閑話1
強靱な肉体を誇る巨人族のクレト魔将軍は、魔法開発部に縮小魔法薬をもらっては小さくなり、ウィルシア・シーアと、そのほか仲間たちと酒を飲みあかし、時にはすごいいたずらをして遊んでいた。
そんな彼について回る雑兵のショーン・チャイはけなげな忠犬のようで兵士の間ではひそかな人気を集めているが、そんなこと微塵も知らないのであった。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
マリアンジェラとステラはショーンをただ黙って見つめる。
「あう、なんでしょう」
恥ずかしそうにもじもじとフォークを置いた。
「いやぁ、よくもまぁ・・ちっこい体でパクパク食うなって」
「食べても太らないタイプ?」
うらやましい、とマリアンジェラはつぶやく。
「お前は太れ。もっと食え。いやぁ、ウェザーミステリってさ自給率なさそうなのに、なっぜか食い物には困らないよな」
「自分も将軍に質問したことがあります」
そのときクレトは大笑いで
『他国から奪ってるにきまってるだろう!』
「・・・・って冗談か本気かわからないことを言ってました」
「どっちだろうね」
わかりかねます。
「マリー」
旦那のシアが魔法で現れた。
「デート行こう」
「え、いや私きゃ」
マリアンジェラの返事も聞かず風のように去って行った。
定食屋で女三人でどんぶり食べてる姿をむなしく思っていたステラにとって、さきほどの行為はイラッとくるものがある。
えぇ、独り身のヒガミさ!
「そういやさ、ショーン・・ってマリのぶんもくってんのかよ!」
さっき自分どんぶり食ってたのに!?
「ふぁ!ふぃまへん!つい」
お茶を飲んで口を空にさせる。
「ショーンってさ、なんか似てるよな」
「は、誰にでしょう?」
「マリアンジェラ」
境遇を考えればそうかもしれない。
「不幸な身の上、で、くよくよしてんのかと思ったら突拍子もないことはじめたり」
ショーンはしょっぼーんとしている。
「後、なーんかめんどくせーやつ好きになってるとことか」
「・・めんどくせー・・や!べべべべ別にクレト将軍の子とすすすす、好きとか!!いや!好きですけど、そんな恋慕的なものではなく、親愛的な愛情と申しますかあうあう」
「・・・・クレトのおっさんなんて一言も言ってないんだけど」
わかりやすいな。
「好き、なんだろ?」
「で、ですから」
「巨人族は問題ないんだろ?」
インファから聞いたような悲惨なことにはならないだろう。
「も、もんだいとわ?」
「子供」
ぼっと顔が真っ赤になった。
・・うぶ。
「よっけーなお世話かもしれないけどさぁ、普通のやつ好きになったほうが無難だよ」
マリみたいに、切ない思いをさせたくない。似てるから尚。
「な、なな」
「!」
「なりません!私はほかの人じゃいやなんです!クレト将軍のそばにいたいんです」
「わ、わかったから泣くなよ!」
「自分みたいな雑魚そばにいるだけで足手まといだし、女の魅力もないし、こどもだし、釣り合わないってわかってます!でも」
涙を流すショーンにステラは苦笑いするしかなかった。
「ほかの人を好きになるなんてできません」
「そーか、そーか、で?誰が好きだって?」
「ですから、クレト将軍が・・・・え」
ショーンは後ろを見た。
クレト将軍と、先ほど消えたウィルシア宰相とその奥方マリアンジェラだった。
「え」
真っ赤になる。
これ以上にないぐらい真っ赤。
「いやぁ、熱いねぇえ」
「ななななな」
「いやね、デートって外でたら捕まっちゃってさ。このおっさんに」
「ショーン。安心しろ」
クレトは大きな腕でショーンを抱き上げた。
「お前は誰にもやらんよ!!」
大笑い。
ショーンはクレトに抱きつき、元気な声で「はい!」っと答えた。
(いやいや、その発言告白をうけとったっつーより、お父さんだろう!!)
っとつっこみたかったステラだったが、なんかそれはそれでいいような、というかめんどくさくなったので流すことにした。
それよりも今は
「ステラ」
マリアンジェラはステラの肩をつかんだ。
「めんどくせーやつ、好きになって悪かったですね」
敬語怖い。
「そのうち、ステラもめんどくせーやつ好きになるよ」
「最初っから聞いてたのか。ごめんごめん」
ステラは彼女の頭を撫でながら笑った。
「あとさ、私すでにめんどくせーやつ好きになってるから」
「え?」
ぷに
「お前」
ステラはそういってマリアンジェラのほほをつまんだ。
「・・ステラ」
「うわーすっごい疎外かーん」
幸せそうな空間に嫉妬するかわいそうな男シーアだった。
「自分一生将軍についていきます!」
「おう!ついてこい!」