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Synthetic School  作者: 南雲 楼
三章 魔法、浸透
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6

 七〇五号室のチャイムを鳴らす。うっすらとピンポンと他の部屋同様の呼び出し音が聞こえた。しばらく待ってもドアは開かない。

 動く音がしないかとドアに耳をつけて感覚を研ぎ澄ますも何も聞こえない。


「ダメだ。聞いた通りうんともすんとも言わね」


 久炉はため息をついて振り返った。反対側の壁にもたれかかっていた名月は掌を這わせていた虫を灰色の光に戻すと顔を上げた。


「寮母さんが何度も声かけたのに、今回は返事があるってことはないんじゃないですかね」


「ん、まあそうだな」



「う……鍵って壊れてるんでしたっけ?」


 ドアの隣にいた衣琉は鍵に目をやりながら呟くように聞く。久炉は首を振ると預かった鍵を取り出し、鍵穴に差し込んだ。


「鍵は開くけどドアが開かないらしいよ」


 言いながら鍵を回す。カチャン、と鍵の開く音と、感触が手に伝わる。ドアノブに手をかけ、下に押す。動いた。そして、引いた。


 扉は開かない。何度か引いてもガタガタと音を立てるばかりでドアが開かれることはない。



「うゆ、どうしましましょうか……」


「応答があるまで、呼びかけるしかないと思うんですけど」


 いつの間にか横に来ていた名月が眉をひそめて呟く。返事があるといいのだけど。もし、なかったら。久炉はガンガンとドアを叩く。


「広瀬さん! 生きてたら出てきてくれ!」


 学生寮の壁はかなり厚く、防音性に優れているらしい。自分が部屋で騒いだりしても隣の部屋から文句を言われないことには安心していたが、こういう時は逆効果だ。呼びかけたところで住人に届いてすらいないかもしれない。


「うゆ、全然返事ないですね……」


「呼びかけるよりチャイム鳴らした方がいいと思います。外からの声はほとんど聞こえないです」


 名月はそう言ってチャイムを連打する。確かに音が隔絶されているならこれしか届かない。微かにピンポン、と短い音がする。壊れてはいない。

 時折、廊下を行き来する生徒から好奇の視線を浴びたが、連打はやめない。



 数分間チャイムを鳴らしながらドアを叩いても応答はない。ドアは叩いてもほとんど揺れないほど立てつけがしっかりしているが、叩けば音は聞こえるだろう。


「広瀬さん、でしたっけ。これ本当に死んでたりするんじゃないですかねえ」


 久炉も衣琉も何も言わない。三人の考えは一致しているらしい。声をかけても何の反応がない。

 ここまで騒がれて無視を決め込むというのも難しい。数日間職員たちが声をかけたというが、一度くらい反応を見せていてももいいはずだ。


 やはり――何かあったのか。


「よし、ドア、壊そう」


「ですね」


 中を見ないことには何もわからない。彼女が生きているのかも。衣琉にドアを壊すことを管理人室に連絡するように頼み、扉から距離を取った。


 魔法を使うべく、意識を集中する。腕輪の白磁色の鉱石に赤い光が灯り、右腕に炎を帯びた魔力が纏われる。それを右手に纏わせたままドアを思い切り殴った。



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