思い出を君に染めて
「光機……アレ、誰なの?」
「ああ……この街を代表するゴミクズだ」
それは、かつて僕が親友と呼んでいた、“横山和樹”だった。
は、はは……なんだって街に着いた途端、あんな奴に出遭わなきゃいけないんだよ……。
僕は一歩後ずさり、思わず二年前のあの光景がフラッシュバックする。
あの……ひよりと和樹の……っ!?
――ギュ。
「は、初穂……っ!?」
「はむ……ん……ちゅ……」
初穂はいきなり僕に抱きつき、そしてキスをした。
それこそ、まるで和樹にでも見せつけるかのように。
「ちゅ、ちゅく……ぷあ……」
「は、初穂……」
「あは……優太には、私がいるもん。私は、優太の中にある思い出を全部私でいっぱいにするためにこの街に来たんだ。だから優太……覚悟してね?」
そう言って、ニコリ、と微笑む初穂。
君は……四年前のことを全部知って……。
「ハハ! あのクズ、優太と初穂ちゃんがあんまり見せつけるモンだから、顔をしかめて逃げちまいやがった!」
「あはは! ウケる!」
「フフ……でも初穂先輩、やり過ぎでは?」
腹を抱えて笑う二人の先輩と、ジト目で僕達を睨む武者小路さん。
そして……僕の頬をそっと撫でる、初穂……。
気づけば、僕の頭の中にはひよりと和樹の姿はなくて、目の前の初穂の笑顔だけがあった。
◇
「んじゃ、明日は昼に駅前だからな!」
「了解です」
佐々木先輩がそう言うと、三人はそのまま去っていった。
ちなみに、武者小路さんは佐々木先輩の家にお世話になるらしい。
い、一応、彼女も僕達に気を遣ってくれたってことでいいのかな……。
「こ、これから優太の家に、その……い、行くんだよね……」
緊張しているのか、初穂は胸に手を当てながら深呼吸する。
そんな彼女が、僕は愛おしくて仕方がない。
「はは、大丈夫だよ。それよりも、父さんと母さんは君に逢いたくてうずうずしてると思うよ」
「あう……逆にプレッシャーが……」
初穂はやっぱり緊張が解けないみたいだ。
だから。
――ギュ。
「大丈夫、僕もいるんだから」
「優太……う、うん!」
手を握りしめると、ようやく初穂がはにかんでくれた。
うん……初穂はやっぱり笑顔が一番だよ。
そして、僕達は手を繋いだまま家へ向かって歩く。
「あ、公園」
すると、ちょうど駅と家を結ぶ通り道にある公園に差し掛かった。
ここは……僕が、ひよりが浮気していたことを告げた場所だったよね……。
は、はは……おかしいな……もう僕には初穂がいるから、そんなことはどうでもいいはずなのに……って。
「初穂……」
「…………………………」
初穂は、今にも泣き出しそうな表情で僕を見ていた。
本当に……何やってるんだよ、僕は……!
「はは、ここは小さい頃、よく遊んだ公園なんだ」
「……うん」
「ちょっとだけ、寄り道しない?」
そう言って初穂を公園に引き入れると。
「このブランコも懐かしいよ」
僕はブランコに座り、目一杯漕いだ。
「ねえ……初穂」
「うん……」
「君は、僕の思い出を君で埋め尽くしてくれるって言ってくれたよね? だから……一緒にブランコで遊ぼう! 今日から僕のこの公園の思い出は、全部初穂との思い出だよ!」
「! う、うん!」
初穂も僕の隣にあるブランコに座り、同じように目一杯漕いだ。
はは……こうやって、あの苦しんだ思い出も全部初穂で塗り替えるんだ。
もうこの公園は、僕と初穂の思い出の場所だ。
◇
「ハア、ハア……はは、一杯遊んだね!」
「うん!」
自販機で買った二本の冷たいレモンティーのペットボトルを一つ手渡し、僕はもう一つのボトルのキャップを開ける。
その時。
――ピリリリリ。
「ん? 電話? ……って、あ……」
スマホ画面を見ると、発信者は家だった。
た、多分、僕達の到着が遅いから、心配して電話を掛けてきたんだな……。
「も、もしもし……」
『あ、優太? あとどれくらいで着きそう?』
「あ、あはは……あと十分もしないうちに着くと思うよ」
『ホッ……だ、だったらよかったわ。お父さんと一緒に待ってるから』
「う、うん……」
通話終了のボタンをタップし、スマホをポケットにしまう。
「あ……ひょっとして、お母様……?」
「はは……うん。父さんと二人で待ってるからって」
「あう!? は、早く行かなきゃ!」
初穂は慌ててベンチから立ち上がる。
「大丈夫、ここから家までは五分もあれば着くから。母さんには十分って言ったから、五分の余裕はある」
「も、もう……知らないよー……?」
口を尖らせながらも、また僕の隣に座ってレモンティーを口に含む初穂。
うん……やっぱり僕には初穂、だなあ……。
だって、君が隣にいるだけで、僕はこんなにも幸せなんだから。
「うん! さあ行こ!」
「え!? まだ早くない!?」
「あは! 私はもう全部飲んだもん!」
見ると、確かに初穂が持つペットボトルは空だった。
「はは……しょうがない。それじゃ行こうか」
「うん!」
そうして、公園を出て懐かしい道を歩くと。
「優太……お帰りなさい!」
「おかえり、優太」
父さんと母さんが、家の前で出迎えてくれた。
だから。
「父さん……母さん……ただいま」
お読みいただき、ありがとうございました!
少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、
『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!
評価ボタンは、モチベーションに繋がりますので、何卒応援よろしくお願いします!




