第052話「第二次迎撃戦7」
修正版の展開書き溜めてて、すっかりこっちがご無沙汰になってしまいました。申し訳ありません。
先に探索を行ってダンジョン内のマッピングはあらかた終わっていたのでゼンニとイトイルは迷いなく迷宮エリアを通り抜け、すぐに地下要塞エリアに到達した。
「ほ、こりゃまた結構な数じゃのう」
「お気楽な事言ってんじゃないわよ」
ゼンニ達の前には治癒魔法で復活したエステラを始め、水橋・華撫・セブルティス・ムラサメ・スレイ、そして大量のスライム軍団が勢ぞろいしていた。
「二人だけでくるとは、完全に俺らの事舐めてるな」
「どういうつもりなの? 確かにあの爺さんは強いけど、でもたった二人ってなにかあるんじゃ」
「いずれにせよここまで来たのなら倒すまでです。マスターを取り戻すためにも確実に仕留めます」
エステラ達がゼンニとイトイルに襲いかかろうとした瞬間、全員の視界からゼンニが消え、イトイルは自分の周囲に無数の氷で出来たリングを作り出し、宙に浮かび上がった。
「さっさと終わらせるわよゼンニ」
「言われんでもそのつもりじゃ」
二人の会話が聞こえるどうかの刹那、周りに居たスライム軍団の一部が切り裂かれた。
「な、どこから? 魔法か!?」
「違う! あの爺さんよ! たぶんスキルかなんかで加速してるんだと思う!」
「まじかよ! どんだけハイスペックなんだあのじーさん!」
「水橋様、魔法が来ます」
セブルティスに言われて水橋は自分に迫ってくる魔法に気づき、あわててその場に居た結晶スライムにシールドを展開させ、事なきを得た。
「あっぶねー、あっちのねーちゃんは移動砲台かよ」
「剣士がかく乱して魔法で広域殲滅、剣士と魔法使いの手本みたいな戦い方ね」
「シンプルだけど、あのレベルだと打ち破るのも厄介だな」
イトイルの魔法攻撃に対して、水橋のスライム軍団も溶解液や高水圧の水を吹きかけたして応戦してはいた。
しかし、イトイルの周囲を周回している氷のリングは溶かしても切断しても、すぐに新しい物に代わり、内部のイトイルにはまったく攻撃が届いていなかった。
「あの男の相手は私がしますので他は魔法使いをお願いします」
エステラはそれだけ言うと、【縮地】で加速中のゼンニに追いすがるほどのスピードで肉薄し、接近戦を開始した。
「お願いしますって、俺の手持ちじゃあのリング壊せそうにないんだけど、どうすりゃいいんだ?」
「とりあえず、魔法を使えなくしましょ」
「どうやって?」
「こうするのよ、ぱんじー! 魔力反応型の花粉をおもいっきり噴射! みみっぴとるるぷーは蔓の結界を展開用意! あいつを閉じ込めるわよ!」
「なるほど! なら手伝うぜ、結晶スライムは全てシールドを展開して封じ込めに協力させる」
華撫のリボン、否、クリエイトモンスターぱんじーが花粉を噴射し、みみっぴとるるぷーが蔓を毛糸玉のようにイトイルの周囲に展開して閉じ込める。
さらに追い打ちで水橋の結晶スライムがそのまわりを取り囲み、シールドを多重に張り巡らして完全に封じ込めた。
「これであとはあいつが魔法を使えば花粉が反応して、」
「どーなるんだ?」
「人間が苗床の花が咲き乱れるわ」
「こ、怖えぇ」
華撫の目論みは普通の魔法使い相手であれば、ほぼ必勝と言ってよい戦法だっただろう、普通の魔法使いであれば。
ぼっ!
「は!?」
クリエイトモンスターの蔓と結晶スライムによる多重の封印に突然穴が開き、華撫と水橋は一瞬何が起こったのかわからなかった。
「ふー、魔力を糧に成長する花粉とかやってくれるじゃない、危うく普通に魔法ぶっ放すとこだったわ」
「な、どうやって!?」
「魔法は何も吹っ飛ばすだけじゃないわよ」
結界内から脱出したイトイルはゼンニほどではないにしろ、言葉を区切って、すさまじいスピードで華撫の前に出現し、拳を華撫に打ち込んだ。
「うぐ、」
「付与魔術ってしってるかしら?」
「この!」
「おっと、それに捕まるとめんどそうね」
華撫は攻撃を食らいながらも蔓をイトイルに絡ませようとしたが、間一髪で躱されてしまった。
「俺を忘れてるぜ!」
イトイルが迫ってきた時点でスレイを纏った水橋は後ろから不意打ちを仕掛けようとした。しかし、イトイルの周囲にはすでに氷のリングが復活していて、スレイを纏った水橋の一撃もイトイルまで届かない。
「くそ!」
「ならば内側から!」
セブルティスは攻撃のきかない外側からでなくリングの内部に【霧化】で入り込み、イトイルを捕えようとした。
「あら、悪くない顔ね、」
「これで終わりです」
「どうかしら?」
セブルティスは手刀をイトイルに叩き込もうとして、自分の手に違和感を覚えた。
「な、これは!?」
「このリングの中は私の空間よ、霧が水のままでいられると思わない事ね」
イトイルは氷のリングだけではなく、自分の周囲を包む空間そのものを支配しており、リングに内側に入る者はその冷気で即座に体温を奪い、動きを鈍らせる働きがある。その為、空気中の水分も凝固し、霧の水分もその状態を維持できなくなっていた。
霧から戻ろうとしたセブルティスの身体は上半身と二の腕ほどまでしか戻っておらず、残りの部分は冷気となって地面に降下し、すぐには身体に戻せなくなっていた。
「はい、良い男は氷像にでもなってて」
パキィンッ!
イトイルに頭を掴まれたセブルティスはあっという間に氷の胸像されてしまった。
「あ、くそ、セブルティスが、」
「げほっ、あの女~! ただじゃ済まさない!」
水橋はセブルティスがやられたことで、冷静になったが、一撃もらったことで華撫の闘争心には完全に火が付いた。
「ちょ、まて、華那ちゃん、一人じゃ危ない」
「ちゃんいうな!」
怒りにまかせて三体のクリエイトモンスターにやたらめったら攻撃させている華撫だったが、イトイルは氷のリングと付与魔術による身体能力でかすり傷すら負っていない。
「このぉ~!」
「探し物もあるし、そろそろ死んでね」
イトイルがいままで以上の数でリングを出現させ、本人は大きい魔法を放つために集中を始めた。
「させない! ぱんじー! 魔力反応型の花粉をあるだけ周囲に…、」
「すぐには無理ですぅ~」
「みみっぴ! るるぷー!」
「私たちの蔓ではあのリングを壊しきれません!」
「ちぃっ、準備不足だったとはいえ、これじゃ打つ手が、」
「ならば某が行こう」
華撫の前にすっとムラサメが立ち、右腕を刃に変えて、イトイルに斬りかかった。
「今度はアイアンゴーレム?」
「ただのゴーレムと思うなよ!」
イトイルとムラサメの戦いが始まろうとしていた。
「お前さんと戦うのも三度目じゃの、」
「そうですね、そろそろ死んでください」
「そりゃ困る。ワシはあと50年は生きたいんでの」
「今が寿命です!」
もう何度刃を交えたかわからないほど斬り合ったエステラとゼンニは、互いにこれまでで読み取った相手の太刀筋を見極めながら、その隙を突くように攻撃を加えるべく動き、千日手のようになりつつあった。
……ほほ、最初とも二回目とも微妙に太刀筋が変化しておるの、激しさは前の方が上じゃったが、技の精度と変化への対応力は前の二回以上じゃ、この短期間でどこまで成長するんじゃこやつ。
ゼンニは戦うたびに成長するエステラに武人としても高揚感と将軍としての恐怖を感じていた。
このままこのモンスターを放置してさらに成長させるのは危険だと、将軍としての自分の判断が下していた。
「悪いが、今回でおわりじゃ」
ゼンニはそう言い捨てると、魔剣に魔力を通し、刀身がうっすらと淡い光に包まれた。
前回ゼンニと戦った時、エステラはその状態の魔剣をそこまで見ていたわけではないので、何か隠し玉があることを前提に考え、迂闊に飛びかかる真似はしなかった。
「ほれ! いくぞ!」
様子を伺っているエステラに対して仕掛けたのはゼンニの方だった。
エステラはとっさに横薙ぎで来る魔剣の魔力剣を構えて受け止めようとした。
「が、ぁ!」
魔力剣は魔剣の前にあっさり刀身が消失し、エステラの胴に大きく一線、傷を刻んでいった。
「……あのタイミングで回避しようとは思わなかったわい。確実に身体を二つにしてやったと思ったのだが、」
「み、見くびらないでもらいたいですね、」
「ぬかせ、治療するのがやっとと言ったところじゃろうが」
「……そう思いますか!」
エステラは翼を広げ、宙に浮かぶと、十数個もの【マジックボム】を発動させ、ゼンニに向かって殺到させた。
「無駄じゃ」
ゼンニが殺到する魔法に魔剣を向け、切り捨てていくと、【マジックボム】は発動することなく霧散していった。
「……やはり魔力の吸収ですか」
「ご名答、『黒鉄剣ガッゼス』の能力は魔力の吸収、そして、」
ゼンニは魔剣を上段に構え、一息に振り下ろした。
「吸収した魔法の放出じゃ!!」
魔剣から放たれる十数の【マジックボム】がエステラに向かって襲い掛かった!




