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呪われ転生じゃ死にきれない  作者: 鳴神 春
22/46

18話 ひねくれ小学生に友達はいない!

1


自分で言うのもなんだが、俺は可愛げのない子供だったと思う。

無駄に頭が回るせいで、教師の言葉の裏を読んだり、友達の空気に合わせるのを「馬鹿らしい」と思ったり。

孤立していたわけではないが、いつも一歩引いた場所から周囲を眺めていた。

いわゆる痛い子だ。

まあ、こんな小学生と仲良くしたいやつなんて、普通に考えればいない。

俺でもこんな小学生は嫌だと思う。

だが、こんな小学生が変わるきっかけがあった。

小学4年生のある日、帰り道の公園で見かけたのは、あまりにもありふれた、けれど目を背けたくなる光景だった。


「へへっ、悔しかったら取り返してみろー!」


「か、返してよ〜、それは僕の大事なものなんだよ〜」


帽子を取られて泣いている子どもと、それを見て笑っている数人のガキ大将たち。

よくある構図。

よくあるいじめ。

誰も止めない。いや、気づかないふりをして通り過ぎていく。


「泣いてねえで、なんか言えよ。つまんねーやつだな!」


その中の一人、特に体格のいい少年がそう吐き捨てると、泣いている子の肩をぐいと押した。

小さな身体がよろけ、尻餅をつく。


「っ……うぅ……!」


帽子を拾うでも、抵抗するでもなく、ただ泣くだけ。膝を抱えて、俯いたまま嗚咽を漏らすその姿が、妙に胸に引っかかった。


(なんで、何も言わないんだよ。)


俺はその場から目をそらそうとして、できなかった。


(……あー、もう、だりぃなぁ)


口の中で小さく悪態をついて、ポケットに入れていた古い携帯型キーホルダーを取り出した。

ひびの入ったスクリーンが、いかにも「おもちゃ」であることを物語っている。

だが、そんなことはどうでもよかった。


「……はい、はい、そうです、公園の北側。またガキどもがいじめしてるっぽいです。こないだと同じ連中かも」


静かな声で、しかしよく通るように言った。

ぬるりと視線だけを上げ、ガキ大将たちの顔をじっと見る。


「ねぇ、名前教えてくれない? 通報の参考にするから」


少年たちが凍りついた。


「は? ふざけんなよ、なんなんだよお前!」


「え、なんか都合悪いことでもあるの? やっぱり。あー、はい、今逃げようとしてます、はーい、お願いしまーす」


俺が勝手に話を進める中で、ガキ大将たちは顔をしかめ、苛立ち混じりに地面を蹴って逃げていった。


「チッ……なにあれ、うぜー」


「いい子アピールかよ、だせーな」


そう言い残して去る背中を見送り、俺はようやく手の中のキーホルダーをしまった。

泣いていた子の前に歩み寄り、何も言わずに転がった帽子を拾い上げる。軽く叩いて、泥を払う。

拾った帽子のつばには『らいは』と書かれていた。

多分こいつの名前だろう。

そして、ふいにしゃがみ込む。


「……おい。泣くだけなら、犬でもできるぞ」


その声に、いじめられっ子はびくっと顔を上げた。涙の滲んだ目が、じっとこちらを見ている。

主人公はため息をひとつついて、帽子をその子の頭にポンと乗せた。


「べつに、お前のためにやったわけじゃねーけどな。……気まぐれってやつだ。じゃ、これで」


「あ、あの!」


帽子を握りしめ、まっすぐこちらを見ている。


「なんだよ」


早く帰りたいのを止められ、若干不機嫌な返事をしてしまった。


「よかったら、僕と友達になってくれないかな?」


「めんどいからいい」


「即答しないでよ!」


これが俺、沖谷悠斗と楠木来羽の初めての出会いだった。


2


その日を境に、あいつは毎日のように現れた。

朝の登校時間、いつのまにか後ろをついてきている。下駄箱の前、教室の入り口、体育の授業の準備中、そして帰り道。

気がつけば、どこにいてもあいつの姿が視界に入るようになっていた。


「おはよう悠斗!」


「悠斗って隣のクラスだったんだね!来年は同じクラスになれるといいね!」


「悠斗!今日も一緒に帰ろうよ!」


「僕、あのときほんとに嬉しかったんだ」


毎日毎日飽きもせず俺に話しかけてきた。


「……うっとうしい」


ひとりでいることを選んでいたのに、なぜかその自由が少しずつ削られていくような気がして、わざと冷たく突き放すような言葉も言った。

でも、あいつはへこたれなかった。

次の日も、またその次の日も、変わらず笑って話しかけてきた。自分のそっけない態度にもめげず、まっすぐな目で言葉をかけてくる。

あいつは、怖くなかったんだろうか。俺みたいな、何を考えてるのかわからないような奴に。

ある日の放課後、さすがに我慢の限界が来た。


「……お前さ、なんでそんなにしつこくすんの?」


自分でも意外なほど、苛立った声が出た。

目の前の小さな背中がピクリと震え、ゆっくりと振り返る。

けれど、怯える様子はない。

あいつは、まっすぐこちらを見つめてきた。


「だって……悠斗と友達になりたかったから」


「……それだけ?」


「うん。それだけじゃ、だめ?」


即答だった。

言葉に飾り気はなく、疑いもなかった。

俺は、しばらく何も言えなかった。

「だめじゃないの?」と突き放す言葉も、「バカみたいだな」と笑う余裕もなかった。

それどころか、自分がいままでずっとあれこれ考えすぎていたことが、急にどうでもよく思えてきた。

計算。距離感。メリット。関係性。

そんなもん、あいつの前では全部意味がなかった。


「……はぁ、ほんとお前ってバカだな」


そう言って、自分でも驚くくらい自然に口元が緩んだ。

あいつは一瞬きょとんとして、それから顔をぱっと明るくした。


「あー、今悠斗笑った⁉︎」


「笑ってねーよ」


「絶対笑ったって!ほら!」


「あーもう、うっせぇ。早く帰んぞ、来羽」


「じゃあ、友達?」


「仕方ねぇな……そういうことにしといてやるよ」


夏も終わりに近づく夕暮れ時。

俺が見ている風景に、ほんの少しだが明るい色が差し込んだ気がした。

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