神様! 追加サプリ必須はシナリオ明記でお願いします!!
「ごちそうさまでした!」
「お、お粗末さまでした……?」
セシリアさんが作ってくれた温かいスープを牢屋の中でじっくり味わう私。牢屋といってもきちんと毛布はあるし、セシリアさんの配慮でトイレもきちんと目隠しがある。ぼっとんなのは仕方がない。
城塞都市ゼーレン。この都市はアルバーン戦記TRPG2.0の弱小わき役国、ファルシア公国がたった3つしか抱えていない都市のうちの1つである。確か、険しい山と森に囲まれた場所で、この場所から山道をさらに登ったところが首都だから、その山道をふさぐように要塞のようにされている……という設定だ。実際、ついてみるとこの都市、とても自然な匂いに包まれていた。そしてご飯が美味しい。
「そ、それで……私は貴方をどう報告したらいいの……?」
セシリアさんは優しい。どう考えても不審者でしかない私が、情報を漏らさない代わりに見張っててくれてもいいからゼーレンに連れてきてという、よく考えればとんでもない要求をしっかり聞き入れてご飯まで食べさせてくれた。私のセシリアさんの性格推理は合っていた。もしかして私、TRPGやる素質ある? というかセシリアさんがなんか引いてる?
「セシリアさんどうしたの? どう報告も何も、ありのままにすればいいんじゃないかな?」
「ありのままって……? え? 私は『森を警戒していたら突然、私の素性を異常なほどよく知っている異国の衣装をまとった少女が現れたので捕縛しました』と報告しなければならないと……?」
「それ言ったらセシリアさん死んじゃわない?」
「その通りだから困ってるんでしょう!? 私の素性を知ってるんなら、私がきちんと誤魔化して報告できる人間なのはわかってるでしょ! 貴方のことをもう少し教えてくれれば上手くやってあげるから教えてよ!」
うーん。話したいのはやまやまだけど、異世界から来ました! は流石にない。かといってここまでしてくれているセシリアさんを困らせるのも本意ではない。というか、情報源にできそうなのは今のところセシリアさんだけ……そうだ、情報を貰おう! 貰った上で何を出すか決めよう!
「えーっと。実はですね。セシリアさん。私、今、何年の何月かとか全然わからないんですよ。」
「えっ!? それは、記憶がないとかそういう……わけがないわ……それだと私の事を知ってるのオカシイものね……」
「はい。記憶というか、情報はしっかりあるんですよ! えーっと。いわゆるエピソード記憶? ですか? あの辺が飛んでるのかもしれないんですけどー。」
「エピソード記憶……?」
「ざっくりいうと体験の記憶ですね。昔何をしてたーとか。そういう記憶です。そういうのだけすっぽり抜けてる感じで。」
大嘘である。エピソード記憶は忘れにくい。認知チェックなどには使われるものであるが感情や情景と結びついているから忘れにくい部類。これはもちろん、漫画の知識。ちなみに、こうした客観的な知識は意味記憶ね。とはいえ、この世界の記憶なんてあるわけないんだから客観的に見たら大嘘でもなんでもないかもしれない。どこまで知識が通用するかのチェックも兼ねてみたけど、よく考えたらセシリアさんってスパイではあるけど拷問とかするタイプではなさそうだからこういう知識面はそこまで強くなさそう。っていうか確かそんなに高くなかった気がする……うーん。細かい数字は流石に覚えてないや。
「そうだったの……だから捕まった方が安全そう。とか思ったわけね。まあ、実際そうかもね……この状況下だし。」
やっぱり優しいセシリアさん。きちんと信じてくれたみたい。だけど、不穏な単語が聞こえたなぁ……ここから情報を得るのが、TRPGの世界での鉄則って友達が言ってた!
「この状況下って? そもそも今って王国歴何年?」
「今? 今は王国歴121年よ。」
……王国歴121年……?
あれ、私、この年号、見た覚えがある……えっと。確か……えーっと……確か。この世界の年表は、こう。
63年: アルバーン王国とガルディア帝国が分裂。
うんうん。ここがアルバーン戦記の始まりなんだよね。メインなだけあってルールブックの初めの方にも背景とか細かく書いてあったなぁ……
77年:ファルシア公国建国。(※追加サプリ『ファルシア公国紀』参照)
それに対してしょせんわき役だもんね。ファルシア公国。追加サプリ……要するに追加ルール用の本にしか細かく書きませんよーと言われちゃう始末で可哀想だなって思ったよ。もうちょっと遊んで、他の国の事やNPCの事を知ったら買おうかなーって思ったね。
80年:王国が魔石を開発。
94年:帝国が魔石を軍事転用開始。王国との小競り合いが増える。
101年:王国が都市規模の「魔力結界システム」を開発。 戦争の形が変わるきっかけになる。
この作品の凄いいい所ってこういう細かい所だよね。魔石って言う概念が出てきてから、戦争が激しくなるの。現実の戦争も爆薬とか開発されてから激化していってるからこの辺のリアル志向な流れ、すごくいいなって思ったよね。確かこの魔石周りのシステムは、追加サプリ『ガルディア帝国紀』で補足されてるとか書いてあった気がするな。
118年:第一次ゼーレン事変。(※追加サプリ『ファルシア公国紀』参照)
121年:第二次ゼーレン事変。(※追加サプリ『ファルシア公国紀』参照)
……うん? 121年……? あれ、ちょっと待って。私の知ってる年表ってまだ続きあったはず……
126年:ディストニア大平原での大規模な合戦。アルバーン戦記TRPG2.0の現代シナリオはここが起点となる。
……だよ、ね……えっと。えーっと。今は。
121年:第二次ゼーレン事変。(※追加サプリ『ファルシア公国紀』参照)
今って、私が知ってる、6年前……? 追加サプリ参照!? 事細かな情報は追加サプリにしか書いていませんよってことだよねぇ!? ルルブの読み込みの価値が、半減した!? いや、待って待って! ゼーレン事変、ゼーレン事変ってルルブになんか書いてなかった? 流石に2回も起きてる話みたいだから注釈位はあったはず! 思い出せ、思い出せ私!!
111年から118年までの間、帝国軍はゼーレンに度重なる圧力をかけておりついに事件が起きた。これが第一次ゼーレン事変である。帝国軍は最新兵器をもってゼーレンに夜襲を行ったが、公国軍は最小限の被害で帝国軍を撃退した。この情報は瞬く間に全世界に知れ渡り、帝国軍の権威を地の底へと落としたのである。そして、121年。帝国軍はその権威を取り戻すべく10万の兵力をもってゼーレン攻略作戦を決行した。これが第二次ゼーレン事変である。
……もう一度よく思い出そう。私。セシリアさん、森で警戒していた。何で? 静かすぎるって言ってた。何で? ……帝国軍は数で圧倒するために準備してる最中だったから……
「ああああああああ!!!!!」
ねえ神様!! 百歩譲って、TRPGにPL突っ込むのまでは許すよ! だけどさ!!
プレイするプレイヤーがもってるサプリの確認はお願いします!! 死にます!!
「え、えっと……だ、大丈夫?」
「セシリアさん、逃げよう! うん、逃げよう! すぐ逃げよう!」
「突然どうしたの!?」
「今すぐ逃げないと帝国軍の大軍勢がやってくる! 死んじゃう!!!」
「帝国軍の、大軍勢……? まあ、確かに、その噂はあるけれど今すぐは……」
「セシリアさんが森で警戒してたのってそういう事ですよね! ですよね!!」
「まあそうだけど……帝国軍がくるとしたら森からだろうから斥候なりなんなり確認に何か飛ばすってゼーレン防衛隊は考えてるから……それに、あの防衛隊がそう簡単に負けるわけがないって、私は思ってるから多分……ここの方が安全じゃない?」
うん? あれ、セシリアさんってアルバーン王国のスパイだよね? 案外、ゼーレンの防衛隊の事信頼してる? これどういうこと? もしかしてこれも追加サプリに書いてある内容だったりします?
『未子、次買うなら絶対、ファルシア公国紀! 特にね、城塞都市ゼーレンの防衛隊と、スパイの公式シナリオがあるのよ。絶対未子が気に入るよ!』
……あれ、これは、どこの記憶かな? ……ハッ!! 私に、アルバーン戦記TRPG2.0を布教した、乃華ちゃんと最後にメールしたやりとりだ!!
わが友よ! 君の言ったことは、間違ってなかった!!




