20.
14話にさかのぼって、改訂を入れました。
ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
なんだ、部屋はまだ片付いていないのか。仁資はなにをやっているんだ、と接続した瞬間、時宗のぼやきがきこえてきた。
PCにちょこんと乗ったちいさなカメラだが、先ほどの地震と結香の家捜しで散らかりきった部屋全体が写っているようだ。
「仁資兄さんも忙しいみたいだからね、手が回らないのかも」
結香はさらりと答えながら、PCのセッティングを確認した。かたわらに座る香葉がなにか言いたげにちろりと結香を見たが、がちがちに肩を強張らせたまま無言である。
PCの画面にはロンドンの書斎で、悠々と座っている時宗が映っている。
結香は香葉の肩をつかんで、PCの前にすわらせた。
しばらく長谷部時宗は無言であった。アームチェアーにくつろいで座ったまま、じっと香葉を見つめている。
あまりにも長く凝視され、香葉が落ちつかないようにそわそわとし、結香にすくいを求めた。
「兄さん、どうかした?」
『――ああ、すこし驚いたんだ。あまりにも両親のどちらにも似ているから。香葉くん、この世にきみが存在していること、そのことに意味があるんだよ』
「両親? オレの?」
香葉が腰を浮き上がらせた。母親の小河原香子の死について、時宗には告げてない。事前に伝えておくべきだった、とひやりとしながら、時宗に目くばせをする。
気づいたのか、気づかないのか、時宗はやわらかな微笑を浮かべたまま、仁資はまだなのかと尋ねた。
ほぼ同時に、息を切らし、胸をはだけた仁資が飛び込んできた。手にしているのはぺらぺらの小冊子だ。埃まみれである。
『それを香葉くんに渡してあげて欲しい。氷賀が学生時代につくっていた同人誌で、そのイラストを描いているのが高遠葉一くんだ。氷賀の同級生で、親友だった』
「高遠――? って高遠ファイナンスの?」結香が仁資から同人誌をうばいとり、埃をはたくと中から写真がおちた。
ふるい結婚式の集合写真である。晴天の日の屋外。どこかのホテルの庭だろう。大人数でずらりとならんだ盛大なものだ。
立って並んでいる端のほうに若い時宗もいるし、横にいるのは氷賀一彦だ。そのさらに横にひとめをひく美青年がぎこちない笑みを浮かべている。整ったはなすじが、氷賀香葉によく似ている青年だ。
「母さん……?」
香葉の視線の先にいる花嫁は、人形のように華奢で美しく、生気のない顔をしている。
横に座っている花婿は、お世辞にも似つかわしいとは言えない、背が低く、小太りの、痘痕面の中年男だった。




