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影姫の暴走奇譚  作者: 綴何
番外編
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64/71

ステラさんは友達


 マリアンジェラの唯一といってもいい友のステラさんは、昔っからのおせっかいで世話焼きでした。

 初めての出会いはそう、夕暮れの日にマリアンジェラが畔道を足滑らせたようで田へ転がり落ちてきたところからです。

 ステラさんがマリアンジェラさんに抱いた第一印象は

 (お化けかと思った!)

 大泣きするかとおもえば全く泣かないので、それが逆にステラには怖かったのです。

 なので木の棒でマリアンジェラをつつきました。

 「おばけ?」

 「……違うもん」

 「じゃ、ゾンビ?」

 「生きてるもん」

 泥を払いながら切なげに立ち上がった少女は意外と整った顔をしていました。

 肉体労働を知らないきれいな手に、日の光に長時間浴びていない証拠の白い病的な白雪のようなきめ細やかな肌。

 「そうか」

 「うん」

 「じゃあバイバイ」

 手を振るステラ。

 その場に留まったままのゾンビもどき。

 「何さ」

 「ステラー?もう帰るよー」

 お姉さんのケリーと、お兄さんのボニーとポーが変える準備をしています。ステラも帰ろうと背を向けると。

 ぼす

 「うお」

 べしゅあ!

 田に二人ドミノ倒しのように倒れこむ。

 「……なにしてんの?遊んでないで帰るわよ?」

 のんびりケリーは近づいてきた。

 「なぁにしやがんでぇぇぇいい!!!」

 ステラはおんぶっこを跳ね飛ばし、江戸っ子のような声を張り上げる。怒りの雄たけびともいう。

 「うぅぅうぅぅ」

 「な」

 なんでそこで泣く!

 「うううう」

 いや、泣いてない。

 「我慢するぐらいなら泣けよ」

 頬をつねるが泣く様子はなく、むしろむっとした顔で見つめ返された。生意気なゾンビもどきだ。

 「……ごめんなさい」

 急にしゅんっとなり、謝りだした。頭をぺこりと下げるとそのまま来てきた道を戻って行く。

 「……なんだったんだ?」

 「あぁ、ありゃジェンド公の娘様だね」

 「へぇやっぱり金持ちか」

 その日はそのまま何事もなく帰った。

 ただステラが驚いたのは次の日だった。父親に連れられ懇意にしてもらっている屋敷に野菜を届けに行った時のことだった。

 「あのっ……お母様!私ね、今日お兄様と一緒にお花の輪きれいにできっ」

 「まぁミケーレ!泥だらけじゃない!!手を洗ってお風呂に入りましょ?さぁ」

 男の子の手だけをひいて母親は家の中に入って行った。

 あれ?あいつあそこの家の娘じゃなかったの??

 「おや、今日は娘といっしょなのかね」

 「あぁ、ジェンド公」

 父はジェンド公爵と話を始める。

 侍女や従者などがお嬢様の横を通るが誰も声をかけない 

 父親がみかねたのかジェンド公に話す

 「あの可愛い御嬢さんは娘さんですか?」

 「え?あ、あぁ」

 ジェンドは娘を見るとどうでもよさそうな表情をした。

 「娘だ。何故あんな汚いなりをしているんだ?おい、そこの。シーヴァ―を呼べ、あのこを風呂に入れさせろ」

 「……」

 父親は何も言えないという顔をしていたが、そこにいるだれもが何も言わずただ従っていた。

 おかしいだろ。

 家に帰ってもなんだか、もやもやするステラは父親に尋ねました。

 「なぁ父さん。金持ちってあんなもんなのか?」

 「いいやジェンド公はちゃんと話の分かるいい人なんだが、どうしたんだろうな」

 「なんじゃ?どうかしたのか」

 日の当たる窓際に座る祖父に経緯を離すと、貫録のある白いひげをなでながら何度も頷いた。

 「あぁ、心を闇に潜り込まれた子か」

 「なにそれ」

 「わしらは土地神様に守られて闇を退ける力を授かっておるが、その娘にはない。ゆえに不幸が続くのじゃろう」

 「……」

 黙り込んだステラにケリーはちょっかいかける。

 「わかってないでしょ」

 「うるさいな!ようは運がないってことでしょ」

 「まあ、そうじゃの」

 ステラはゾンビもどきの顔を思い出す。泣きそうで泣かない顔

 もどかしい。

 「……よっし!!」


 次の日。ステラはお屋敷に忍び込んでいた。

 (えーっと、あいつはどこに……あ、いた!)

 日当たりの悪い部屋に入って行くのを見た。

 (まさか、あいつの部屋あそことか?まっさかねぇー)

 周りを確認しながら部屋に入った。

 「ぴあ!」

 ちょうどぶつかった。その衝撃でしおれた花が散らばった。

 「ごめん……って、マジでここお前の部屋?」

 「うん、えっと。いらっしゃい?」

 「あ、うん」

 沈黙。

 「あ、のさ」

 沈黙を破るのはステラ。力強く彼女の手を握りはっきりといった。


 「私が守ってやるから!友達になろ!!」


 少女の頬が赤くなり、小さく真ん丸な目が大きく見開かれた。

 そんなに驚くことか?

 「うん。ありがとう」

 そういって笑った笑顔は、絵本の中のお姫様そっくりだった。

 無表情なお姫様、可哀想に影のように扱われ誰にも構われず声を発することすら許されないが、彼女は一人ではありませんでした。

 「私ステラってんだ」

 「マリアンジェラ……よろしくステラ」

 そうしてずっと、彼女とステラは友だちなのでした。

 

次はウィルシア君の過去物語を書きます★

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