1 みち
惑星アールの衛星アルツで滞り無く過ごし、ひと通りの準備を終えるとシュガーソルト号は惑星メアリを目指す。
初空域となるので、クエストも受けた。
【クエスト】
アール→メアリ
アール体験装置個室
メアリ国営スポーツ強化センター
何でも、アールの重力だけでなく空気も再現した個室型のトレーニングルームらしい。
惑星メアリは250光年の地にようやく見つけた。地球の類似惑星歴史書にはそう記述がある。
宇宙暦の最初期、惑星開発をしながら進み、星間航路を確立し惑星開発をしながら進んでいた数世代後にメアリに着いたと思われ、地球はもはやイメージに過ぎなかったのだろう。
「オレ達には地球と同じ色に見えるけどシシン」
「少し緑かな?」
色で言うなら、コバルトブルーとセルリアンブルーの違い。
「雰囲気は似ているが、生物はいなかったんだけ?」
「水の星だけど生命の条件厳しいと諦めたのって、ここの事か。分かれ道に、人口天体トランジット作って先に進むと、空域に留まると別れたって確かに習った」
惑星メアリはテラ・フォーミング化され水産資源の惑星として発展したのだが、この辺は惑星毎の個別史になるので彼らは知らないのだ。
惑星メアリの衛星は、パール、コーラル、シェル。
衛星シェルがクエスト優先港。少しファンシーなのがメアリのスタンダードである。
「可愛すぎる」
パステル調の角の取れた優しい空間がどこまでも続き、ラブリーな可愛さが衛星全体を包みこんでいる。
しかし匂いは生臭さいというギャップ。
「海の匂いだと思えば」
衛星にも観賞用水槽だけでなく、惑星に降りなくても生け簀があり釣りを楽しめちゃうらしいが、管理された空調に慣れてる鼻には特有の生臭さがを感じる。
地球で嗅いだ海の匂いに近かった。
「なにこれ〜!なんか吐いた〜」
「振りまわすな!」
「イカですねー」
何やら盛り上がってる方向に目を向ければ、薄めの褐色肌にグリーンの髪のひょろりとした青年と、赤みが強いピンクの肌にくせ毛のピンク髪の青年2人が盛りあがっていた。
「あー!!」
ぽいっと釣り竿を係員に渡し、グリーンの青年がこちらに走って来ると、フッと消えた。
いつの間にか背後の腰の高さの間仕切りの上に立ち、グイッとルイの肩を掴んで振り向かせ、顎を持ち上げ、顔を覗き込む。
「うっわ、すぐわかった〜!アンリの息子でしょ。ホントにキレーな顔」
「やめなさーいっ!失礼です!」
グイッと首根っこを掴んで、ピンクの連れが引き剥がす。
200cmありそうなピンクの男にぶら下げられる緑の青年。
「だってさ〜アンリが〜ウチのコは飛び抜けてキレーだからすぐわかるとかフツー言う?とか思ったら、マジで、ゼッタイそうデショ。コレだよホントの飛び抜けた美しさ」
ゲラゲラと笑いながらのグリーンは、指先をクルンと動かすと、浮遊するカメラアイがルイを写す。
やばい感じの絡まれ方に、顎を袖で拭きながら、すすっとシオの背後に取り付くルイだった。
「ドーモー。第2エリアの者どもよ。フロンティア所属の第3部隊隊長のアイでーす」
「フロンティア所属ライツ。第3隊の補佐だ」
床に降ろされるとアイはゆらゆらと立っている。
「フロンティアって、オトホシの調停に来たって言ってた?」
「ソーダよぉチビちゃん」
ポンとユージンの頭に手を乗せた瞬間彼は、とんと膝をついて床に座った。
「悪口かな?」
どうやったのか誰もわからなかったが、ユージンが身長差を物ともせずに、正座のような体勢にアイを床に押さえつけていた。
「アイ。いつも言ってるように、口は禍の元。お手数おかけしました」
「じゃあ返すね」
笑顔でユージンは軽々と姫抱っこに持ち上げ渡す。
「えぇ~?!」
「はいどうも」
「びっくりした!」
反省しているかはわからない調子のグリーンの青年アイ。
「で?フロンティアから来た調停の人?」
「いかにも。今回、調停をしに来た!キミとこの惑星、指定した位置にウチのコ達が固定してるから」
「こう見えて、彼は衛星の座標固定の天才なのでご安心下さい」
「それで、ここで何を」
「センパイたちが作った惑星がどうなってるのか、ついでにいちど見てみたかったんダヨ〜」
固定作業の合間に、第2エリアを見て回っているのだという。
不意に、アイは顔を上げた。
「ん〜。しょ~がないなぁ。行く」
フッとその姿は消えた。
驚く5人に、ライツはため息を付く。
「彼は生身の単体テレポーテーションが出来るんです。星間ワープの応用らしいんですが」
そんなバカなことが目の前で起きていた。
「フロンティアでも他の人間も真似は出来ませんからね、死にます普通に」
そう言って彼は通信機を取り出し何やらやり取りしている。
「オトホシの方に行っているようです。トランジットとジエルにも補佐が居るのでまたお会いすることもあるでしょう、隊長はあれが通常運転なので気にしないで下さい。では」
生け簀の方で「お客さんイカどうします〜」の声に戻っていった。
「アレは狂人の類いだよ」
こわいこわいとしばらくルイはシオから離れなかった。




