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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第一章 黒髪黒瞳の憂鬱
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第十九話 ニート生活 前編

目を開き天井を見る。天井はいつもの豪華な飾り付けはされていず、石の壁である。


ライはゆっくりと体を起こしながら、昨日の夜の事を思い出す。



「あぁ…。そういや捕まったんだっけ?・・ッたく、なんで異世界まで来て監禁されなきゃならないんだよ。これじゃあ向こうと変わんねーな。」


「起きたと思ったら騒がしいのねライ。相変わらずの嫌われようね。態々来てあげたら爆睡なんてありえないわ。」


「ん?あ?・・・すみません。すっかり忘れてました。携帯、部屋に忘れたんで目覚ましが無いんですよ〜。テヘ♡」


「気持ち悪い。やめて。それに何を言ってるの?いつも通りの時間に起きてるじゃない?」


彼女の言葉がライの心臓に刺さる。ライは吐血しながらもう一度横になってしまう。



「その言葉は他人を傷つけます。特に人と関わって来なかった人間には一撃必殺です。もう俺のHPは0です。」


「なんで文章みたいな喋り方になってるのよ…。わかったわ。気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。」


「アグッッ!おい…止めろって言っただろ……。なんで連続で言うんだよ!!」


「?だってされて欲しそうだったじゃない?」


「俺はそんなドMキャラじゃねぇよ!ったく…朝から全く良いことないぜ…。」


「態々こんな清楚で輝かしい美少女が起こしに来てくれたのに、その態度はどうなの?」


「前半盛り過ぎだよ!?清楚な人は人を虐めたりしませんから!!」


「ふーん…。」


「?なんだよ…。」


「何でもないわ。早く朝食を食べなさい、持って帰るわよ?」


「ありがとよ。んで?シャロは?一緒じゃないのか?」


「彼女は今はここの人達の手伝いをしているわ。確か午後には来れると言っていたわよ。」


「悪いな。」


「あんたが謝ることじゃないわよ。これはこの国の決定事項、簡単には曲がらないわ。だから、あと四日の牢屋生活楽しんでね。」


「四日もあるのかよ。その間に魂抜けそうだな。何しようかな…。」


「脱獄はダメよ?その時は私が相手してあげるわ。」


「しねぇよ!!怖くて出来ないわ!!」


「チッ」


「なんで舌打ちされなきゃならないんだよ!?」


「はいはい。わかったわかった。また後で来るわ。今から少し用事があるから。じゃあね。」


「おう!用事頑張れよ!」



彼女は手を振りながら出て行った。




さて、これからどうしようか。部屋は広くも狭くもない。筋トレぐらいならできるが、あまりしない方が利口だろう。何か企んでるなんて言われたら元も子もない。ここはやっぱり・・・



「ニート生活始めますか!」



する事はたったの二つ!

一つ目はご飯を食べる事。

二つ目はベッドに潜り寝ること。


これだけで一週間は生きれる。まぁゲームやパソコンがあれば一、二ヶ月は余裕だろうけど…。無いものをねだっても何も出て来ないのはわかっているので、大人しく寝るとする。



どれくらい経っただろうか。

また名前を呼ばれているような気がした。

目を開けて柵のところを見ると、今度はカルロスと三下の騎士、いい服を着た騎士様がいた。



「ん?あぁおはよう。」


「何を言ってるんだいライ。もうお昼を回ったよ。昼ご飯はここに置いとくから食べてくれ。」


「おぉ。サンキューな!ありがとよ。」


「さて、二人は悪いが席を外してもらえるかな?

大丈夫、彼は僕に手は出さない。気にしないでくれ。」


「・・・・わかりました。では、外で待っています。終わりましたら声をお掛け下さい。」


「わかったよイワン。」



彼らは一礼し、扉から外に出る。あとは俺とカルロスの二人だけ。こいつが言っていたように俺は手を出さない。世間話をするだけだ。



「んじゃ、本題から行かしてもらうぜ?お前、イリスの事好きだろ?」



ブフォォっと言う音とともにカルロスが飛び退く。ホントこういう事してくれるから面白い。コッチにはマンガが無い筈なのに全く同じ事をしてくれる。



「は、はぁ?何でそうなるんだよ?!お、僕はそんな事思ってないよ!」



カルロスは急に大きな声を出して驚く。

こいつ役者か?と一瞬思ってしまった。



「お前ホント面白いな!それを素でやってくれるなんて可笑しすぎるよ!!」


「な、何を言うんだライ!もう一度言う。僕はそんな事思ってない!」


「見栄を張るなって、この王宮に住んでいる殆どの人間が気づいてるぜ?気づいてないのはイリス本人と貴族の奴ら何名かだな。」


「な、そんな、何故わかるんだい!?」


「決まってんだろ。お前の言動の所為だよ。初めて会った時からモロ丸わかりだ。」


「ウグッ、何故彼女は気付かないのだ?」


「段々キャラ変わってんぞお前…。まぁ、それは良いとして多分イリス自身が誰かに好かれるなんて思ってないからだろうな。てか、あいつ恋愛に興味とかあるのか?」


「無かったらもう終わりじゃないか…。頼むよライ!君しかいないんだ!彼女に近づける男達の中で君が一番近くまで行ける。だから、僕をその近くまで連れて行ってほしい!」


「お前…、昨日からそればっかしだな。頭下げ過ぎだろ…。普通に頼んだってOKだすよ。」


「それは了解と受け取っていいんだね?ありがとう!!!!」


「まだ何にも言ってねぇよ…。・・・あぁ、はいはいわかった。俺が何とかしてやるよ。」


「ホント君がいてくれて助かったよ。」


「はぁ、まさか騙せてると思ってたなんて驚きだな…。」


「一応彼女にはバレてないから大丈夫ってことで」


「結果論だけどね!ま、俺が一肌脱いでやらなくもないかな。」


「宜しくお願いします。」


「任せとけって!」


「それじゃあ僕は行くよ。またねライ。」


「おう!」



カルロスが扉から出て行くのを見送ると、ライは目の前に置いてある食器を取る。多分、イリスかシャロが作ってくれたのであろう。見覚えのある料理が並んでいる。



「イリスが言ってた用事ってこれの事なのか?なら、感想言わなきゃな。」





すると、ガチャっと音が鳴りながら扉が開く。

俺は敵襲かと身を硬ばらせるが違うみたいだ。入ってきたのはさっきカルロス達と一緒にいた、いい服を着た騎士だ。殺気は見られない。なら、俺に何の用だ?考えを巡らすがその答えに当てはまりそうなものは浮かんで来ない。


ライが思考を巡らしていると、向こうから話しかけてきた。



「君がイリス様の所の奴隷かい?まぁ元々奴隷ですらなかったみたいだが。」


「あ?まぁ一応書類上ではそうなってるな。ま、優勝した景品で違う身分になるのは決まっているから、今の言葉には反応しないでおこう。次言ったら殴る。」


「ふふ。聞いていた通り君は面白い人だ。シリウスが言っていただけの事はあるよ。それに、大会で怪物を斬ったって話だね。国中で大騒ぎだよ。」


「シリウス…………。ああ!思い出した!あの鬱陶しい貴族の奴と一緒にいた騎士だろ?殺意剥き出しでコッチを見てくるんだから気づかないわけがないだろ?それに恐竜を斬ったって話は尾ひれがつき過ぎだ。もう原型すら留めてない。」


「いやいや、普通の人間なら気づかないよ。きょうりゅうと言ったかな。君の地元ではそう言うのかい?僕達にとっては初めて見た生物だったよ。」



恐竜の話は巷では酷い事になっている。俺が馬鹿でかいドラゴンを一刀両断しただとか、首を斬りその血を浴びて笑っていただとか、もう唯の殺人鬼にしかなっていない。


こっちでは考古学があまり進んでいないらしく、未だに恐竜の事を知らないらしい。こんな偉そうな騎士様だって知らないんだから。


「ま、そんな事はどうでもいい。俺から質問させて貰うぞ。まず一つ、お前は一体誰だ?そして二つ目、何の用でここに来た?先ずはこの質問に答えて貰おうか。」


「自己紹介が遅れた。僕の名前はイワン・アテア・ヘリオス。この国の王国騎士団の一番隊隊長をしている。そして、ここに来た用は君が騎士に入るか、入らないかを聞きに来た。」


「そうか、俺は入るぞ?じゃないとこのままイリス達に付いて行けないからな。イリスの所には誰も騎士がいないから、俺が飛び入り参加しても問題はないだろ?」


「そうなのか!君が入ってくれるのなら百人力だよ!それに多分、君の望みも叶うだろう。君の実力はこの国の殆どの人間が認めている。」


「なら良いんだ。これからよろしくなイワン。」


「あぁ!よろしく頼むよ。」


そう言って彼はルンルンと喜びながら部屋を出て行った。




この後にも来客は来て、イリス、シャロ、謎にコンラートまで来た。一応、国が認める鍛冶屋らしいからこういう事もお手の物らしい。



ダラダラなニート生活もここまで沢山の人が来てくれれば大いに楽しめる。







コッチでは楽しんで行けるんだな・・・。

あの時の俺もこんな風に楽しんでいたのかな…。

もう思い出したくもない記憶が蘇ろうと必死に蓋を開けようとしてくる。





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