3 お引っ越し
「これは・・・」
水晶に写されたクラスメイトの様子を見て思わずそう呟いてしまった。
ほとんど名前も覚えてないクラスメイトが勇者になった瞬間をこんな形で見るとは思わなかったが・・・
「知りあいかしら?」
「一応・・・とはいえ知ってるだけの他人ですが」
「そう・・・どうやらあなたが本来召喚される場所は今写ってる場所だったみたいだけど・・・なるほど、人間達は異世界人に力を持たせて私達を殺すつもりみたいね」
そうなのか・・・クラスメイトと一緒に異世界召喚されなくてよかったと心底思いつつも俺は魔王様に聞いてみた。
「さっきのあれってなんなんですか?あれも魔法の一種なんですか?」
今も続々と水晶の中で発現してる謎の能力ーーーあれも魔法なのだろうか?そんな疑問に魔王様は「うーん」と少し考えてから答えてくれた。
「魔法・・・そうね。おそらくは召喚魔法の副次的なものね。魔力を源にしてるのは間違いないからジュンは使えても使わない方がいいけどね」
「もちろんです」
魔力を持つと魔王様と一緒にいられなくなるかもしれない・・・なら俺は魔法なんか使えなくてもいい。
「とりあえずしばらくはこっちには来ないと思うけど・・・念のため居場所は変えておきましょうか」
「それはいいんですが・・・どこか他にあてはあるんですか?」
「もちろんよ。私も伊達に1000年以上も生きてる訳だからね。それなりに何ヵ所か拠点を持ってるわよ」
流石魔王様・・・しかし、この容姿で1000年以上も生きてるなんて言われてもいまいちピンとこないな・・・見た目の年齢は俺と同い年か少し年上くらいにしか見えないけど・・・
「どうかしたの?」
そんなことを考えて魔王様を見つめていたら不思議そうにそう問いかけられた。
「すみません。魔王様に見惚れてました」
素直にそう答えると魔王様は嬉しそうに微笑んでくれた。
「ジュンにそう言われるとなんか照れるわね・・・でも生まれて初めて老いないことを嬉しく思えたわ」
・・・・そうか、魔王様はこの状態のまま歳をとらないのか・・・なら、俺も長生きする方法を後々見つけないとな・・・
そんなことを考えながら魔王様と俺は移動するために準備を始めた。