ロリコンじゃなけりゃただのバカップル
≪もしもロリコン王エリオルの妃が彼と同年齢だったら≫
「ルージア!!ルージア!!どこだ!?どこいったぁあああ」
「王よ、落ち着いてください!王妃様は姉君のララージニア様と中庭探索しております」
「何ぃ中庭かっっ!!ルージアァァァ」
「王よ!!」
いとしい王妃を探して王は中庭へ魔法を使うのも忘れて走って行った。
そんな王を一生懸命追いかける家臣は汗をかきながら心の中で罵倒する。
「ルージア!」
「あら、どうなさいました?」
ララージニアがいるのも目に入らず、走りこんだ勢いで抱きしめる。
「朝起きたらお前の姿が見えなかった」
「いやだわ、もう昼ですわ」
「王様なんだから、早起きぐらいしなさいよ」
「まぁまぁ、お姉さま。いつもお昼に起きるというわけではないのですよ。えぇ、たまに」
ニコニコしながら愛らしい笑みを湛えながら王妃は王の顔を優しくなでる。
王はそんな王妃を真面目な顔で見つめ、そっと手を握った。
「全くお前は鳥だな」
「あら」
「俺の傍で愛らしく鳴いていると思えば、こうして飛んで行ってしまう」
「ふふっ」
ルージアは王に抱きついた。
「でも、その鳥は確かに鳥かごの中にいますわ。あなたの、愛という名の鳥かごの中に」
「ルージア……」
そっと唇を重ね、二人だけの世界に浸る妹夫婦をみながらララージニアは肩をすくめた。
完全に忘れられているわ。
「お、王様」
疲れ切った顔の家臣が到着する。
「見つけましたぞ。もうよろしいでしょう。今日の執務へ戻ってくださいまし」
「嫌だ。ルージアとまだ一緒にいるんだい」
「お、王様!?国の代表である王が何を駄々っ子のようなことを!」
「王妃からも、何か言ってくださいませ」
「はい?」
王妃は首を傾げたあと、老輩の家臣たちの顔を見てにっこりと頷いた。
「あなた。お仕事に行ってらっしゃいませ」
「なんだと!?」
「私とはいつでも会えますでしょう?お仕事をおろそかにしてはいけません。今は王なのですからきっちり責任を果たして下さいませ」
「う、ううぐ」
「ルーのことは心配しないで。私と遊ぶから」
ララージニアがルージアの肩を抱いた。
王はまだ納得のいかない顔をしている。
それを察したルージアは王様を振り返らせ、背を軽く押した。
「さぁ、いってらっしゃいませ。終わったならご一緒にお菓子をたべましょう?」
「今がよいのだ」
「あらあら、もう……貴方もたいがい鳥ですわね。私のことを『愛している』と囁いてくださいますのに、私以外の女性ともお戯れになりますもの」
ルージアはにっこりした顔のまま冷めた低いトーンで小声の早口でまくしたてた。
「仕事行ってくるよルージア」
「はい。いってらっしゃいませ」
去って行った王の背を見ながらララージニアは妹を見た。
「なかなか尻に敷いてるじゃない?」
「あら、ふふっ。お姉さまいやだわ尻に敷いてるだなんて」
真顔になった。
「手綱を握ってると言っていただきたいですわ」
「……そう?」
「さぁ、仕事を頑張ったご褒美にお菓子を作って差し上げましょう。お姉さまも義兄様にいかが?」
「いいわよ。シェフに見つかったら煩そうだから、うちくる?」
「はい。……あ、いえ。やはり城でつくりましょう」
「なんで?」
頬を染めながらルージアはララージニアの耳にそっと囁いた。
「……あっそう。まぁいいわ。じゃあちゃっちゃっとやっちゃいましょ」
「はい」
『鳥は、できるだけあの愛おしい人のそばで飛びまわっていたいものですから』