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ひとりきりの診察室で



 ノブの大きな声に、看護師が慌てふためきながら診察室に駆け込んできた。「どうしました!?」「なにかあったんですか!?」と説明を求めているが、当の本人は全く聞こえていない様子。先程から俺の顔を食い入るように見ていた。

 …いや、そろそろ質問に答えてやれよ。


 「おーい。ノブー?聞こえるかー?」

 「え、あ、おう。聞こえてるぞ。」

 「ならいいが。そろそろみんなの質問に答えるべきじゃないか?」

 「え?みんな?」

 そう言い、辺りを見渡すノブ。そしてたくさん集まった看護師の顔を見て「いつの間に…」とこぼしていた。そこから気づいていなかったのかよ。


 「そういうことだ。」

 「…なるほど。しかし、なんでまたみんなここに集まってんだ?」

 「お前が大きな声出したからだろ?」

 「そうなのか?」

 自覚なしかよ。それはさすがに無理あるんじゃ…って、本当に今知ったのか?なんだその不思議そうな顔は。


 「取りあえず、説明してこいよ。」

 「あ、あぁ…でも、どう説明すれば…」

 「そこはお前、医者の仕事だろ?」

 「当事者も関与すべきだと思うけどなぁ…」

 「つべこべ言わず行けって。」

 「…しばらく掛かるからな。」

 「あぁ。待ってんぞ。」


そうしてみんなを引き連れて診察室を後にするノブ。1人残された俺は少しの間暇が出来てしまった。

 さて。なにをしておこうか?




 病院は結構好きだ。いやなに、突然ですまないな。今頭整理して思ったこと書いてるだけだから。気にしないでくれ。

 それは夜の病院の灯りだったり、診察室内の消毒液の匂いだったり、注射器などの器具が沢山あるところだったり。器具に関しては使われる方よりも使う方に興味はあるが。

 その中でも、聴診器を使ってみたかったりする。

 どうして耳に当てるだけで心音が聴こえるのか、とても興味深い。金属の丸い先端を左胸(ひだりむね)にあてがい、位置を微調整する様子はみなさんも良くご存知だろう。

 …なんだか少し淫猥な文章に見えなくもないが、決してそういう意味ではないのであしからず。そんなこと考えていないって?みなまで言うな。俺は分かってるから。


 ともあれ、聴診器は一度使用してみたい。

 そして、その聴診器が今。俺の目の前にあるのだ。正確には机の上にあるのだが、まぁ大方当たっているからスルー。

 これは…ノブのだな。それもそうか。ここはノブの診察室なんだし。


 ノブは生真面目というかなんというか…ガードが堅い?ので、なかなか医療器具に触らせてもらえない。衛生面的に考えれば当たり前なのだろうが。注射器ならまだしも、聴診器も触らせてもらえないのはなかなかに堅い。ガードも頭も堅い。将来ハゲんぞ。


 そのノブが俺の目の前に聴診器を置いていった。テンパっていたのが理由だろうが、もしかすると

「実は今までも触らせてあげたかったけど、1度ダメって言ったのに触らせるのはなんかアレだから、テンパったフリをして聴診器を置いて触らせる」

 みたいな(可愛くない)ツンデレかもしれない。いや、そうに違いない。

 じゃあこの後俺はどうすべきか?答えは一択。「彼の気持ちを汲み取らねば」ということじゃないか?


 意を決し、聴診器を手にとった。

 そして、ふと気づく。


 誰の心音を聴こうか…?





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