第042話「キメラパニック」
ちょっとぐだぐだな感じになってしまったかも、なので次話で挽回します。
あと、気分転換で書いた新作小説『おお魔王よ、死んでしまうとはお疲れ様です』連日一話ずつ公開していくのでよかったら見てください!
「ぼっちゃん! もうすぐ出口です!」
「わかっている! あとぼっちゃんはやめろ!」
華撫の放ったデビルツリーキメラから逃げる二人は息を切らしながらも足を止めることなく走り続け、地上までもう少しの位置に来ていた。
「う、足が!」
「ぼっちゃん!」
もう少しで脱出できるというところで、レアルの足にゴートウルス達が見落とした小さいマンイーターフラワーが絡み付いて靴をがじがじとかじっていた。
「は、放せこの!」
「動かないでください」
剣を抜いたラニーはそのままレアルの足に絡みついてたマンイーターフラワーを切り裂き、倒れていたレアルを助け起こす。
「た、助かった、帰ったらなにか褒美をやるぞラニー」
「おそばにいられれば十分です」
そうして走り出そうとした次の瞬間、二人通ってきた道から太い木がまるでムチのようにうごめきながら殺到し、レアルを背後にかばいながらラニーは剣を使って防ごうとしたが、さばききれず、左肩と右足に小さくない傷を負ってしまった。
「くう、」
「ラニー! 大丈夫か!」
「平気です。それよりぼっちゃんははやく逃げてください」
「よし、ラニーも早く来い!」
「いえ、ちょっと無理そうです」
「なにを言うんだ」
「あれを逃げながら防ぐのは私には無理です。足止めしますんでぼっちゃんだけで馬車まで行ってください。道覚えてますよね?」
「当たり前だ! というかふざけるな! お前は我が家の騎士なのだぞ! 置いていけるわけなかろう!!」
「……まったく、どうしてそういうところだけはまともな思考なんですかあなたは? 普段からそうであってくれればどれだけこちらが助かる事か…、」
「今言う事ではなかろう! ラニー来い! 一緒に逃げるぞ!」
「・・・・あーもう! どうなっても知りませんよ!」
「かまわん!」
逃げるレアルとラニー、そして確実に距離を詰めてくるデビルツリーキメラ。緊迫の状況が続く彼らであったが、もう一か所、緊迫の事態が発生している場所があった。
「どういうつもりかしら?」
「な、なにが?」
「あいつらに逃げるよう伝えた事よ!」
先ほど騎士ラニーに逃走するように[音送りのコップ]で声を飛ばした事を問い詰められ、大地は絞り出すように訳を話す。
「いや、別に殺さなくて片が付くならそれでもいいかなと、」
「ふざけんじゃないわよ! あんなダンジョンまで追っかけてくるストーカーを生かしといたら今後何回だって来るにきまってるわ! ここで息の音を止めとくのが一番合理的よ!!」
「いやでも、あれであいつって一応貴族の長男なんだろ?」
「………まぁ頭にあの街で一番大きな、が付くほどにね」
「で、そんなのがこのダンジョン内で死んだらどうなると思う?」
「最低でも捜索と調査、このダンジョンで死んだのが分かれば、遺体の確保か、最悪はダンジョン討伐隊が編制されるかもなぁ~」
大地の背後で水橋は他人事のようにそう言い放ち、華撫も黙ってその可能性がゼロではない事に考えが至り、自分の選択が正しかったのか再度検証し始めた。
「……仮にあいつを生かして返したとして、それでここに再びあいつが来ないって保証は?」
「そりゃないけど、」
「ならどっちみち同じよ ここで殺しとけば少なくともあいつの顔はもう見なくて済む」
「ま、そうするのは簡単だ。けど、他の方法がない事もないけどな~」
他の方法?
水橋の言葉に華撫は自分が考え、シュミレートした結果以外の可能性をどうしても思いつかず、業腹な思いを飲み込んで水橋に問いかけた。
「……他の方法って?」
「引っ越しゃいいじゃん」
言われた途端に華撫は目からうろこが落ちる思いとともにその考えに至らなかった自分に激しく腹が立った。
「けど、引っ越すって言ってもそうすぐに新しいダンジョンを作るなんて」
「一から作るんならな」
「おい水橋、まさか」
「そ、もう出来てるダンジョンを拡張するんだったらそんなに手間はかかんないだろ? あそこならインフラも整いつつあるし、」
「ちょ、ま、何勝手にウチへの同居すすめてんだ!」
「はあ? 男二人のダンジョンに同居とか、完全に野獣の檻の中じゃない! お断りよ!!」
「いいのか~、ウチのダンジョンならクリエイトモンスターの女の子とか冒険者の女の子とか、女版サポートひよこが二人もいて大浴場やスイーツも作れる調理場付きだぞ~?」
「……立地は?」
「湖が見える山中で屋外プールもあるぞ。あとちゃんと個室もあるし、水洗トイレも今度完成予て、」
「ちゃんとしたトイレあるの!? 行く! 今すぐ行く!」
「お、おう」
「はー、居候がまた一人、」
「じゃ、あのデビルツリーキメラとかいうの何とかした方が良いんじゃないか? ほっとくとほんとに貴族様殺して引っ越しても追っかけられるハメになるかもしれねーぞ?」
「とはいってもあいつダンジョンマスターのあたしの指示すら聞かないからけしかけるくらいできないのよね」
「本気で命令聞かないのかよ! こっちに来たらどうするつもりだったんだ!?」
「その時は手持ちの全戦力で抑え込むだけよ、あれでも水を限界まで与えてないから取り押さえるのはそう難しくないのよ」
「て、事はあのモンスター水与えればまだまだ強くなるってこと?」
「そうね、本格的に水を取り込んだらうちのダンジョンが万全の状態でも壊滅するかもね」
「シャレになんねぇ」
「とりあえず、セブルティス達で捕まえに行くか」
「だな」
つつけざまに襲ってくる木を必死で捌き、手に持っている剣は半分ほど先から折れてしまっていたが、なんとかラニーはレアルを守りきり、地上へと脱出することに成功した。
「止まらず馬車まで走ってください!」
「分かっている!」
ダンジョンを振り返る余裕すらなくレアルは全力で走り続け、ラニーも体力の限界に近づきつつある身体を奮い立たせて後に続く。その二人を追いかけようとデビルツリーキメラはフラワーラビリンスから這い出てこようとするが、その姿が空の下に出ることはなかった。
なぜなら背後から華撫の指揮するマンイータープラント達によって雁字搦めに縛り上げられ、進もうにも進めずにいた。
「おとなしくしてくださいデビルツリーさん」
「大地様、あれは敵として見てよろしいのですか?」
〈一応敵って認識で大丈夫だ。ただ、やばそうだったらスレイを連れてすぐ戻ってこい、いいな?〉
「畏まりました」
身動きの取れないデビルツリーキメラは身体を左右にゆさゆさと揺らし、足元の根っこをところ構わず伸ばして壁や天井、マンイータープラントに突き刺して抜け出そうとする。
「やっかいですね」
「セブルティスさん、水橋様がわたしは身体の水分を吸われるとまずいから下がれと、」
「その方がよさそうですね」
「ではすいません」
「いえ、あとはお任せを」
縦横無尽に伸びまくる根っこを躱して次第に距離詰め始めたセブルティスはデビルツリーキメラの弱点はどこか躱しながら観察し、探し始めた。
狙うなら胴体だが、なにぶん植物モンスターだからな、どこが核になっているのかわからんと仕留めきれなかった時が面倒だ。
慎重に狙いを付ける位置を探し、考えた上でセブルティスは一直線に叩き割る方法を選択した。
「はぁ!」
手刀で持って大木を真っ二つにするなどという無茶をバンパイアの筋力によって可能としたセブルティスは真っ二つに割れた二つの断面を油断せずに睨み、距離を取る。
すると、一度は動きを止めたデビルツリーキメラがうねうねと動き始め、断面が外側と同じような厚い皮に覆われるのと同時に両方とも復活した。
「なるほどこうなりますか」
セブルティスの様子を[写し画の水晶]で見ていた大地たちも驚きを隠せない表情で華撫に質問する。
「おい、あんな再生力あんの!?」
「んー、強力なのは何回か他のモンスターと戦わせて知ってたけど、真っ二つにしたことはなかったからなぁ、あそこまで復活が早いのは知らなかった」
「どうやって捕まえるんだよ?」
「最悪ここに放置でもいいけどね、とはいえ、最低でも3階層より下に連れてかないと出て来ちゃうだろうけど」
「じゃ、誘導ってことか?」
「そうね」
華撫から方針を聞いた大地はセブルティスにその事を伝え、長い戦いが始まろうとしていた。
次回は、
セブルティスは無事にデビルツリーキメラに勝てるのか?




