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歓迎の宴


俺達は大酒場に入った。


現在の時刻は夕方、大酒場には仕事終わりで酒を飲みに来た魔物やワイバーン兵士達でごった返している。大酒場の外見は雰囲気作りのためか木造のシックなBARだがその中は未来的な作りだ。謎の技術で空中に灯の玉が浮いているし、大酒場の基本はビュッフェスタイルだがその料理を出すメカやドリンクバーのメカなどがズラリと並んでいる。

アステムは物珍しそうに周りをキョロキョロしている。

「おい。そんなにキョロキョロするな。田舎者。」

「仕方ないだろ。俺が死んでた間に世界は変わっちゃったなと思ってさ。」

「いや、世界はそんなに変わって無いぞ。アステム。この帝国が特別に発展してるだけだ。」

「ふうん。ならばこの帝国はいったい何なのだ?」

アステムが悶々と悩んでいるのを他所に俺達は空いている席を探して大酒場内をうろつく。


「はわっ! ヴァイスクラウド様……」

「えっ!? ヴァイスクラウド様だって!?」

「嘘だろ!? 何でこんな場所に!?」

「誰か何かやらかしたのか!?」


近くに座っている魔物は俺達に気づくとザワザワと戦慄し始めた。俺はそんな魔物達に声をかける。

「今日は我が帝国を支える新たなメンバーの歓迎の宴を執り行う。そこのお前。この都市の魔物全員を大酒場に集めてくれ。」

「うえっ! 私!? ……はい! わかりました!」

いつぞやも声をかけた女のワイバーン兵士がちょうど目に入ったので言伝を頼む。


全員が揃うのを待っていると魔物達が俺達専用の豪華なテーブルと椅子セッティングし始めた。

「ヴァイスクラウド様、来たよ〜。」

その後すぐにスライム3人娘と他の魔物達も大酒場に集まった。そして全員にそれぞれ好みの飲み物を配ってくれた。スライム3人娘は薄い果実酒にジェシカはワイン、ヴェンデルとアステムはハイボールだ。


俺は皆が揃ったのを確認すると拡声器を使って演説もとい乾杯の挨拶を始めた。

「諸君。急な呼びかけだったが集まってくれてありがとう。今日は帝国に新たな構成員が増えた事もありその節目として歓迎の宴を執り行う。なに、そんな格式ばったものではない。我が帝国は節目の「儀式」や「行事」を好むがやはり皆が純粋に楽しみ「友好」を深めてくれる事を私は「願う」のだ。この帝国の構成員は仲間同士、隔たりなど無いのだから。」

俺は皆にグラスを掲げるよう目配せをする。

「……それでは帝国の繁栄と栄光を誓い乾杯!」

「「「「「乾杯!!!!」」」」


そうして宴が始まった。


俺、ジェシカ、ヴェンデル、アステム、スライム3人娘の7人はステージ前にセッティングされたテーブルに座り料理やお酒を楽しんだ。

「私はこのほっけ焼きが好きだね。白ワインに合う。」

「俺はこの鳥の唐揚げをもっと食べたいぞ!」

「私達はハラミの鉄板焼き〜。」

アステムも最初は渋っていたが俺達が美味しそうに飲み食いしているのを見て、また目の前の美味しそうな料理の香りに負けたようだ。その後流されるように飲んで食べた。ヴェンデルはそれを見て、

「お前は相変わらず流されやすいな。」

「くっ。美味いメシには勝てなかった……。俺にも鳥の唐揚げを追加でくれ!」

アステムもだんだんと開き直ってきたようだ。

魔物達やワイバーン兵士達も最初こそ俺に気を使って遠慮がちだったが今日だけは全ての酒飲み放題と食事食べ放題である事やヴェンデルの言い放った「ヴァイスクラウド殿は「宴を楽しめ」と言ったのだぞ? がっはっは」という言葉がきっかけとなり吹っ切れた。

「あの酒を飲んでもいいのか!? ロマネコンチや超大吟醸も!」

「まじかよ! ヒャッホーウ!」

皆、好きなだけ食べ好きなだけ飲み、そして騒いだ。

後日、鉱山都市の住民では新しい住民が来ると歓迎会をする習慣が出来た。



酒が回ると俺達もぶっちゃけた話をし始める。

「俺は聖王国グランセルのマテリアルズ子爵家の次男だった。家を出て冒険者になったんだ。」とアステム。

「マテリアルズ家は大分前から男爵家になってるよ。私は聖王国グランセルの子爵家の長女だった。」とジェシカ。


話題がそれぞれの出自の話になった時、ヴェンデルに「ヴァイス殿は異世界人であろう?」とズバッと言われた。ジェシカはあーやっぱりという顔をするしアステムは複雑な顔をしていた。

聖王国グランセルの伝わる伝承のかなり初期に「異世界人が現れて聖王国の窮地を救った」という記述があるそうだ。異世界人は魔法とも何とも言えない超常の力、ユニークスキルと呼ばれるものを持っていたそうだ。他にも数人の異世界人についての伝承があるのだが皆ユニークスキルを持っていると。

「このような建造物はヴァイス殿のユニークスキルによるものか。」

俺のはユニークスキルというものではないとは思うが俺だけがこの勢力運営用コンソールというものを操作できるのも事実か。俺は「超科学国家建造」のユニークスキル持ちだとでも言えばこの世界の人間には通じるかな。


またその異世界人達は全員が救世主として語られているので俺の事を悪の帝国の親玉と騒いでいたアステムには複雑な心情のようだ。間違ってはいないけどな。



その後、

「あんた魔法の才能があるね。これが見えるかい?」

「これは……数字の3。」

ブルーに魔法の才能がある事をジェシカが見抜いて今後2人は一緒に魔法研究をする事になったり。


イエローとアステムが大酒場のステージ上で模擬戦をしたらアステムが圧勝してイエローが「もう一回!」と駄々をこねて何回も戦ったり。

「ヴェンデルおじさん! アステムを私のイエロー陸士軍団に入れたいんだけど!」

「がっはっは。アステムの剣の腕はかなり高いからな。だがアステムはやらん。こいつは龍空士軍団の副軍団長だから。」

「アステムは空を飛べないからウチの陸士軍団のが相応しいよ!」

「大丈夫だ。アステムは特攻落下専門だから。」

「あのさ2人とも。俺の意思は? あと特攻落下って?」

イエローとヴェンデルがアステムの取り合いをしていたり。


「ヴァイスクラウド様。」

膝の上に座っているレッドが言う。

「どうした? レッド。」

「この帝国は……誰も寂しくなってないから好き。」

「ふふっ。そうか。これから帝国はもっと臣民が増える。皆が寂しくならないように共に頑張ろうか。」

「うん! わかった!」

ネルフス帝国は帝国に従う全ての者を受け入れよう。それが私の望む悪の帝国の……


歓迎会の宴は遅くまで続いた。


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