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神様! TRPGの世界にPL-私-を突っ込まないでください! ~ルルブ知識と夢回想イベントだけで1万の軍勢を10万に勝たせろなんて無謀じゃないですか!?~  作者: mizuchi_0307
異世界転移初日

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神様! TRPGの世界にPLー私ーを突っ込まないでください!!

私は今、どこにいて、何をされているのだろう?

目の前にはどこかで見たことがある顔の女性。しかし、その服装は明らかに日本の物ではない。どこかの軍服。すらっとしててかっこいい。でもこの軍服もどこかで見たことがあるような気がする。でも今一番困っていることは首につきつけられた銀色の長い何かが当たった所から、私の血がツーっと流れ落ちていること。ひりひりと痛い。というか、怖い。


「困ったわね……一般人、にしては身なりが変だし、帝国軍、にしては無抵抗すぎるし……」


産まれてからこんな銀に輝く長くて鋭い刃物を突き付けられたことはない。というか、平和な日本でこんな長い刃物を持ち歩くことが許可されているのならそれは日本ではなく別のどこかだ。

そう、そうだ。そうに違いない。私はいわゆる「異世界転生」に巻き込まれたのだ。そうだ。そうに違いない。そう思わないとやっていけない。一度はやってみたかったんだ、異世界転生。

……でも異世界転生って、元の体のままするものなの? ファンタジー小説とかではもっと別の体に生まれ変わって転生とかじゃないの? これじゃあただの異世界転送じゃない?


「貴方、大人しく私に従ってくれる? この森はね、最近静かすぎて物騒なの。見慣れない人間が1人歩いている。この状況そのものがおかしいぐらいに。だから、この剣をどける条件は従ってくれることを約束してくれること。それ以外ないの。ごめんなさいね?」


言葉が通じるかどうかもわからない。けど、彼女が何を話しているかはわかる。だから私は素直に頷いた。もしもここで変な言語が出たら殺されるかもしれないし。この判断は間違っていなかったようで、彼女は私の手に縄をかけると剣をしまってくれた。うーん。彼女の顔、どこかで見たことあるんだけど……とにかく。自分の身に何が起きているのかわからない現状。大人しくこの女性に従うのが安全だろう。


しばらく、まったく見慣れない森を歩く。今どき珍しいセーラー服姿の私―品日しなび 未子みこ―を、この女性は何処へ連れて行こうというのだろうか?


「貴方、いったいどうやってこの森に入ったの? さっきから一切喋らないけど、もしかして喋れなかったりするの?」


不味い、喋らないことを不審がられている。かといって喋るのは怖い。言葉を発するのが怖い。どんな言語が自分の口から飛び出るのかわからない。こういう異世界転生ものでは喋れなかったり、言語スキルがなければ話せないとかざらにある。それで酷い目にあってる小説とかも見たことある。嫌だ、喋りたくない。でも喋らないと不味い。どうする? どうする?


「うーん……何か、事情が複雑そうね。うん。わかったわ。ひとまず私から名乗るわ。私はセシリア。城塞都市ゼーレンの防衛隊の人間よ。ゼーレンの森なんだから、ゼーレンの人間が警戒してるのは当然よね? ここまでは、わかる?」


……ゼーレン?

私の頭に一つの世界が浮かび上がる。そう。これは私の記憶違いでなければつい先日、触れた世界。アルバーン戦記TRPG2.0の、わき役国家の都市の名前だ!


アルバーン戦記TRPG2.0。中堅出版社が出している異世界ファンタジーTRPGの名前だ。一番の売りはTRPGとしては珍しく『主人公』とされているキャラクターがいて自分達はその傍らに登場する無名キャラクターとして冒険する、という舞台設定であり、ルールブックがキャラクター設定ブックと言われるほどにNPCキャラクターが豊富であることである。なぜそんなにNPCが登場するのか。それはこのTRPGが戦記であることが強く関わっており、公式シナリオでは大体NPCが2、3人死ぬのが当たり前、と言われるほどNPCがよく死ぬのである。だからこそ、気に入ったNPCを生かそうとキャラクター制作に力が入ったり、探索パートで必死にフラグを回収したりとゲーム自体を楽しめると人気が出たのだ。


私自身はTRPGはほとんどやったことがなかったが、つい先日、このアルバーン戦記を友達に誘われて一緒に遊んだ。ルールブックを一緒に見ながら、1つ1つイベントを解き明かして時には技能が成功するかをダイスでチェックし興奮したことをよく覚えている。一般的なビデオゲーム、テレビゲーム等しかやってこなかった私には本当にいい経験だった。何がいいって、ビデオゲームのRPGは一つのエンディングに向かって王道を進んでいくのが基本だ。それに対して、TRPGは道中何でもできる。ある程度シナリオによって道筋はあるもののそのシナリオ内での行動は全部、エンディングに繋がっていく。シナリオを導いてくれるGMゲームマスターと一緒にPLプレイヤーが物語を紡ぎ出していくものなんだって、感動した。


……が。今一度、自分の現在の状況を思い出してみよう。ここはアルバーン戦記TRPG2.0の世界。多分。城塞都市ゼーレンなんて変わった名前、他のRPGとかで聞いたことがないし。で、私が今目の前にいる女性の顔を何となく見覚えがあると感じた理由。これもこれなら納得はできる。ルールブックだ。キャラクター設定ブックとまで言われるルールブックに多分、顔つきで掲載されているクラスの女性だこの人多分。でもセシリアなんて名前に聞き覚えはない。それはしょうがない。私が先日遊んだシナリオは、この世界の2大大国であるアルバーン王国とガルディア帝国がぶつかり合う、アルバーン戦記TRPGでは王道の公式シナリオ。そこに城塞都市ゼーレンが所属するファルシア公国は一切登場しない! でも、何故か見覚えがあるということは……王国か帝国のどちらかに名前が載っていたという事であって……つまり……この人、どっちかの人なんじゃない? ゼーレン所属なのに? あれ、これメタ? あれ? このメタ不味くない? この人の立場今ここで指摘したら不味いやつじゃない? ますます私、喋れなくなっちゃったんじゃない?


いやいや、それもそうだがもう一度よく考えてみよう。今、この状況。間違いなく異世界転送されている。私が。TRPGの世界に。……何で私が? いや、神様。おかしくないですか? TRPGってPCプレイヤーキャラクターいますよね? PLが作るキャラクターいますよね? やるにしても普通、そっちに転生させません? 何でPLをTRPGの世界に突っ込んじゃうんですか? あれ、もしかして神様、GMをやりたかった? 私を使って? いや、ならなおさらPC使いましょう? なんでPLを突っ込むんですか!?


「どうしたの? 変な顔して。気分でも悪い?」


セシリアのその問いに全力で首を横に振る。気分はすこぶる悪い。最悪なぐらい悪い。でもその理由の中に『貴方が裏切り者であることを知っています』なんて物が入ってるなんて知られた日には私の首が真っ二つになる!! 私はどうしたらいい!? そ、そうだ! セシリアさんの詳細を思い出せばいいんだ!!!


自慢ではないが、私は実はとても記憶力はいい。先日初めてシナリオを回らせてもらった(TRPG界ではセッションというらしい)のだが、その時に私はルールブックを持っていなかった。だから友達のルールブックを一緒に見せてもらいながら遊んだのだが、その後、その楽しさを忘れられずにルールブックを早速買ったのだ! 中堅出版社が販売している関係もあって地元の書店では手に入らなかったのでネット通販でぽちった。翌日、届いたルールブックは全て読破して見せた。ただ、読んで思ったのはこれでは頭にきちんと残らないな、という感覚。名前と設定は把握した。でもそこから想像できる性格というのはシナリオや台詞で描かれないとどうにもわかり辛く、印象に残らない。だから……そうだ。私は、友達にまた遊ぼうとメールを送ったんだ! えーっと。その返事は何だっけ……いや、今はそれを考えてる場合じゃない。セシリアさんだ。セシリアさんの設定をきちんと思い出すんだ!!


「……」


あああああ!! セシリアさんの目がなんか怖い! 物凄く疑ってる!! いや、でも私はまだ一言も喋ってない。まだだ、まだいける。今から設定を思い出せれば行けるはず!! えっと。えっと、セシリア……セシリア……私は今、産まれてからこの19年間の中で最も頭を働かせている! 大学入試? 確かに必死だった、だけど! 今この瞬間を超えることなんてない!! ……ハッ!!!


「あ、あー……あいうえおー」


「え? あ、貴方、喋れるの? は、発声練習……? あいうえお?」


「母音クリア! 問題なく言葉が通じそうなことを確認!」


「????」


よし、私の言語も日本語で確定! アルバーン戦記TRPGは日本の出版会社だからこの世界も日本語ってことね、よし! ならセシリアさんなら交渉ができる!


「セシリアさん、貴方、アルバーン王国の人ですよね! ファルシア公国の情報を得るために入り込んでるスパイ。そうですよね?」


「貴方、何者!」


「あ、け、剣はやめてください剣は! 私は本当にただの迷子なんです! 貴方の立場を知ってるだけのただの一般人なんです!」


「私の立場を知ってる一般人なんてありえないわ。私がどういう手段でゼーレンに入ったか」


「王国にいたザメックって言う博士がゼーレンにいることを突き止めて、身分を偽ってゼーレンの騎士団に入り込んだんですよね。家族のために。わかってるので、命だけは助けてください! 見張られててもいいですから! いや、むしろこの世界ならそっちの方が助かりますから!」


「……嘘でしょ。本当に、全部知ってるっていうの?」


ごめんなさい、セシリアさん。貴方を利用させてもらいます。私は全力で首を横に振る。


「どこまで知っているの?」


知っているのは貴方がそういう立場の人でゼーレンにいるっていう『設定』がルールブックに書いてあった。それだけ。だけど今までのやり取りとその『設定』から、セシリアさんが秘密を隠すために即人を殺すとか。そういうタイプの人ではないってわかったから。この世界の設定的に人の生死はかなり軽い。そうやって考えればセシリアさんは『裏切らなければ安全な部類の人』だと私は判断した。だから全部話せば見張りという名の護衛を貰いつつ、私は何でこの世界にきてしまったのか、どうしたら戻れるのかとか。そういう情報を得る時間が手に入ると思ったから、話しました。……とは流石に言えない。


「どこまで知っているかを貴方が聞く為にも、ゼーレンで2人きりになれる場所に監禁なりなんなりしてください! 他の人には絶対話しませんから! 約束しますから!」


「……わかったわ。貴方が約束を守る限り、私も約束は守りましょう。とりあえず、ゼーレンへ。話はそれから。それでいいわね?」


「はい!!」


こうして、何とか初イベントを生きて乗り越えることができた私は、アルバーン王国スパイのセシリアに城塞都市ゼーレンへと連れられて行くのであった。


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