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Synthetic School  作者: 南雲 楼
五章 学園、違和感
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2

「そういう問題じゃないから……」


 久炉は声を絞り出すと神奈の差し出したティッシュを数枚とり、口元に当て、普段のマスクのように顔を隠した。


「おや、気分が優れないのですか?」


「いや、マスク代わり」


 侵入者である男子生徒の脇を通り、床に投げ出したままのスクールバッグを開け、“使い捨て不織布マスク六十枚入り”と書かれた箱から新しいマスクを一枚取り出すと普段のように付け直し、男子生徒に視線をやった。


 神奈は百八十センチより少し小さい位のかなりの長身だ。男子にしては長めの色素の薄い茶髪と穏和そうな顔付きから中世的な印象がある。

 一人称が“私”だからだろうか。


 男子生徒では珍しく、上着を着ないでワイシャツの上に学校指定のセーターを着用していることが少しだけ目立つ。



「で。なんでここに入り込んでたんだよ」


 久炉は話を戻す。鍵もかかっていた生徒会室にどうやって入り込んだのだろうか。その疑問を解消したい。生徒会室をざっと見渡す。見た限りでは彼に物が取られた、ということはないようだ。


「心配しなくても、物を盗んだりはしていませんよ。触れた物と言えばそこの机と椅子……ああ、電気も点けさせていただきました」


 神奈はそういいつつ、先ほどまで彼が座っていたパイプ椅子に腰かけた。やっぱり自分は電気を消していたのか。久炉は笑みを浮かべる神奈に少し警戒しつつも彼の向かいの椅子に座る。


「まあ、簡単に言えば、魔法でお邪魔させていただきました」


「魔法? 何の?」


 魔法。この言葉を聞けば何が起こってもおかしくはないと考えられるのは実際に魔法に触れているからだろう。外部の人間が魔法で鍵のかかった部屋に入ったなどと聞けば笑い飛ばすか、相手にしないはずだ。


「それは秘密です」



 神奈は久炉の質問に答えず、また笑みを浮かべた。久炉はそれに少し不機嫌になりつつも、次の質問を口にした。


「じゃあ、わざわざ魔法使って、なんでここに入り込んでたんだよ」


「少しあなたと話したくて」


「ああ、生徒会に何か用事あったのね。そういう時はあの連絡用ポストに投書しといてくれると助かるかな」


 久炉は扉につけられたポストを指で示した。しかし神奈は首を振る。


「いえ、生徒会全体に用があったのではなく、ただ、貴方に用があったのです。他の役員の方には用がありません」


「……何だよ、言ってみろよ」


 久炉は訝しげな視線で神奈に話の続きを促す。彼は何の用があってここに来たのだろう。神奈の物言いからして、自分がここに戻ってくるのを待ち伏せていたという事になる。

 魔法で生徒会室に侵入してまで待ち伏せたということはよほどの用事があるようだ。心で身構えた。


「では、伺います。あなたは、魔法について……どう思いますか?」



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