第003話「初めまして、ますたー」
一部、文章に誤りがあったので修正しました。
ダンジョン経営を始めて二日目、
コンソールに時間表示があるのが地味に役立つ。
陽の光がない洞窟内で時間がわかるのは大きいからな。
さて、昨日から一晩かけて作り上げた俺の極上の美女悪魔クリエイトモンスター、
いよいよ形になったので召喚といこうか…、
来い! 〇ーーーーーール!!
銃ないけど。
コンソールの召喚アイコンをタッチしたと同時に、
いかにもそれっぽい魔方陣が地面に出現し、光とともにクリエイトモンスター
が現れた……んだけどあれ?
「ちっちゃいですね」
「ちっちゃいな」
現れたのはコウモリのような羽を左右二枚づつ、二対生やした
小学生くらいのちっこい銀髪の女の子だった。
ってなんでじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
慌ててコンソールに目を落とすと、召喚の字の後にエラーと出ていた。
召喚エラー? 先ほど押した召喚アイコンの画面を戻し、
クリエイト画面の設定を再確認する。
【名前 エステラ】よし。
【性別 女性】よし。
【種族 低位悪魔】よし。
【性格 まじめ】よし。
【能力値 各ステータス基準値+100】よし。
【容姿設定】よし。 これに一晩使ったってのに…、
ん、下の方にまだ項目があるだと?
【年齢設定 初期設定値 10】・・・・・・・・・・・・・・。
しまったあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
そりゃそうだ、いくら容姿を設定してもそれを明らかに下回る年齢じゃ、
エラーが起きて年齢相応の容姿になっちまうってことか。
「ありゃー、やっちゃいましたね大地さん」
「どうにかして設定し直すことはできないか?」
「出来ますよ、スキルや能力追加と一緒でDPを使えば設定のし直しは可能です」
「よし、さっそく…、」
「あ、あの…、」
横からかけられた声に俺の視線をそっちを向く。
「初めまして、ますたー。これからどうぞよろしくお願いします。
それで、あの、どこか私、至らないところがあったのでしょうか?」
・・・・・・・。
微妙に怖がりながらもこちらへの礼儀を忘れず、質問をして返答を
待つ少女の様子を見て俺は考えを少々変えざるおえないと悟った。
「Pちゃん」
「はい、なんですか?」
「これはこのままでも成長するのか?」
「しますよ。クリエイトと言っても基本はこの世界の法則に則った生ある者
ですし、とはいえ種族が悪魔ですから寿命の概念も
あってないようなものですがね。
今エラーのあったシステムを調べてますが、
とりあえず成長すれば設定した容姿通りになるはずです」
「そっか、じゃあこのままでいいか」
「おや、やめるんですか?」
「ああ、今はまだDPも無駄遣いできないし」
「ですね」
「エステラ、今日からよろしくな」
大地の言葉に不安そうな顔で沙汰を待っていたエステラは
ゆっくりと顔が明るくなっていき、最後には笑顔で返事を返していた。
「はい! こちらこそよろしくお願いいたします!」
俺ロリ属性はなかったはずなんだけどなぁ~。
さて、俺はエステラとクリエイト以外で購入したゴブリン10体とともに
洞窟の一番奥、もっともひろい最奥の間で戦闘訓練をしていた。
召喚されたモンスターは知性のあるなしにかかわらず、
すべてダンジョンマスターである俺の命令をよく聞き、よく動いてくれる。
って言ってもまだゴブリンとエステラしか確認が取れてないけど。
でだ、10体のゴブリンは先ほどから俺の指示のもと、なんとか形としての連携を
取ってエステラを攻撃しているのだが、まったくと言っていいほど当たらない。
ゴブリン達の攻撃をふわり、ひらり、とエステラは躱し、足払いで
ゴブリンを転ばしたり、あの細腕でどうやってるのかと思うような力で
大岩をひょいっと投げ飛ばしている。
岩が飛んでくるたびにゴブリン達は慌てふためいて連携が乱れる。
その隙を付けばすぐにでも決着はつくのだが、エステラはゴブリン達が
体勢を整えるのをのんびりと待っていた。
5回程そんな事を繰り返して、そろそろ見た限りでわかる事もなくなって
きたので終わりにすることにした。
「はい、しゅーりょー」
「ますたー。いかがだったでしょうか?」
「そーだな。エステラが強いって事を実際に見て確認できたな」
「はい! ありがとうございます! ますたー!」
「あとは設定した魔法の性能チェックだな。
エステラ、どうだ?」
そう言われてエステラは自分の両手からボゥッと光を出したり
消したりしながら調子を確かめるように繰り返し確認していた。
「はい、問題なく使えます」
「今はまだ二つしか設定してやれてないけどな」
「いえ、ますたーが貴重なDPを使って与えてくれた魔法です。
私の身命を賭して必ず成長させて見せます」
ん? 魔法の成長?
「Pちゃん、聞きたい事があるんだけど、」
いつのまにか俺の頭の上が定位置になりつつあるひよこのPちゃんに
問いかける。
「はいはい、今エステラちゃんが言ってた事ですか?」
「そう、エステラに設定した魔法も成長ってするのか?」
「しますよ。魔法だけでなくスキルもです。
修練を積んだり、条件を満たせばそれらの技能は成長・進化して
より強力になっていきます。たとえば私の持っている【千里眼】も
最初は【一里眼】【十里眼】【百里眼】と成長を重ねて到達するのです。
ちなみにDPによる強化も可能ではありますが、
こちらは消費DPが高いのであまりお勧めできません」
そうなのか。
あ、ついでにこれも聞いとこう。
「スキルや魔法って俺でも覚えることは可能か?」
「えぇ、可能ですよ」
「やっぱDPが必要なのか?」
「その方法もありですけど、独力で覚えることも可能です。
昨日も言いましたが、
大地さんはコアと直結しているので魔力は申し分ありませんし、
魔力の扱い方さえ覚えれば十分習得できますよ」
ふむふむ、良い事を聞いた。
独力で覚えればDPを無駄にせず自分を強化できるのか。
「ますたー? ご心配なさらずともますたーの御身は私たちがお守りしますよ?」
「ん、あぁ、そういう心配をしてたんじゃないんだけどな、
まぁありがとなエステラ」
「いえ、そんな、あぅぅ」
見当違いの気遣いではあるが、礼を言いつつ、エステラの頭をなでてやった。
するとなでているエステラの頭がみょうに熱くなっていく。
おいおい、俺の予想通りだとしたらテンプレすぎんだろ。
そうではないと否定できる可能性が風邪くらいしか思いつかないが、
悪魔でも風邪って引くのか?
現時点で俺の今の手持ちの戦力
低位悪魔エステラ
ゴブリン×10
あとはトラップの落とし穴くらいか…、
残りのDPはエステラのクリエイトに1500DP使って、ゴブリン10体で
100DP、それから部屋の設置分400DPで合計2000DPを引いて、
残り4670DPか。
え? 計算おかしくないかって?
20DPは地脈からの吸い上げ分です。
ぐうぅ~ぅぅ~ぅっ、
なんだ? 今の音どっかで聞いた覚えが…、
思い出そうとしているとエステラが俺の服の裾をくいくいと引っ張りながら
話しかけてきた。
「ますたー、その、申し訳ありませんが……、
お食事をいただいてもよろしいでしょうか?」
食事ってことはさっきの音は…、
「あーすまん、気が付かなかった。そうだよな、あれだけ動けば腹減るよな。
おーい、ゴブリンのみんなも集合してくれ。メシにしよう」
そうして皆を集め、俺はなるべくDPを無駄遣いしないように安くて量の多い
料理を購入リストから選んで皆にふるまった。
ゴブリンは大トカゲの丸焼き5DP×10
エステラは鶏肉の香草焼き(丸焼き)20DPをあっというまに平らげてしまった。
なんとか支出以上のDP収入を確保せんと、食費だけでダンジョンが終わるな。
今後のDP家計簿を付けるため頭の中で計算を始めていると、
頭の上にいるPちゃんが重大な事実を言いやがった。
「あ、大地さん、言い忘れてましたけど、
クリエイトや一部の強力なモンスター以外はダンジョン内に居る限り、
飢え死にする心配はないですよ。
ダンジョン内に満ちている魔力が彼らの栄養にもなるので」
「そういう事は先に言えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
50DP無駄にしちまった。
今回召喚したエステラの能力紹介
名前 エステラ Lv.1
性別 女性
種族 低位悪魔(成長あり)
性格 まじめ(隠し要素あり)
所有スキル・魔法
・???? ・????
ちなみに大地はもっと上位の種族を選びたかったのですが、現時点のクリエイトでは
完全な人型にできるのでそれ以上、上の種族がなかったので仕方なく低位悪魔を選んだという設定です。
これじゃ公開情報ほぼわかんねーじゃねーか! って? これから徐々にかんが…、
ゲフンッゲフンッ、公開していくので楽しみながら待ってていただけると
幸いです。
次回予告
薄暗いダンジョンに入り込む三つの影、
トラップ発動に情熱を燃やすダンジョンマスター大地に迫る危機、
次回、初めての侵入者? お暇なときにでもお読みください。