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クルージング、からの遭難、からのいつものやつ7

「攻一ー、見ててよー私が一番大物を釣り上げるからねー」


 リリーが釣り竿をブンブンと振りながら張り切る。


「モリがあれば素潜りで魚を獲れたのだがな」


 残念そうに言う朔夜。


「体を冷やすのは良くないからモリがあったとしても海には入らない方が良いぞ」


「冷えた体……ごほうb……攻一の言う通りだな」


 ご褒美って言わなかった?


「さて、では頑張りましょう」


「ああ」


「いっくよー」


 鏡花、朔夜、リリーが張り切って釣り糸を海へ投げ入れる。


 俺も後に続けて海へ投げ込んだ。


 ここで釣れなければ夕食は無し。


 体力の維持の為にも何か食べられる魚が釣れればいいのだが。


「あら?」


「む?」


「あ、き、きたかも!」


 三人の釣り竿に同時にアタリがきた。


 釣り竿は大きく曲がり大物を予感させる。


「もう少しで、釣れそうです」


 鏡花のその言葉の通り、リールはかなり巻かれていてもう少しで掛かった魚が見えてきそうだ。


「私ももう少しだ」


「私も私もー」


 二人も鏡花に続き――とうとう海面から三人同時に獲物を釣り上げた。


「わ、タコです」


 え、タコ?


「タラバガニだ」


 タラバ?


「パック済みサーモン100グラム268円(税抜き)!」


 何て?


「大漁でしたね」


「お腹いっぱい食べられそうだねー」


「待て待て待てストップストップ」


 俺は三人を集合させた。


「もう前半二人はいい。正直ツッコミたいところが多すぎて長くなるからもういい」


「突っ込むってどこに突っ込む気なんだろうな」


「えっちー」


 うぜぇ!


「それで? リリーは何を釣ったって?」


「サーモンだよ?」


「普通のサーモンは切り身(パック済み)の状態で海を泳がないんだよ」


 最近の若者か。……最近の若者だったわ。


「え、まさかリリー……魚が切り身の状態で海を泳いでるって思ってる? ・・・いや悪かったな。水飲むか?」


「思ってるわけないでしょ! 私そんなバカじゃないもん!」


「……前の期末テスト何位だったっけ?」


「……に、237位だけど」


「何人中?」


「……238人」


「お前に負けた一人が可哀相すぎて泣ける」


「うわぁぁぁああああん!」


 リリーは泣きながら走り去っていった。


※ ※  ※


 日が落ち、夜になった。


 辺りはすっかりと暗くなって光源と言えばたき火と月明かりくらいだ。


 釣った物を食べた後、俺達はたき火を囲んで暖を取っていた。


 アホの子と判明したリリーは体操座りで顔を膝にうずめてすすり泣いている。


「なぁリリー悪かったって」


「グスッ……私、ばかじゃない……」


 鏡花に連れられて帰ってきた時も、食事を取っている時もずっとこの調子だ。


 うーん……どうしたもんか。


「リリーさん、攻一さんもきっと反省していますよ」


「そうだな、お詫びに何でも一つ言う事を聞いてくれるんじゃないか?」


 慰める鏡花と勝手な事を言う朔夜。


「グスッ……本当? じゃあ攻一、パンツくれる?」


「いやそれは渡さないけれども」


「ちっ」


 今舌打ちしなかった?


 こいつ……本当は大して落ち込んでねぇだろ。


「ほら、アホな事ばっか言ってないでもう休むぞ」


 夜になってから当然気温は下がっている。


 暗くて出来る事も少ないし、体を冷やす前に早めに寝た方がいいだろう。


 休む場所としては、ゴムボートを利用する事にしていた。


 地面から体を浮かせて地面の冷気を防ぐ事も出来るし、四人で一塊になって寝ればある程度寒さをしのげるだろう。


 後はクルーザーに運良く厚めのシートも乗っていたのでそれを被れば風もマシになるはずだ。


 俺はたき火から程良い位置にゴムボートを設置した。


「攻一、寝ている時にイタズラをしてはいけないぞ」


「任せろ」


 朔夜の言葉に一切迷いなく答える。


「つい触りたくなっても我慢しないとなんだからねー」


「大丈夫だ、安心しろ」


 リリーの言葉にも揺るぎなく答えた。


「「………………………………」」


「さ、寝るぞ」


「「イタズラしろよ!!」」


 二人の魂の叫びが木霊した。


小ネタ

調理器具無い中でどうやってタコとかタラバ食べたんだろ。

※ ※ ※


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