第十一話 勝手な奴は嫌われる
眠っているとき時間はどんな速度で進んでいるんだろう。多分生きている中で一回は思った事があるだろう。眠っているとき、時間は、周りはいつも通りに進むのだろうか。それとも少し速く進むのか、もしかすると遅くなるのかもしれない。答えは絶対に出ない。何故なら意識が無いから。寝ながら意識がある人は存在しない。例え人間とは言えない人間だとしても。だから、眠ってから起きるまではほんの一瞬。けれど、「夢」の中ならばその時間は一瞬ではない。「夢」は色々なモノを見せてくれる。例えそれがどんなに消したくても消えない「悪夢」だとしても・・・
「止めろ!!!・・・・・夢か…。」
ライは夢から覚める。それも悪夢から。少し安堵を覚えるが、夢がフラッシュバックする。夢というのは嫌いだ。自分で選択が出来ないから良いものから、悪いものまでオールランダムだ。そして、良い夢なら途中で終わってしまうという虚しさが残るし、悪い夢なら永遠に近い呪縛を喰らい
精神を削られる。だから嫌いだ。
「はぁ…。出来る事なら見たくはなかったな。いったい誰得なんだよ。」
「朝からため息なんて本当に残念な奴ね。」
「あ?なんだいたのかイリス。仕方ないだろ?良くない夢を見たんだから。」
「はいはい。早くしなさい、そろそろ朝食の時間よ。」
「うい〜」
イリスが出て行くのを見送り、寝巻きから着替え始める。普通の黒色の綿の服にズボン、そしてその上から薄い上着を着る。異世界に来た時の服装はここでは少し暑い。四季があるのかはわからないが、もう少し寒くなってから着るとする。着替えも終わり、換気のため窓を少し開けて食堂?に行く。場所は昨日行ったから大体わかる。フラフラ歩いて行くと、目的地に到着する。イリスもシャロも居る。挨拶だけはしておく。
「おはよう。」
「おはようございますライ様。」
「おはよう。まだ眠たそうね。」
「あぁ眠い。」
そんな会話をし、朝食をとる。やはり王宮の食事となると結構美味い。星は確実に取れる。シャロ達が作る料理も美味しいが、ここは別格だ。そんな感じで朝を楽しんでいると、明るく凛とした声が聞こえた。
「おはようイリス!ライ!そしてシャロさん!」
「お前は本当に凄いよ。会ってまだ2日目の奴にそんな挨拶ができるなんて。俺んとこでは、まず無理だな。」
「んー。なんて言うかもう慣れたって感じかな。」
「そうですねー。もうここにも何回も来てるし、その度に王子は挨拶に来ますもんね。」
「まぁな!別に来たって文句はないだろ?」
「それはそうですけど。」
あぁこいつアレだ。鬱陶しいけど憎めない奴だ。そんな奴が王子となると、国は安定だな。なんやかんやで人望が厚く、持ち前の明るさとかがあるからなお良し。クラスでよく委員長とかやるタイプだな。
王子が加わり朝食が少し騒がしくなる。そうやって楽しんでいると新たなお客がやって来る。
「あら?カルロス王子ではありませんか?おはようございます。」
「お!マリーか!予定より早い到着だな。朝食はもう食べたのか?」
「はい。はて?何故このような場に黒い物が混じってるのです?」
はい。来ました。これってさあと7回も繰り返さないといけないの?多分4回目ぐらいから我慢できなくて怪我人でるよ?少し威圧しとこっかな。
「あ?黒いのってなんだよ?俺はGかなんかか?」
「その「じー」と言うのはわからんが、貴様は妾に喧嘩を売ってるのか?」
「さぁな。言い値で買ってくれることを期待するが?あぁ気にすんなそこのお連れの方にも売ってやるよ。」
「ほう。シリウスにも気付くとはな。少し見くびっておったわ。其方明日の大会に出るのであろう?なら、良い血を見せて貰おうよ。」
「出場はするが、俺の体から血が出るかはわからねぇぞ?」
「黒いのが言いよるわ。妾を楽しませてみよ。」
おー。やっぱ貴族はいいね、喧嘩を吹っかけるとすぐ反応する。普通なら少し躊躇う所を二つ返事で返して来やがった。貴族ってヤンキーみたいな部類に入るのかな?それか戦闘民族?血を見たり下の人間が苦しむのを見て楽しむなんていい趣味してるよ。俺?俺には無いよー、街でヤクザを狩りまくった事ならあるけど。
などと内心で馬鹿にしてたが、シリウスとか言う奴はそこそこ強いと思う。単体ではプリヘニト以上だな。多分騎士様だろう。殺気の隠し方やいつでも抜刀できる状態、そして威圧。なんて言うか歴戦の勇者みたいな感じだった。
ふと、後ろを振り返る。すると、イリスもシャロもそして、カルロスさえも目が点になっていた。
不思議なモノを見たような様子で佇んでいる。
「何だお前ら巫山戯てんのか?」
「い、いえ違いますライ様。あ、あのさっきの方はどなたかご存知ですか?」
「は?知らねぇよ。こっちが聞きたいくらいだ。」
「ら、ライあんた相手がどんな人かわからず喧嘩売ったの?」
「いや、どっちかって言ったらあいつが喧嘩売ったのを俺が買ってあげた感じだったんだけど。まぁ知らないのは確かだ。」
「ライって僕にあんな事を言っときながら、君も結構凄いよ?」
「そうか?喧嘩売るのは俺の地元じゃよくある事だぜ?夜とかは結構色んな所でやってるよ。」
「治安悪くない?その地元。」
「うーん。まぁそこまで激しいのはないかな。」
喧嘩とかは夜の街に出ればやってる。酒飲み過ぎたおっさんとか、若いにいちゃんとか年代はバラバラだ。まぁ警察が来れば何もかも忘れて逃げるけど。俺は全て正当防衛って言って全部すり抜けたせどな。終いには凶器とか使ってくる奴がいるけど、そいつはシメてから銃刀法違反で連れ出す。まぁそんなのが日常だった。
朝食を食べ終え、それぞれがバラバラの動きをすることになる。シャロは王宮の手伝い。イリスは大会の確認。ライは明日の大会に出るので、それの説明。みんな(俺)が自室に戻れたのはその日の夕方だった。
何故か説明してくれる人がビクビク震えて、話にならないし、話始めたかと思ったら無駄に長くて途中で寝そうになっちまった。簡単に言えば、明日の大会で怪我や死亡してしまっても国は何の請求も受け付けませんってやつだ。当たり前って言えば当たり前。そして、武器は支援されている武器を使え、対戦形式は決闘だからサシの勝負。魔法は何でもアリらしい。優勝者には願いを3つ言うことができる。俺はこれを聞いてアレを想像してしまったが少し違うらしい。願いは国が叶えられるものは叶えると言ったほぼ無理ゲーなヤツである。まぁこの国を滅ぼせとか言われても無理だからな。ルールを簡単に説明すればこんな感じ。
「そういやまだ会ったことないんだよな。他の奴隷たち。どんな奴がいるんだろ?」
今考えても無駄なので明日の楽しみに置いておく。今からは少し明日の準備をし、風呂に入って寝る。いつも通りだ。
「さて、それじゃあ軽く体動かしておくか!」
暗く何も見えない場所。正常に働いている視覚以外の所で周りを探る。わかるのは手と足に枷がはめられていること。そしてここは多分牢屋だと言うこと。
「まぁ明日はシャバに出れるんだから今日は我慢だな。ククク…、ハハハ!!!」
高らかな笑いが地下全体に響く。
はい!今回はいきなり嫌われ者のマリーです。
名前 マリー・ブルース
性別 女
髪、瞳の色 赤、黄色
家柄 第1貴族
身長 165
その他 ライと話した後、凄く機嫌が悪くなり少し暴れたらしい。




