第028話「ダンジョン牧場開園!」
年末に向けていろいろやる事が多すぎる・・・。しばらくは週末のみの掲載になりそうです。
あと、すごい時間がかかると思いますが、いままで上げた話を全体を見直してリメイクしたものを別掲載で完成したら出そうと思います。こっちの掲載は消すつもりはないのでご安心を。
ダンジョンのモンスターは基本的に食事をしなくても生きていける。
それはダンジョンに満ちる魔力がダンジョンモンスターたちの栄養となり、空腹になることなく生きるためのエネルギーとなってくれるためである。
しかし、ダンジョンモンスター以外の者はというと、
「は、腹減った~、」
「ただいまホブゴブリンどもに食事を作らせていおりますので、今しばらくお待ちくださいマスター」
「凝ったもんでなくていいから早めに頼む」
「そうはいきません! マスターのお口に入るのですから、そこらのつまらない料理をお出しするなどとても、」
「いや、普通に焼肉定食でいいからすぐ頼む」
「俺らからも頼むよ~、さっきからスレイが特大のゼリーにしか見えなくなってきた」
「あたしも~」
水橋とアネイルの発言に一瞬ぎょっとしたスレイはそのあと、「でも少しくらいならいいかな?」などと自分の身体を好きな分量だけ分離できるスライムだからなのかお気楽なことを言っていた。
本来ならDPで好きな料理を出せばいちいち待たなくても良いのだが、これまでのダンジョン戦の反省から、本当に余裕のあるとき以外でDPを無駄使いするのは完全に禁止になってしまっていた。
その結果、大地は好みの虹色コーヒーまで禁止され、カフェイン不足のせいで普段に比べて3割ほど元気がなく、そんな大地に元気を取り戻してもらおうとエステラが日々涙ぐましい努力でコーヒーの代わりになるモノを研究していた。
そうして大地たちが腹をすかせて待っていると、調理場の扉が開き、ホブゴブリンたちが手に手に料理をもって現れた。
「オ待タセイタシマシタ!」
「遅い! マスターを待たせるとは何事だ! 貴様たち、罰を覚悟しておけ!!」
「ていっ、」
「あうっ!」
せっかく食事を作ってきてくれたホブゴブリン達にいきなり手厳しい事をいうエステラの後頭部に俺はチョップを食らわせる。って叩いた俺の手がすげえイテェ。エステラの奴、マジ何で出来てんだ?
「マスタ~、いきなりなにをなさるのですか?」
「元はと言えばお前が昼飯の直前でメニュー変更したからだろうが!」
そう、本来であればもうとっくに大地たちは食事にありついていたはずなのだ。しかし、昼食用のチャーハンの味見をエステラがしたのがすべての始まりだった。「このようなものをマスターお出しすることなどできない!」とエステラが言いだし、調理担当のホブゴブリン達にすべての材料とメニューの見直しと作り直しを命じ、そこから現在に至るまでホブゴブリン達は必死に調理に励んでいたのだ。それに対してさっきのような物言いと昼食が遅れた事をホブゴブリン達に責任転嫁しようとする行為など、大地からすればエステラこそ「罰してやる!」と言いたいくらいだった。とはいえ、自分にとって理想とする容姿のエステラは大地としてはあまり強く叱れないのでいまいち厳しくできず、甘やかす結果になっていた。
「とにかく出来たんならさっさと食うぞ、ホブ達への罰はなし!」
「よ、よろしいのですか?」
「これ以上ごねるならしばらく寝室への入室禁止にするぞ?」
「さあ、頂きましょう! とってもおいしそうですね!」
こういうところは扱いやすいんだけどなぁ…、
一通り食事を済ませ、デザートの果物を食べていると、珍しくホブゴブリンから話しかけられた。
「主様、モシヨロシケレバ、食材ヲ保管デキル場所ヲ頂ケマスカ?」
「食材の保管? 一応、食糧庫は作ってあったはずだろ? 小さかったか?」
「イ、イエ、小サイナドトイウコトハ、デスガ、今回ノヨウニ作リ直シヲ言ワレタ時用ニ、色々ナ食材ヲ管理デキル部屋ガアルトタスカルノデス」
「ふむ、一理あるな」
DP以外での食事は基本外で狩って来たものだ。食料庫に備蓄ができると言ってもDP値段が高いのと電源の確保ができない理由から冷蔵庫をいまだに導入していないため、干物や乾燥させたもの以外はもって数日ほどなので、俺達が食べきれないほどの量は備蓄していない。というか基本はその日に狩ってきた食材がメニューの主菜になるというある種サバイバルに近い食生活だ。
「だったら部屋なんて言わずにもういっそ始めちゃってもいいんじゃないか?」
「ん、始めるって?」
水橋の言葉に俺を含め、全員が注目し、それを確認した水橋が言い放った。
「牧場と農業で自給自足だよ」
数日後、ジャガイモ生産のための大ホールとダンジョン周辺に生息している動物たちを雄雌両方捕えて飼育可能なスペースを地下空間に確保した。
「捕まえたはいいけど、ちゃんと繁殖すんのかコレ?」
「野生動物だからな~、ま、飼育に関しては今後情報を収集していこう。知り合いのマスターにも似たようなことしているのがいるからちょっと聞いておくよ」
「お、助かるよ」
「むしろ問題は野菜だろ、水源の確保と土壌はどうにかできるけど、地下だと育たない野菜もあると思うぞ?」
「とはいっても外に作ると野生動物に食われる恐れもあるし、管理が面倒に、」
「少しは妥協しようぜ、今ならモンスターの数も多いし、何とかなるだろ」
「考えとくよ」
「あんたたちってダンジョンに居なかったら王国でそこらを歩いてる平民となんら変わらないわよねー」
「そりゃそうだよアネイルちゃん。おれなんて善人が服着て歩いてるようなもんですよ?」
「え? 水橋ってエロが善人の皮被ってから服着てるんじゃないの?」
「おい大地! それ言うんだったらあの時覗いてたお前も同じだぞ!」
「俺あの時湯煙でなにもみてな…」
ヒュゴッ!
「それ以上しゃべるな! この変態ども!」
ひとくくりにされてしまった。
ともあれ、今後の改善点を考えながら試行錯誤でダンジョン内における食料問題は徐々に解決していこうと大地達は考えつつダンジョン牧場を後にした。
そして大地たちがそんな日々を過ごしていた頃、
大理石でできた仰々しい部屋において白い顎ヒゲを蓄えた禿頭の男と黒のベールで顔の半分を隠した色っぽい服装の杖を持った女性、そして大地たちのダンジョンに挑み、返り討ちにあったラリゴ将軍の副官であるリオルの姿があった。
「先の報告は理解した。で、なにか申し開きはあるかの? リオル君」
「いえ、ありません。我々はスライム魔窟のダンジョンマスターを追跡し、新たなダンジョンを発見、これを攻略しようと挑み、結果として兵士の大半とラリゴ将軍を失うという大損害を出してしまいました。撤退の判断についても私の独断で行われたことであり、兵士たちはただそれに従っただけです」
「ふむ、別にここは王や貴族のめんどくさい場ではない。率直にモノ言ってもらって構わんよ」
「……はい、ダンジョン攻略の戦功を焦ったラリゴ将軍が無理矢理に兵たちを連れまわすを少しでも抑えようと負傷兵を私の指示で返したのですが、それが裏目に出ました。まさかあのスライム魔窟の他に王国の近隣であれほど強いダンジョンがあるとは想定外でした」
「騎士学校で習わなかったかの? 戦において準備を怠るな、準備が不十分なら自分が負けるあらゆる状況を想定し、生き残れる手段を考えよ、と、」
「忘れかけていました、たしかにあの時はただ逃げるネズミの一匹、いやスライムの一匹を狩る程度の気持ちで挑んでいました」
どおぉぉぉぉん!
リオルと白ヒゲの御仁の会話を黙って聞いていた女性は徐々に肩をわなわなさせて、ついに爆発した。
物理的に。
「いい加減にしなさいよ!! なんのために私がわざわざ結界を張ってこの会談の場を作ってやったと思っているの!? 無駄話してないでさっさとあたしの妹が生きているのかどうか教えなさいよ!!」
「ぐあ、く、くるし、」
「落ち着かんか、イトイル」
「大将軍ごときが私に指図すんな! ほらさっさと言いなさいよ! この!」
「首を絞め上げていてはしゃべれんじゃろう? 離さんかこのお転婆娘が!」
イトイルと呼ばれた女性は自分の首を締め上げる手を握りながら青い顔をしているリオルの顔に気づいてようやく手を離した。
「ぶはっ、はー、はー、死ぬかと思いました」
「さ、さっさと言いなさい! 妹は、アネイルは無事なの!?」
「ダンジョン内に入った兵士たちの話から最後に彼女を見たのは敵からの炎をアネイル殿が相殺している姿だったとのことで、そのあと火に焼かれて意識を失った兵士たちが目を覚ました時にはもう姿はなかったとのことです」
「その報告はもう知っているわ! 本当に誰も姿を見てないの!?」
「攻略隊が帰った時に疲労困憊の兵士たちをお主が直々に一人一人締め上げて話を聞いたうえでこれ以上なにが出てくるものでもないじゃろう」
「そんなのわかってるわよ、わかってるけど…、妹が…、」
「宮廷魔導士であるお主が軽はずみに行動できずに苦い思いをしているは理解しているが、だからといってリオル君に当たるのは間違っておるぞ?」
「知ってるわよ!」
「ならばもう少し自制せい、辛抱できんようなら次の攻略隊にお主を同行させるよう国王に進言せんからな」
「え! いけるの!?」
「まだわからん、そのダンジョンがそのまま放っておくと本当に危険だと判断されん限り、遠巻きの監視だけになるかもしれんからの。貴族達だって損な役回りは御免だろうしな、放っておいて害がないならそれに越したことはない」
「ですが、今回は仮にも将軍の一人が殺され、複数の冒険者まで退けていますからね。なにか決定的となるモノがあれば一気に攻め入る口実になるかと、」
「スライム魔窟のマスターが居るじゃない、それで口実になるでしょう?」
「あれから大分時間が経っておるからな、いつまでもそこにとどまっているかどうか、確実に居る証拠がない限り、貴族どもは動かんじゃろう。そうした場合、城の兵士たちだけでとなるとダンジョン攻略ができるだけの数を揃えるのは難しい」
「ハーゲン帝国や商人連合との国境線の為にもすぐ動ける兵は必要ですからね」
「くう~、飛んでいけばすぐ近くに居るのにいけないなんて、」
「イトイル、本当に飛んでいくなよ? 国王を怒らせたら宮廷魔導士の地位を失うぞ?」
「分かってるわよ!」
王城の一室で誰にも聞こえないように結界を張られた中で行われた会談はそうして終わった。
しかしその後、彼らの予想よりも早く自体は動く事となる。
次回は、
大地たちがまたしてもバカなダンジョン改造計画に着手?
そして、王国で暗躍する影が!?




