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42話・特訓〜揃え大学生〜

 

 紆余曲折あり、俺と琴音は仲直りした。

 あの時日陰が電話をかけてきたのは、俺がいつまで経っても連絡をしてこないから、という理由から。


 またしても俺の不手際だ。

 避けられた不幸であると言える。

 とは言え全ては過ぎたこと。


 心機一転、今日から再スタートを切る。


「全員集まっているか?」

「はい!」


 七人の声が同時にあがる。

 件の大学生グループ達だ。

 冒険者協会千葉支部の訓練室に集まってもらった。


 訓練室と言っても、ただのグラウンドである。

 特徴的なのは、周りを塀が囲んでいるくらい。

 目黒さんに頼んで貸切にしてもらった。


 勿論料金は払っている。

 まあ、普段訓練室は余り利用されないから、態々貸切にしなくても人は来ないだろうが、念の為。

 俺が居ると知られたら、色々面倒だ。

 また騒ぎが起こってしまう。


 今日はここで、彼らに戦い方を教える。


 ずっと放置してしまってたからな。

 そろそろ指導してもいい頃合いだ。

 あとは琴音の誤解を完全に解く為に、彼女と彼らを直に合わせたい……と言うのは俺だけの魂胆である。


「とりあえず、お前ら全員自己紹介から始めてくれ。ステータスも表示させてな」


 名前を覚えているのは峰打と日陰くらいだけだ。

 残る五人は顔も名前も一致しない。

 なので自己紹介から始めてもらう。


 琴音に至っては全員と初対面だからな。

 無駄ではない筈だ。


「じゃあ、まずは俺から……峰打恵斗です、一応、このチームのリーダーって事になってます」


 峰打はこの中で一番頭が良さそうな男だ。

 短めの黒髪で、スポーツか何かしていたのか、身長も俺と同じくらいで体格も良い、一番の有望株かな。


「伊藤勇気、だ、じゃなくて、です。あの、この前は本当にありがとうございました」


 伊藤は琴音に傷を治してもらった男だ。

 以前は茶髪で軽そうな雰囲気だったが、今この場では特にそういう雰囲気は醸し出してない。


「田村陣です、よろしくお願いします」


 田村は眼鏡を掛けている。

 こう言っちゃ何だが、少し地味だ。

 けれども七人の中で一番落ち着いているとも言える。


「高山陽介っす、よろしくお願いしまっす!」

「おい高山、もっと真面目に挨拶しろ!」

「す、すまん……あ、よろしくお願いします……」


 高山は見るからに陽気で明るそうな男だ。

 早速峰打に注意されているし。

 こいつは要注意だな。


 男性陣はこの四人。

 次は女性達だ。

 なのだが、背後から猛烈な気配を感じ取る。


 振り向くまでもない、琴音だ。

 彼女はドス黒いオーラを発している。

 女性陣が皆んなビビってしまっていた。


「琴音、威圧するのをやめてくれ」

「失礼……力み、すぎました」

「ただの自己紹介だぞ?」

「……ええ、そうでございます、ね……」


 本当に誤解が解けているのか疑わしい。

 最近分かったが、彼女はかなり嫉妬深い性格だ。

 おまけに俺への奉仕願望と管理願望が混ざっている。


 当たり前だが、浮気などしない。

 しないが、もし何かの間違いでそういう状況に陥ってしまった時は、覚悟しとかないといけないな……

 何をしでかすか、分からない。


「え、えと、日陰聖奈です、よろしくお願いします」


 彼女は以前から知っているので、言うことはない。


「丸山奈緒です、よろしくお願いします」


 丸山はセミロングの黒髪の女性だ。

 控え目そうな性格である。


「加藤みみです、よろしくお願いします!」


 明るく活発そうな性格の加藤。

 今にも飛び跳ねそうだ。

 ダンジョン攻略にはかなり積極的な様子である。


 さて、これで七人全員の自己紹介が終わった。

 顔と名前は追々一致させていこう。


 そして、これが彼ら彼女達のステータスだ。

 七人分が一度に表示される。

 こうして見ると壮観だな。




 [ミネウチ・ケイト]

 Lv5

 HP 90

 MP 50

 体力 10

 筋力 10

 耐久 10

 敏捷 8

 魔力 5

 技能 【指揮官】【カリスマ】【槍術】

 SP 2




 [イトウ・ユウキ]

 Lv5

 HP 90

 MP 90

 体力 6

 筋力 6

 耐久 10

 敏捷 10

 魔力 10

 技能 【片手剣術】【火魔法】【魔力障壁】

 SP 2




 [タムラ・ジン]

 Lv5

 HP 90

 MP 90

 体力 7

 筋力 7

 耐久 7

 敏捷 10

 魔力 10

 技能 【魔力制御】【雷魔法】【土魔法】

 SP 2




 [タカヤマ・ヨウスケ]

 Lv5

 HP 90

 MP 50

 体力 7

 筋力 10

 耐久 7

 敏捷 10

 魔力 5

 技能 【短剣術】【瞬足】【回避】

 SP 2




 [ヒカゲ・セイナ]

 Lv5

 HP 90

 MP 80

 体力 7

 筋力 7

 耐久 7

 敏捷 12

 魔力 10

 技能 【投擲】【分身】【変幻】

 SP 2




 [マルヤマナオ]

 Lv5

 HP 90

 MP 90

 体力 6

 筋力 6

 耐久 7

 敏捷 7

 魔力 10

 技能 【水魔法】【無詠唱】【支援魔法】

 SP2




 [カトウミミ]

 Lv5

 HP 90

 MP 50

 体力 10

 筋力 8

 耐久 8

 敏捷 8

 魔力 5

 技能 【片手剣術】【盾術】【直感】

 SP2




 全員のステータスを見比べる。

 レベルは一律で5。

 スキルは三つとも埋まっている。


 悪くない選択だ。

 このままでも普通に戦える。


「レベル5までは、自分達で上げたのか」

「はい。ですがその先から、上手くいかなくて……」


 峰打の話を纏めるとこうだ。

 彼らは俺達と出会った後、冒険者を続ける事を決意。

 貸し出しの武器を借りながら、試行錯誤してきた。


 大学の講義もあるので、休み休みやってきたと言う。

 しかし最近はモンスターも強くなり、素人あがりの自分達の知恵だけでは限界を感じていると。


「まず言っておくが、俺も素人あがりだぞ?」

「それでも、俺達よりかは経験豊富です!」

「まあ、それはそうだが……」


 試行錯誤してきたのは、俺も同じ。

 思えばプライベートダンジョンに助けられた。

 気軽に行けるので、体調管理も取りやすい。


 万全な状態を保ったまま攻略出来る。

 これはかなりのアドバンテージだった。


「とりあえず、普段のお前達の戦い方を知りたい。一人ずつでいいから、俺に挑め」

「笹木さんにですか?」

「ああ、手加減は不要だぞ?」

「それは、まあ、確かにそうですが」


 俺がファブニールを倒した事は周知の事実。

 手加減が無意味なのは、彼らもよく知っていた。


「じゃあ、俺からやりたい! でっす!」

「高山か。いいぞ」


 高山が意気揚々と前に出る。

 他の奴らは全員、下がらせた。

 琴音には治癒魔法の準備をさせておく。


「いつでもこい」

「んじゃ、お言葉に甘えて! どりゃっ!」


 高山が真っ直ぐ突っ込んで来る。

 そのスピードは中々のものだ。

 瞬足スキルのおかげだろう。


 そのまま正面……にはやって来ず、直前で飛ぶように左方向へ曲がり、真横から短剣で攻撃してくる。

 意外にも頭を使った戦い方だ。

 考えて戦おうとしているのは評価出来る、しかし。


「ふんっ!」

「ぐえっ!?」


 高山が短剣を振るう前に、拳を突き出す。

 彼はその場で倒れ込む。


「発想が良い。だけど動きが直線的すぎて、折角の撹乱が無意味だ、こうやってカウンターを決められる」

「う、うっす……」


 ふらふらと立ち上がる高山。

 手加減はしたのでダメージはそこまで無い筈だ。


「次、誰が来る?」

「じゃあ、俺が!」


 伊藤が一歩、前に出る。

 あいつの武器片手剣だったな。

 魔法も使えるから、さしずめ魔法剣士か。


「《ファイアボム》!」

「おっと」


 伊藤が左手を振りかざす。

 すると俺の周囲で爆発が起こった。

 発動前に温度が上昇したので、何かあると思い横に避けていたから被害はゼロ……だが、伊藤は俺が避けるのは予想済みか、片手剣で斬りかかってくる。


「はああああっ!」


 暫く片手剣同士で打ち合う。

 悪くないが、熟練度が足りないな。

 キレも速さも感じない。


 強めに剣を振り、伊藤の剣を叩き落とす。

 カランと、剣が地面に落ちた音が響く。


「熟練度が足りないな、決め手にかける」

「は、はい……」

「さあ、次は誰だ!」


 こんな感じで七人全員を相手にした。

 総評として、全体的にスキルの熟練度が足りない。

 あとは実際の戦闘経験もまだまだと言ったところ。


 聞けば、戦闘はいつも七人で一匹、もしくは二匹を囲んでタコ殴りにし、トドメは順番で経験値を分け合う……というスタイルを取っているそうだ。


 確かに安全だが、一人一人の経験値が薄くなる。

 だからレベル5で足踏みしているのか。


 課題は見えた。

 そしてその課題をクリアするのはそう難しくはない。

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