茂みの奥の『うじゃうじゃ』と、巫女の小さな悲鳴にゃ!
キラを先頭に、りなやボス副校長、そして人間たちがトコトコと歩いて向かったのは、例の畑の一角の鬱蒼とした茂みの中だった。
キラは数ヶ月前から、この一角の土壌を極上の栄養分で満たし、独自の管理システムで桑の木々を効率的に配置し、最高の育成環境を構築していたのだ。
キラが肉球でパッと草むらを分けると、そこには、完璧に温度管理された桑の並木が広がっていた。そしてその葉の上には――。
「うわあああ……っ!」
レオが叫び声を上げて飛び退き、町長も白髭を震わせて腰を抜かした。
そこには、キラの巧みな環境調整によって爆発的に繁殖した、何千、何万という白くて丸い『蚕の魔虫』たちが、隙間なく敷き詰められていた。
自然の巫女であるニナは、普段から小さな虫と対話もするし、芋虫一匹であれば「あら、可愛い子ね」と優しく触れることもできる。しかし、目の前の光景は別格だった。
「……っ、うぅ。ごめんなさい、みんな。お話しできるのは分かるのだけれど……この、あまりに密度の高い『うじゃうじゃ』した集合体は……その……鳥肌が立ってしまうわ……」
ニナは青ざめた顔でレオの背中に隠れ、りなもまた、キラの足元にぺたんと座り込んで小さく首を振った。
「お兄ちゃん、いくらお洋服のためと言っても、この数は……その、ちょっと圧倒されますの! 虫さんたちが、冬の穴ぐらで一匹残らずひしめき合っているような、そんな息苦しさを感じますの!」
虫が苦手なわけではないが、圧倒的な「数」の暴力。ニナと、りなの小さな悲鳴に、キラはフッと髭を揺らして苦笑する。
「シロ……! これのどこがお祝いのプレゼントなんだい!? 虫たちのお祭り会場をわざわざ見せに来たわけじゃないだろう! ……ま、まさか、これをみんなで食べるってわけじゃないよね?」
レオは顔を引きつらせながら問いかけると、キラは平然と答えた。
「ああ。栄養価は極めて高いぞ」
その言葉に、レオだけでなく町長も、りなまでもがさらに顔を引きつらせるのだった。




