70 竜の巫女06
朝食を取り 朝の稽古をした後で
ティアがみんなの前に出て来て話を始めた
「この予言書には私が竜の巫女だと書いてありました
それは 皆様も見たことがあると思います
しかし 予言書は変化することがあるようです
予言書には こう書かれています
私達の住む村に20人の百英雄が現れ
そして 私を含めて19人の村人が
百英雄と共に 魔物退治の旅をする
この人数は もう お分かりですね
私と皆様を合わせた人数が19人だと思います
どうやら 私達は強くなるようです
1人も欠けることなく
百英雄と共に 旅が出来るほどに」
みんな ざわざわしていたが
ティアは笑顔で
「私達が村を救いましょう きっと 楽勝ですよ」
ティアは俺の方を見て にっこり微笑んだ
「ああ そうだね 楽勝だね」
今から生まれて初めての戦闘をすると言うことで
不安な顔をしていた女性達
ティアのおかげで みんなの顔が明るくなった
「じゃあ 出発」
俺が言うと ミーユが手を挙げて
「いつ 装備に着替えるのですか」
「えっ ミーユ その服よく似合っているよ」
「そうじゃなくて 危険な魔物と今から」
「う~ん そうだね 服はそのままで これを」
俺は雰囲気作りのために
みんなに皮の盾を渡すことにした
女性達が村から持ってきた装備は意味ないから俺が預かっている
お鍋のふたや手作りの木の盾等 ボロい服に何枚も布を張り合わせて厚くしただけの服等
防御力があまり無さそうな物ばかりだったからね
「魔物が出たら みんなは 1ヶ所に集まって動かないように
絶対に逃げ出さないようにね 危険だからね
心配なら 隣の人と手を繋いで座っていてね」
女性達はコクりと頷いた
よし
「俺とちゃちゃは守り ばにらとちょこが攻め
本気で戦っていいからね」
ちゃちゃ ばにら ちょこはコクりと頷いた
「出発~」
最初に現れたのは 大猿の魔物の群れだった
ちゃちゃ ばにら ちょこは弓で攻撃だ
大猿の魔物達は すぐに俺達の居場所を特定し
向かってくる いつもより気付くのが早い
そりゃそうだよね
みんな 逃げ出さないけど ぎゃあぎゃあ 騒いでいるし 人数多いからね
「魔那よ 我に力を」
「連石弾」
数が多いか……
木をつたって 上から襲ってこようとする大猿の魔物もいる
なら
「連石弾 倍速」
一撃で倒すことよりも 威力は落ちるが両手で次々に投げて 足止めだ
「巨大盾」
こっちにも
「巨大盾」
倒すのは ちゃちゃ ばにら ちょこに任せればいいだろう
おっと
「巨大盾」
それにしても ばにらとちょこは強くなった
遠距離なら弓で 中距離なら飛苦無で
接近戦なら 2本の短剣で次々に倒している
戦闘時間は5分くらいだったかな
「ちゃちゃ ばにら ちょこは みんなの護衛
俺が回収してくるからね」
3人はコクりと頷く
93匹か なかなか多いな
この辺りには冒険者が入ってこないのかな
みんなの所に戻ると 全員 戸惑いの目で俺を見てきた
そして ティアが
「レベルがいきなり レベルが」
ティアも戸惑っているようだ
「知らなかったかな レベルはみんなに入るんだよ
経験値とは魔物から出るエネルギーだから
直接倒さなくてもレベルは上がるんだよ」
「うんん それは 知ってたよ でも
いきなり レベル12になったんだよ
私達の目標はレベル10なのに」
「あっ オーク退治が出来るレベルだったね
レベルが高い方が楽に倒せるから問題ないよね」
「でも どうして レベルがいきなり」
「単純に 魔物が多かったからだよ
D級の大猿の魔物が93匹だったからね」
「D級 D級と言ったら レベル30以上の
冒険者が戦う魔物 それを雑魚のように」
雑魚なんだけどね
「ちゃちゃ ばにら ちょこは強いだろ
毎日 稽古しているからね
でも 稽古のことは 他人にも 村の人達にも
絶対に秘密だからね」
「わかりました」
よっぽど 驚いているのか ぼーっとしていたので
ティアを抱きしめて
キスをした
「こんなところで ぼーっとしていたら 襲われちゃうよ」
「いいですよ ふっふっ」
ティアの笑顔はとても可愛い
我慢するのが大変だよ
「じゃあ みんな 進むから集中してね」
次に現れたのは
げっ まずい
虎の魔物だった
しかも 3匹も
「ちゃちゃ ばにら ちょこは 守り」
本気で戦って すぐに終わらせよう
俺は走って虎の魔物に近づく
「分身魔法 にんにんにん」
3人の俺が それぞれ 虎の魔物に向かっていく
俺は上空に幻影の炎の魔法を放ち
幻影の炎に紛れてジャンプ
からの
「満月崩壊」
大量の岩を空から落とす
そして
着地と同時に走る
岩に当たってふらついている虎の魔物を
朱殷の杖で思いっきり ぶっ叩く
次は
「重石弾」
少し距離があった虎の魔物に鉄球を投げつける
1匹の虎の魔物が向かって来たので
「巨大盾」
からの
ジャンプ
虎の魔物は巨大盾にぶつかったが
すぐに上を向いたので
「流星」
岩を上から投げ落とした
後は
あっ
3匹の虎の魔物に止めを刺そうと思っていたら
3匹の虎の魔物の頭に矢が刺さり倒れた
俺の見せ場が……
同時に矢が当たっていたので
3人で放ったのだろう
美味しいところを取られてしまったが
まあ いいだろう
虎の魔物を収納して みんなの所に戻ると
ちゃちゃ ばにら ちょこがにこにこしていたので
「助けてくれてありがとう
ちゃちゃ ちょこ ばにら」
3人を抱きしめて キスをした
その後も 大狼の魔物 大猿の魔物 吸血巨大蝙蝠の魔物 大蜘蛛の魔物等を倒して進んだ
「それにしても 魔物が多いね」
俺が言うと ミーユが
「近くの街の冒険者が少なくなっていると 噂があります」
「パンセの街の」
「はい 街の近くに盗賊が出ても放置したり
他の街では 当たり前のように出ている魔物の討伐報酬も出ないそうです」
「あれは 国から出てると聞いたことが……」
「領主に問題があるようです」
へぇ~ 着服してんだ まあ 国境付近の街だから
王都から目が届かないのかな
パンセの街には 長居しないほうがよさそうだね
夜は ちゃちゃに子狐達を出してもらって 見張りを頼む
俺 ちゃちゃ ばにら ちょこは みんなを囲んで寝ることにした
さすがに 今日は1人で寝ようかと思っていたら
ティアが俺に抱きついてきて
キスを
もちろん 俺には 我慢なんて 出来るはずがない
ティアを抱きしめ
キスを
そして
……
聞いてもいい
聞きに来たんだろ
うん どうして 私達のレベルの方が
ちゃちゃちゃん達よりも上になってるの
ああ それは 秘密なんだけどね
どうしても 知りたいなら
言わなくていいよ 本当に聞きたかったのは
あなたは 英雄様ですか
俺が
うん さっき 予言書を見たら 私達19人の名前が書いてあったわ
へぇ~ そうなんだ
きっと あなたに会って 運命が変わったのよね
この予言書は英雄が現れてから出来たもの
私の運命は英雄が現れてから決まったと思う
そうなんだ
英雄が現れた時点で私の運命が変わった
そして この予言書を見て行動したので
更に運命が変化した
予言書を見た人達が
私を竜の巫女だと信じて集まってきた
本来なら 私が竜の巫女になってから集まってくる人達が……
そんな村を救うために ミーユが街へ向かい
あなたと出会った
まあ 運命なんて 簡単に変わるんじゃないのかな
今からすぐに寝るか もう一回するかでも
もう 秘密なのね
俺は英雄だよ でも世界を救うつもりはないけどね
じゃあ 村は
う~ん 本当は あまり興味がないんだけどね
じゃあ 私は
もちろん 全力で救うつもりだよ
ふっふっ ありがとう
ティアが俺にキスを
強く抱きしめあい
何度も
なんども
……
今日はここまでです
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