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二人ならどこへだって

異世界転生書いてみました☆

 春の夕暮れ。


 桜の花びらが風に舞い、歩道を淡い桃色に染めていた。


 制服姿の女子高生二人が、笑いながら帰り道を歩いている。


 白玖彩乃。


 白姫百合。


 幼稚園の頃からずっと一緒。


 クラスが離れても、学校が変わっても、いつも隣には相手がいた。


「ねぇ彩乃。」


「んー?」


「高校卒業したらさ、一緒に旅行行こうよ。」


 彩乃は少し考え、笑顔で頷く。


「いいね。北海道とか?」


「行きたい!」


「じゃあ約束。」


 彩乃は小指を差し出した。


 百合も嬉しそうに小指を絡める。


「約束。」


 二人は顔を見合わせて笑った。


 そんな何気ない時間が、これからもずっと続くと思っていた。


 その時だった。


「……え?」


 交差点の向こう。


 幼い男の子が、ボールを追いかけて車道へ飛び出した。


 信号は赤。


 大型トラックが、ものすごい速度で近づいてくる。


 母親の悲鳴が響いた。


「たっくん!!」


 一瞬だった。


 彩乃が駆け出す。


「彩乃!?」


 百合も迷わず後を追う。


 二人は男の子を同時に抱きかかえ、歩道へ向かって力いっぱい飛んだ。


 男の子は無事だった。


 しかし。


 キィィィィィッ!!


 耳をつんざくブレーキ音。


 次の瞬間。


 世界が白く染まった。


 ---


 ……静かだった。


 音がない。


 痛みもない。


 ふわふわと身体が浮いているような感覚だけがあった。


「……ここ、どこ?」


 百合がゆっくり目を開ける。


 そこは雲の上のような白い空間だった。


「百合!」


「彩乃!」


 二人は同時に駆け寄り、抱き合う。


「よかったぁ……!」


「無事だった……。」


 安心したのも束の間。


「……いや、待って。」


 彩乃は周囲を見回した。


「病院……じゃないよね?」


「うん……。」


 二人が首をかしげた、その時。


「ようこそ。」


 透き通るような女性の声が響く。


 白い光が集まり、一人の女性が姿を現した。


 長い銀髪。


 純白のローブ。


 頭上には淡い光の輪が浮かび、背には巨大な翼。


 神々しいという言葉が、そのまま形になったような存在だった。


「初めまして。」


 女性は優しく微笑む。


「私は、この世界を管理する女神です。」


 二人は数秒間固まる。


「……。」


「……。」


 そして。


「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」」


 白い空間に声が響き渡った。


 ---


「え、えっと……女神?」


「そうです。」


「テレビのドッキリ?」


「違います。」


「夢?」


「違います。」


「じゃあ……。」


 女神は少し申し訳なさそうに目を伏せた。


「あなた方は、亡くなりました。」


 沈黙。


 百合は震える声で尋ねる。


「私たち……。」


「はい。」


「死んじゃったの……?」


 女神は静かに頷いた。


「男の子を助けたことで、二人とも命を落としました。」


 百合は俯く。


 彩乃も何も言えなかった。


 さっきまで笑っていた帰り道。


 旅行の約束。


 家族。


 学校。


 未来。


 全部終わってしまった。


 そう思うと、胸が締めつけられる。


 だが女神は微笑んだ。


「ですが。」


 二人は顔を上げる。


「あなた方は尊い命を救いました。」


「その功績により、新しい人生を授けます。」


「……新しい人生?」


「はい。」


 女神が指を鳴らす。


 目の前に巨大な光のスクリーンが現れた。


 そこには剣と魔法の世界が映し出されている。


 空を飛ぶ竜。


 巨大な城。


 魔法を放つ人々。


 耳の長いエルフ。


 獣人。


 ドワーフ。


「異世界……。」


 彩乃が呟いた。


「そうです。」


「あなた方には、見た目は変わりますが、この世界で生きてもらいます。」


 ---


 百合は不安そうに彩乃を見る。


「彩乃……。」


「うん。」


「私、怖い。」


「……。」


 彩乃も怖かった。


 知らない世界。


 家族とも会えない。


 何が待っているかも分からない。


 でも。


 彩乃は笑った。


「大丈夫。」


「え?」


「百合がいるじゃん。」


 その一言で、百合の表情が少し和らぐ。


「一人だったら怖い。」


「でも二人なら平気。」


 彩乃は手を差し出した。


「また一緒に頑張ろ?」


 百合は少しだけ泣きながら笑う。


「うん!」


 二人はしっかりと手を繋いだ。


 ---


 その様子を見ていた女神は、どこか嬉しそうに目を細める。


「やはり……。」


「あなた方を選んで正解でした。」


「?」


「この世界では、人々と魔族の争いが長く続いています。」


「いずれ魔王討伐の時が訪れるでしょう。」


 二人はまだ、その言葉の重みを知らない。


 そして、その魔王が彩乃の運命を大きく揺るがす存在であることも。


「では、新たな人生へ。」


 女神が両手を広げる。


 純白の光が二人を優しく包み込んでいく。


 百合は彩乃の手を握り直した。


 彩乃も強く握り返す。


「また一緒だね。」


「うん。」


 光がすべてを包み込み、二人の姿はゆっくりと消えていった。


 その先に待つのは、剣と魔法、そして運命が交錯する新たな世界。


 まだ誰も知らない物語が、静かに幕を開けようとしていた。

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