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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
新しい石炭紀-知られている様で、そうでない時代
92/198

II「石炭紀は温暖湿潤」を越えて、大陸移動説がある

「石炭紀は、世界中が暑苦しい沼地の時代であった」

そう思っている人のほうが、むしろ多いでしょう。

ポピュラーサイエンスを越えて、もはや社会的常識に近くなってしまっています。

ところが。

これは19世紀、というよりアルフレッド・ウェゲナーが大陸移動説を打ち出すより前の考え方です。これは元々、高緯度にあるはずのヨーロッパで熱帯的な植物が産出することから、地球は当時世界中が温暖な湿地だったに違いないと考えたためです。

そう解釈している有名どころとしては、たとえばライエルの「地質学原理」が挙げられます。地質学原理では高緯度つまりヨーロッパに現代の熱帯性植物に似た、しかしより巨大な植物がみられるので、当時は高温、湿潤、均一で一様な気候が広がっていたと繰り返し述べています。同書はその後も広く、今日まで影響を及ぼし続けています。現在においてみても特筆すべき書籍ですが、石炭紀の記述に関しては大誤解を広めてしまったといえるでしょう。

さて、アガシーによって氷河期というものがあるという概念が確立され(この人もまた面白い人ですが、後期古生代氷河期については関係しないので深入りしません)、その後インドやアフリカ、南米の石炭紀~ペルム紀前期から氷河堆積物、とくに迷子石が見つかるようになると、少なくともペルム紀には巨大な氷河が南半球を覆っていたはずだと考えられるようになりました。

さらに、南米の熱帯域や北米西部をはじめとして、石炭紀の砂漠堆積物、とくに石膏などが発見されるようになったのです。

ウェゲナーは気候学者のケッペンとともにこれらの情報を統合し、巨大な氷河がみられる南半球高緯度、砂漠が広がる南半球中緯度、そして熱帯性気候が広がる赤道直下、というように世界地図を並びかえました。そして、氷河堆積物と密接に結びついて出現する生物要素として、スースが19世紀に発見していた超大陸ゴンドワナの概念を当てはめました。

実は、超大陸の概念はスースのほうが先ですし、グロッソプテリスやメソサウルスなどの分布パターンに基づいてゴンドワナが一つであったと言い出したのもスースです。

スースはインド、南米、アフリカ、オーストラリアが巨大な陸橋でつながって超大陸を構成したと考えましたが、ウェゲナーは移動した大陸が組み合わさって作る塊がこのような分布を生んだ、と捉えなおしたのです。

もし、スースの言う通り繋がっていて、ペルム紀前期の氷河がインドまで到達したら…氷河が赤道をまたいでしまいます。

このように、ウェゲナーの大陸移動説は、石炭紀とペルム紀をとりわけ重視しています。「大陸と海洋の起源」でも石炭紀の(陸橋説に基づいた)石炭紀地球の図への批判と、新しい石炭紀とペルム紀の世界地図を提示し、大陸移動説についての議論を進めていきます。

現在入手しやすい和訳版ではこの傾向がさらに顕著です(図1が石炭紀の陸橋説に基づく地図になっている)。

ウェゲナーというとペルム紀のグロッソプテリスやメソサウルスについて語る人が多いです。が、彼の議論の中心はあくまで石炭紀やペルム紀の世界は「既存の地図に陸橋を描き足すだけでは説明できない」ことです。

そしてその、説明しえないものの際たるものが、ヨーロッパの熱帯雨林とインドのペルム紀氷河でした。

大陸移動の証拠としてウェゲナーは莫大な知識と文献を引用し、さまざまな時代の証拠を引き合いに出しました。

しかし、その議論の核が何かという点に関していえば、石炭紀~ペルム紀を説明するための大陸移動説といっても…いいくらいなのです。

極論ですけどね。

それも当然ではあります。

なにせ、19世紀から20世紀のヨーロッパ人にとっては、石炭も鉄鉱石も石灰岩も産出する石炭紀こそ、地球史でもっとも重要な時代でしたから。



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