クルージング、からの遭難、からのいつものやつ5
お父様との一連の出来事を思い出し、私はまたため息をついてしまう。
正直中止にする事をすぐに考えた。
攻一さんにもそうだが、朔夜さんやリリーさんに多大な迷惑を掛けてしまうかもしれない。
だが中止にしたとしても父の事だ、またすぐに別の何かをやってくるだろう。
同様に攻一さんに知らせても同じ結果になる。
ぐるぐると悩んだ私は二人に相談をした。
父の事、今回の事、危険になるような事は起きないよう父に伝言した事を説明する。
二人は全然構わないと笑ってくれた。
本当に私は友人に恵まれている。
「鏡花さーん、そろそろ戻ろー」
リリーさんが手を振り呼び掛けてきた。
両手に枝を抱えながらリリーさんの元へ歩く。
「リリーさん、私あまり考えすぎないようにしてみます」
「うんそれがいいよ、悩んだり考えすぎたりしても良い事無いよー」
眉間にシワが寄っちゃうよー、と指先で実際にシワを寄せながら言うリリーさんの顔がおかしくて私は少し笑ってしまった。
「そういえばさ、鏡花のお父さんはどういう風に危険は起きないように動いてくれるんだろ?」
「確かに、そうですね・・・」
恐らく、この状況が攻一さんを試している、という事なのだろう。
なら大々的に動いて今の状態を台無しにする事はしないはずだ。
――と、また考え込んでしまいそうな自分に気付く。
思考を打ち切り、頭を少し振って外へ追いやる。
何が来ても良い。
私が皆を危険な事から遠ざければ良い。
それだけだ。
※ ※ ※
朔夜と作った石のかまどが完成してから程なくして鏡花とリリーが木の枝を抱えて戻ってきた。
「たくさん拾えたよー」
そう言って笑うリリーの横で、鏡花も微笑んでいる。
作業をしていて気が紛れたのかもしれない。
「よし、じゃあ早速火を起こしていこう」
火は水の煮沸や食料の加熱調理、暖を取ったり狼煙を上げて救助を求めたりとサバイバルの
最重要事項と言ってもいいだろう。
だが問題はどうやって火を起こすのか、だ。
ある程度火が簡単に点きそうな火種があったとしても着火できなかったら意味がない。
さて、どうしたもんかと考えていると朔夜が声を掛けてきた。
「攻一ライターそこに落ちてた」
なんでやねん。
「いやいやいや海岸に落ちてたライターだろ? 流石に点かないだろ」
ましてやここは無人島、のはず。流れ着いた物だろう。
シュボッ!
普通に点いた。
だからなんでやねん。
「ええ・・・、何か釈然としないけど・・・まぁ、ラッキーと思うか」
(鏡花さん・・・これ・・・)
(ええ・・・)
鏡花とリリーが何やらぼそぼそと話している。
気になったが今は火を起こす事を優先しよう。
日が沈んでしまったら一気に出来る事が少なくなってしまう。
「じゃあ鏡花とリリーが集めた木の枝をもらっていいか?」
「ええ、任せて!」
リリーが両手に抱えた木の枝を持ってくる。
「じゃあまず、太い枝に」
うん。
「細い枝」
うん。
「あと簡単に火が点くと思って」
おお。
「私のパンツ」
有毒ガスが出るわ。
「有毒ガス出るわ」
もう直接声に出して言った。
「出ないよー! 失礼だなーもうー」
「履いてた汚いパンツ差し出す奴にだけは言われたくねぇんだよ」
「汚くない! ほら! 嗅いでいいから! 気が済むまで嗅いでいいから!」
「やめろ! お前が嗅がせたいだけだろ! お前、最初にふざけた行動はするなって言っただろ!」
「全然ふざけてないよー!」
「尚更たちが悪いわ!」
小ネタ
リリーに替えのパンツはありません。
「グッ」
「グッ、じゃないんだよ」
※ ※ ※
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