲に異常は見当たらない。
水球もない。
光もない。
魔法陣も浮かんでいない。
ただ、フィリンだけが、私の手のひらではなく、その奥を見るような目をしていた。
「……失敗、ですか」
そう尋ねると、フィリンはすぐには答えなかった。
表情は妙に真剣だった。
やはり、私には魔法の才能などないのかもしれない。
そう思い、少し肩を落とす。
すると、フィリンが息を吐いた。
「才能がない、というわけじゃない」
私は顔を上げる。
「お前は、そうだな。先に魔力を扱う感覚を覚えた方がいい」
「魔力の感覚、ですか」
「ああ。何を想像していたのかは知らんが、想像するものが大きすぎるな。水を作ろうとして、別のものを引き寄せている」
別のもの。
その言葉の意味は分からなかった。
フィリンはそれ以上詳しく説明せず、軽く私の肩を叩いた。
「焦るな。まずは魔力に慣れろ」
そう言って、彼は本を閉じる。
そのまま部屋を出ていった。
残された私は、しばらく自分の手のひらを見つめていた。
何も起きなかった。
少なくとも、私にはそう見えたが、フィリンは止めた。
私には分からない、『何か』は起きていた。
だとしたら、私にも魔法が使えるのだろうか。
そんな淡い期待が、胸の奥に小さく灯った。
もう少し長く書こうかなと思っているところです。
やはり英語の本ばかり読んでいると展開を早く書いてしまう。
改修するところです。




