0話 prolouge
「痛い…」
「苦しい… 助けて…」
死した者はなお生きることを望んでいる。特に不慮の事故で死んだ者はその場限りではない。
だが死した者を生き返らせることができればどんなに良いだろうか。誰もがそう思うだろう。
一人の少女にすがる死した者は常識では考えられないほどの数である。本来霊と言うものは普通の人には見えないものだが、この少女は違っていた。
少女の瞳に映る霊は皆、不慮の事故で死亡した悲しい運命となった者達。加えて体の様々な部分の傷口から血を流す者。服が焼け焦げ、全身の肌がただれている者。死因は様々で常人からすればそれは耐え難い光景だった。
しかし、その少女は臆することはなく、死した者に手をかざす。
「…もう、あなた達は死んでしまっている。」
死した者にあった怨は少女が手をかざすことにより、消え失せていた。
「これで…痛くないでしょう?」
春の暖かさを超えて暑い日差しの照る7月某日。暑さは峠を迎え、猛暑日のはじまりを意味している。
加えてセミの声がミーンミーンと街中でもうるさいほど鳴り響き、人の集中力を欠いている。
生徒達は授業を受ける時間帯。教室では教師が必死に授業を進め、生徒は暑さに負けているようで下敷きやノートを団扇にしている。
校舎の真横のプールでは水泳の授業が行われ、水着を着た生徒達が涼しそうに泳いでいるのが見え、校舎にいる生徒はうらやましさを覚えている。
「…第三の働きは内閣総理大臣の指名です。指名された総理大臣は、発足ということで内閣を組織します。最近、総理大臣が辞任し、現在では選挙活動が盛んに行われていますが…」
つい最近のニュースでは、内閣総理大臣は約1年しか任期をせず辞任。現在は5名ほどの議員が名乗りを上げ、選挙活動を行っている最中だった。
教師が国会の働きについて話す中、一部の生徒は耳打ちをしていた。
「そういやお前、誰を支持してるんだ?」
「そうだなぁ…、やっぱり秋葉原のことを考えてくれてる春閣下だな」
「でもあの人、消費税増税に賛同してるんだよ?」
「おいそこ、授業中だぞ。」
職員室では定期テストに向けて教師達が問題の作成などを行っていた。
その時、教頭の机においてあった電話が鳴り、教頭が不在のために近くにいた教師が電話を取った。
「はい、こちら小波中学校です」
「……」
沈黙が数秒ほど続く。
「あの、どちら様でしょうか?」
「…低脳は消え失せろ」
「は?」
一方的に切られた電話と共に大きな爆発が起こる。
教師達は状況を理解できずにいたが、数秒後、あわてて飛び込んできた生徒により、この学校で爆発が起こったことを知った。
「と、とにかく警察に連絡をお願いします! それと生徒達の避難を!」
「り、了解です!」