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ダンジョン経営勉強中。  作者: イマノキ・スギロウ
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第039話「フラワーラビリンス」

少し短めです。

 綿毛に乗って大分街から離れると、華撫が下りるように言い、地上に着地して徒歩でダンジョンに向かう事になった。


「ひとまず私のダンジョンで休憩してから自分のとこにもどりなさい」


「ありがとう、助かるよ」


「別に、助けに来てくれお礼よ」


 話しながら進んでいくと深い森の中にある洞窟にたどり着き、華撫はそこに何の躊躇もなく入っていった。


「ここが華撫ちゃんのダンジョンか、結構暗い…うわっ!」


「水橋!?」


 大地より先に洞窟に入ろうとした水橋に植物の蔓や異様に長い葉っぱが巻き付き、水橋を締め上げようとする。


「いででででっ!」


「あ、ストップ、みんな攻撃しちゃダメ!」


 水橋の身体に巻き付いていた蔓や葉っぱは華撫が言うとゆっくりと水橋を解放していった。


「た、助かった~」


「ごめん、うっかり手出ししないように言うの忘れてた」


「命に係わるから言っといてくれよ~」


 そんなやりとりをして奥に進むと、中はなんともすさまじい光景が広がっていた。まず床一面は色とりどりの花が広がり、壁面も大半が花で埋め尽くされている。残りの部分は噴水の様に水が流れ、水路をとおって花に水がいきわたるようになっていた。


「花屋みてえ」


「てか、よくこんなとこでこれだけの花育てたな」


「何言ってんの? これみんなあたしのダンジョンモンスターよ?」


「「はい!? これ全部!!?」」


「そうよ、アウラウネやマンイーターフラワーとかからこつこつと成長させて少しずつ種類を増やしたんだから」


「へぇ~、すっげ」


「華撫ちゃんって植物系モンスターのマニアだったのか?」


「・・・ただ単純にきれいな物が好きってだけよ」



 迷宮を抜け客間のような部屋に通された大地たちは華撫の手製のお茶を飲みながらようやく危機を脱したことに安堵していた。


「あ、そういえば、そもそもなんで華撫はあの街に居たんだ?」


「・・・・・・。その前にこっちも一つ聞いていい?」


「ん? なに?」


「なんで呼び捨てなのよ!?」


「え? 別にメールで何回かやり取りしてるしまんざら知らない仲でもないからいいかな、と思って、」


「良くないわよ! せめて華撫さん、とか華撫様、とかなにか敬称を付けなさいよ!」


「え~、別にいいじゃん、ほとんど年変わんないんだし」


「~ったくもー、これだから礼儀知らずな男って嫌いよ」


「や~い嫌われた~」


「あんたはもっと嫌いよ! このスライムマニア!!」


「わ~い最高の褒め言葉だ~」


「わかった、じゃあ華撫さん、なんであの街で貴族に拉致られるような状況になってたんですか?」


「……、パン買いに行って捕まったのよ」


「はい?」


「だから、ハニートースト用のハチミツと食パン買いにいつものパン屋に言ったらあの貴族長男(バカ)が待ち伏せしてて、そのまま屋敷に連れてかれちゃったのよ!」


「「・・・・・・・・」」


 大地と水橋は華撫が言った言葉の意味を理解するのに数秒ほどの時間を必要とした。


「ぷっ、ぶははははははは!」

「パっ、パン買いに行って捕まるダンジョンマスターとか、どんだけマヌケなんだよ、ひー腹いてーww」


「な、なによ! 言っとくけどあの街、パンだけはかなりの一級品が揃ってるのよ!? 蜂蜜だって専門の冒険者がスキルで取ってるから混じりっ気のない透き通ったのがいつでも店頭にあるし、この世界で安くスイーツ食べようとしたらそれくらいしか手に入らないんだもん! 仕方ないでしょ!!」


「そ、そこじゃねーよ、はっはっはっ」


 貴族に捕まっていた原因がなんとも女の子らしい理由だったことに大地と水橋はしばらくの間、腹をかかえて笑い、それを華撫は顔を真っ赤にして怒り散らす光景が続いた。







 大地達が脱出したことで脅威がなくなり、封鎖が解除された街ではいつも通りの風景が戻りつつあった。しかし、ある一か所、貴族の屋敷の中だけは普段通りとはいかず、いつもなら女に愛の言葉をささやくだけの大人しい貴族長男が、着慣れない甲冑を着込んで今にも屋敷を飛び出そうとしていた。


「離せラインズ! たとえ私は一人でも行かねばならん!」


「どこにも行く必要などありません」


「行かせてくれ! カナさんに私の妻となってもらう為にも私自身が行って話をせねば!」


「…失礼します」


ラインズは一言ことわりを入れて貴族長男(バカ)の頭に手を添え、呪文を唱えた。


「睡眠魔法【スリープ】」


「くかー、」


 魔法によって一瞬で眠りのついた貴族長男を抱えたラインズはそのままそばに居た騎士団員に預けた。


「装備を外して自室に放り込んでおけ、お前は見は…、いや護衛としてなにかあれば俺を呼べ」


「し、しかし団長、」


「これ以上ぼっちゃんのわがままに付き合いきれん、封鎖の後始末もまだ残っているというのにまったく、」


 そう言い残してラインズは足早に仕事のため、屋敷を後にした。

  



「…様、起きて下さいませ」


「ん、ラニーか、私は寝ていたのか?」


 貴族長男は目を覚ますと、そこが自分の自室である事を認識した。


「はい、ラインズ団長の【スリープ】でお眠りに、」


「まったくあいつは、すぐに支度をしろ、私は行かねばならん」


「無理です。ラインズ団長が私以外ほとんどの騎士団員を街に行かせていますのですぐに動かせる兵が居ません」


「く、だが私は行くぞ」


「そんな危険です!」


「ならばお力をお貸しましょうか?」


「「!」」


 声のする方を見るといつの間にか扉の前にローブで顔まですっぽりと覆い隠した人物が立っていた。


「誰だ!」


 ラニーと呼ばれた騎士団員が剣を抜き、貴族長男を背後にかばいながら前に出る。


「ああ、別に争いに来たわけではありません。ただ商売をしに来たのですよ」


「商売だと? 商人風情がこんなところまで入り込めたと言う気か貴様は!」


「それについては秘密です。ただ、いまそちらの方は強い力をお求めの様子、(わたくし)でよろしければそのお力をお譲りすることができますが、いかがですか?」


「ふん、傭兵でも売り込むのか?」


「ぼっちゃま、耳を貸してはなりません!」


「ぼっちゃまはよせ、 で、どうなのだ? 人数は?」


「いえいえ、傭兵などと無駄に金がかかってたいして使えない者も多い損な商品などではなく、もっとお買い得な品でございます」


 そういってローブの人物が裾から何かを取り出すと、そこには透明できれいな装飾の付いた八面体の水晶が鎖につながってぶら下がっていた。


「なんだそれは? 今は装飾品などに興味はないぞ」


「これはあるダンジョン産のアイテムでして、これに込めた魔力の量に応じてモンスターを操れるのです」


「! 本当か?」


「お疑いでしたらやってみましょうか?」


 そう言ってローブの人物は反対の手で小さな檻、というよりも籠のようなものを取り出し、蓋を開けた。するとそこから一匹のフレアスネークが顔を出し、するすると籠から出て来た。


「貴様! ぼっちゃまの部屋にモンスターを!」


「まあ、見ていてください」


 ローブの人物が水晶を前にかざし、水晶の中に淡い光がこもると、ローブの人物は呪文を唱え始めた。


「傀儡魔法【パペット】発動!」


 するとフレアスネークはビクンと反応し、そのままの姿勢で動かなくなった。


「よし、右回りにぐるぐる動け ………次は左回り、 ………今度は、」


「もうよい、意のままに動くということはよくわかった。だが、いちいち指示しなければ動かないのであれば使い物にならんぞ」


「モンスターの知能によるところが大きいですが、私を守れとか、あいつらをやっつけろと指示すればあとは勝手に行動しますので、そこまで手間ではないはずです」


「どれくらいの数を操れる?」


「これ一つで最大10体を操れます。魔力が足りれば、ですが」


「ふん、ちなみにいくらだ?」


「金貨50でどうでしょう?」


「ご、」


「安いな、買った!」 


「ぼ、ぼっちゃん!」


「ラニー、金の用意と出発の支度をしろ。カナさんをお迎えいかねばならん」


 仕えるべき主が危険な物に手を伸ばしているのがわかっていても一介の騎士であるラニーはその言葉に従う他なかった。





 


 次回は、

 よくも悪くも一途な思いって時として強い力になることがあるけど、その結果は思っているものと違う事も多い。さて貴族長男(バカ)が行きつく先はどっちだ?

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