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ガジェット・ワールド/プロローグ  作者: 饂飩滲みるは
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第ジュッロク章

体調不良のため更新かなり出来ませんでした。m(__)m

「洋子、こいつが逃げ出そうとしたり、飛び掛ろうと……まじかよ?」

 邦之はそう言いながら後ろを振り向いた途端、声を失くした。


 そこには肉体レベル6になって、大幅に若返った今田洋子が立っていた。洋子は元々40近い年齢のはずだった。髪に幾筋か白い物が混じり、肌には多少くすみが目立って、二の腕や腰周りに贅肉が厚めに付いていたはずなのに、今や23~4の娘にしか見えない。


「分ってます、邦之様。喜んで頭を吹き飛ばします」

 洋子は嬉しそうにニコッと笑いながら言った。邦之が彼女の変貌を目の当たりにして、驚いた顔をしてるのが無性に嬉しいみたいだ。


「……あ、ああ」

 邦之は言葉にならない声を発して、地面に縫い付けられた男から矢を引っこ抜くと、両肩の傷に素早くヒールを掛けた。


「洋子、ここでこの男を見張っていてくれ。可奈、俺に付いて来い」

 邦之はそう言って先ほど爆発の矢を放ったビルの屋上に可奈を連れて行った。


 屋上は血まみれになって唸り声を上げる男達3人と、爆発に巻き込まれて死亡したであろう2人分のガジェットの山が残されていた。

 邦之は3人の男の内1人にヒールを掛けると、可奈に残りの2人の男の止めを刺させて、ガジェットを回収した後、ヒールで回復させた男の襟首を掴んで荷物のように担いで洋子のところに戻ってきた。そして、ボロボロの服装の男を、洋子が見張っていた男の隣に乱暴に投げ出す。


 上から連れてきた男は、出血多量で相当具合が悪いようだ。青い顔で「う~っ」と唸っている。

 勿論、邦之が掛けたヒールは通り一遍の物で、失った血液など知った事ではない。そこまで面倒をみる義理は全く無いからだ。


「さて、お仲間を連れてきてやったぜ」

 邦之はにやりと二人に笑いかけた。


「可奈、何レベル上がった?」

 そして、可奈を振り返って聞く。


「はい、3レベル上がりました、邦之様」

 可奈も嬉しそうに答える。


「そうか、じゃあ直ぐにレベルを上げて見せてくれ。おれは、まだ他人が肉体強化する瞬間を見た事が無いから、目の前で見せてくれないか?」

 邦之は可奈にそう言った。


「はい、承知いたしました」

 可奈は頬を上気させて答える。


「1レベル目……」

 可奈はそう言うと肉体強化を行った。

 可奈は肉体強化レベルは1だった。病院に居た時に、邦之と一緒に暴漢と戦いレベルアップしている。元々の年齢は30だったが、今は25~6に見える。

 それがレベルアップと同時に、明らかにスタイルが良くなり肌や髪艶も良くなる。鎖骨の笑窪がくっきりと目立つようになった。


「もう一回やってくれ」

 邦之は唸りながら催促した。


「はい、もう1レベル上げます」

 可奈は目をキラキラさせながら言った。

 今度のはさっきよりも顕著に分った。

 大胸筋の厚みが増し、胸が内側から押し出されるように大きく、そしてお腹が引き絞られたように細くなり、身体の各所の関節が引き締まってメリハリのある四肢になった。全体の脂肪も取れ、小顔になって年齢も更に若くなる。見た目は20歳そこそこに見える。


「よし、残り1回は取っておけ」

 邦之は頷きつつ言った。

 可奈も自分の身体や顔をしきりにペタペタと触ってはニヤニヤとしていた。


「さて、お待たせしたなお二人さん」

 邦之は男達を振り返って、ニパーッと笑った。


「これから、お前らに質問をしてゆく。何故お前ら2人を生かしているかというと、1人だとお前らが本当の事を言ってるか、それとも嘘八百を並べ立ててるか、俺には分らないからだ。

 重要ではない質問は2人同時に聞くが、重要な質問は1人づつ個別に聞くことにする」

 邦之は後ろで控えている可奈を2人の男の背後に立たせた。


「つまり、『これは事実を聞きたい』と俺が思った時、俺の助手がお前らの片方の耳を押さえて、交互に同じ質問をする訳だ」

 邦之は頭の上に『?』を浮かべている男達に説明してやった。


「それで、話の内容が食い違うようだったら、お前ら2人の手足を少しづつみじん切りにしてやる」

 邦之の目は人を傷つける享楽に陶酔したかのように怪しく光る。

 捕虜になった男達は『そんな理不尽な!』と思ったに違いない。青い顔で邦之を見上げている。


「おや? 何をびびってるのかな? お前らがここで襲撃した犠牲者の事を思い出してみるんだな? それに比べたら大した事じゃない」

 男達は半分諦めたような様子で俯いた。


「それでは、最初の質問だ」

 邦之は怯えて俯いている男達に向かって言った。

「お前らの名前を聞かせてもらおうか? 名無しじゃ都合が悪いからな」


「おれは田村だ」

 邦之に肩を射抜かれた男が言った。

「吉田……」

 屋上から連れてこられた男は喋るのも辛そうに答える。


「可奈、吉田の耳を押さえろ」

 邦之は可奈に言った。


「それじゃあ、田村。何故俺達を襲ったんだ?」

 可奈に後ろから両耳を塞がれた吉田が、目をぎょろぎょろとさせて不安な表情を浮かべる。


「……捕まえてアジトに連れて行く為だ」

 田村は完全に諦めたのか、素直に答える。

 邦之は、吉田にも同じ質問をして、嘘ではない事を確かめる。


「連れて行ってどうするんだ? ん? 強制労働でもさせるのか?」

 邦之は再び田村に聞いた。


「……知らねえ」

 田村は青い顔をして邦之から目を逸らした。

『こいつ……何か隠してやがる』

 邦之は目を眇めて田村を凝視する。


「吉田に聞くまでも無いみたいだな? おい、田村……何を隠してるんだ? 喋っちまえよ」

 邦之は振動刃の出刃を、田村の鼻先に突き付け脅しを掛けながら言う。


「……喋ったら、俺を殺さないと約束するか?」

 田村は何かを決意したらしく、必死の形相で訴えた。


「ああ、約束する」

 邦之はいかにも優しそうな顔で答える。

 本心は『もしかしたら、生かしておいてもいい』位にしか思っていない。


「……べるんだ」

 田村がか細い声で呟いた所為でよく聞き取れない。


「ん? なんだって? もう少し大きな声で言えよ」

 邦之はもう一度言うように促した。


「食べるんだよ!」

 田村は泣き笑いの様な表情をを浮かべて、しっかりとした声で言った。

 暫く、その場が凍りつく。


「今、何て言った?」

 流石の邦之も、自分の耳を疑って聞き返す。


「だから、捕まえてきた奴らは、食料になっちまうんだよ!」

 田村は半分やけくそ気味に答える。隣にいる吉田は俯いたまま必死に邦之から視線を逸らしていた。


 邦之は額に拳を当て、目を瞑って必死に何かに耐えていた。元医者として、正当防衛としての殺人には、かなり免疫が出来たが、カニバリズムには正直吐き気を催す嫌悪感が存在する。

 事実、洋子も可奈も言い知れぬ不快感に顔を歪ませていた。


「なあ、喋ったぜ? 俺を解放してくれよ。なぁ、なあ」

 田村はへらへらと邦之にへつらって言った。


「いつからだ? いつから人の肉を食ってる? それもどうやって食ってるんだ? 俺達人間は死んだらガジェットになっちまうんだぞ! ということは……ということは!」

 邦之は目を怒らせて、田村の目の前で出刃を振り回して言う。


「……ひぃ……」

 田村は怯えて後ろにひっくり返った。


「もう、食い物が無いんだ!」

 吉田が悲壮な声で邦之に噛み付くように言った。


 邦之はやり場の無い憤りで手に持った出刃をブルブルと震えるほど強く握り締めた。


『……もう、そんな状態なのかよ……』と邦之は心で呟いた。

鋼伝寺邦之・総合レベル18

 肉体強化レベル12

 スキル=暗視・ステータス・アナライズ

 固有能力・ヒール・ドレインヒール・聴診・麻酔・毒殺

 レベルアップボーナス、8


高木可奈・総合レベル4

 肉体強化レベル3

 レベルアップボーナス、1


今田洋子・総合レベル7

 肉体強化レベル6

 レベルアップボーナス、1


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