CRの使い方
軽快な音色が6限目の終わりを告げてから十五分。終礼も終わり私は一息ついていた。
「今日も学校、頑張ったぁ〜」
両手を組んで天井に向かってグッと伸ばした。ここであくびを一つ…
「何が頑張っただよ。5限目の数学以外、ほとんど寝てたじゃん。」
緋花莉が無防備になっていた私のおでこに1発のデコピンを食らわせた。「痛っ!」
おでこを抑えて、ふてくされている私の機嫌を取りに来たのか、緋花莉が珍しく褒めてくれた。
「春香って数学はめっちゃできるよね。」
「まぁね。数学は趣味みたいなもんだからね!」
「他はほとんど寝てた人が言ってもカッコよくないし」
ちょっとした会話を終えた私たちはテキパキと帰宅の準備を済ませて、駆け足で教室から去った。
3年生の教室があるのは、3階。目的地は最上階の6階にある。目的地と言うのは、全国的に見ても、この学園だけじゃないかと思えるくらいにレアな施設。CRが作り出す仮想世界行くための部屋。その名はCR roomというが、CRRと略されることがほとんどだ。正直、学校に必要な施設ではない…
目的地に着いた私達は、互いの目を見て、不敵な笑みを浮かべた。まさにここは聖地なのである!
扉を開けて部屋に入ると、赤い光が順路示してくれていた。案内されたのは、シアタールームのようなスクリーンのある部屋だった。先客も結構いるらしい。
席に座って待っていると、音声と映像が流れ始めた。
「緋花莉。ワクワクするね。」
「うん、そうだね。」
「なんか、緋花莉。冷たくない!?」
「そうかな。ほら、始まるよ。」
「ガーン↓緋花莉が…冷たい…」
『CRの使い方』
こんにちは。新規ユーザーの皆さん。これからご利用いただくCRとは、VR技術を応用して一年前に開発された、新技術です。
これから皆さんには、個室の更衣室でこのようなプラグスーツとマスクを着用していただきます。これらは、仮想世界の非現実的な動きを可能とするために、皆さんの動きを補助する役目を持ちます。
また、これはCRが免許制となっている要因の一つなのですが、仮想世界での出来事は現実世界に直結します。危険なこともあるでしょうが、これらが極限まで皆さんのお身体は保護いたしますので、ご安心ください。
さて、着替えが完了したら、いよいよCRRへと入っていただきます。扉の横にあるタッチパネルを操作すると、扉が開くので、IDカードをお忘れなく。
CRRに入ったら、中央にたち、目を閉じてから、こう唱えてください。
「スタンバイ オッケイ。テイクオフ トゥー ジ アーバンネイチャー。アクセス!」
これで次に目を開けた時には仮想世界、アーバンネイチャーに皆さんはいるということです。
それでは、これにて大まかな説明を終了します…
映像が終わり、赤い光による誘導が再開され、私と緋花莉は別々の方向へ歩みを進めた。更衣室に着いて、部屋の壁に沿って置かれたロッカーを開けると、淡い水色のスーツが入っていた。
「これ、ちゃんと入るかな…」
不安を抱きながら制服を脱ぎ、下着姿になってからスーツを着てみたが、案の定、パツパツだった…
「うわっ!これ…人に見られたら恥ずかしいヤツだ…」
1人で顔を赤くする
言われた通りの手順で作業を進め、CRRに入ることが出来た。念願の空間…
中央に立ち、深呼吸を一つ、また一つと繰り返し、落ち着いたとこで、大きく息をすった。
「スタンバイ オッケイ テイクオフ トゥー ジ アーバンネイチャー」
魔法の言葉を唱え、最後に一言…
「アクセス!」
仮想世界で私の挑戦が始まった。




