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石炭紀紀行(鱗木SF・改)  作者: 夢幻考路 Powered by IV-7
凍てつく地でも、採集を。
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ブラジロデンドロン

遠目にも、その2種目のリンボクもどきは、まるで異なって見えた。

葉は長く、ぼんやりと、霞がかかったようなのだ。

葉の縁がけば立って、そこが白く光を乱反射するためである。

そして、これもまたひたすらまっすぐで、まったく分岐がない。

もっともよく育ったものでは、直径は50㎝ほどもある。

なるほど、一本一本移植栽培するわけである。

幹の下の方では、葉枕同士がとても離れて、ぽつぽつと点在するだけになっていた。

育ってから幹が拡張していく、ということであろう。


「さっきのがブンブデンドロンで、こっちブラジロデンドロン。どこが違うと思う?」

私は尋ねた。


「…大きいのと葉がけば立ってるのと、あとはうろこ状の部分がちょっと幅広い?葉はこっちのほうが長い」

「うんうん、だいたい正解」

「で…分類には、どこが重要なの?撮影するときにそこ、アップしておきたくて」

「葉枕、あ、さっき説明した菱形の部分ね…の形状と、基部がS字状になった葉がついたままで落葉しないこと、その直上に小舌孔がないことかな」

「小舌孔?」

――じつに目立たない器官が、重要な意味を持っていることがある。

「小舌ってのは、小葉植物の葉の基部にある小さな突起。この有り無しで分類が大きく分かれる」

「…それだけで?」

「そう、でもあるグループとないグループでは、他にも違いがあるから…現生の植物だとミズニラ類とイワヒバ類が小舌をもつ、という点で共通しているという話なんだけどね」

「…うん」

「リンボク類は小舌が入っていた孔があるので、ミズニラ類やイワヒバ類に近いと考えられているんだけど、問題はこのブラジロデンドロンやブンブデンドロンの葉枕には小舌孔が見当たらないことなんだよね。ブンブデンドロンは葉舌がついた葉の化石が確認されているから、いいんだけど。」


葉をむしると、基部にはほんの1ミリあるかないかばかりの、半透明の甘皮のようなものがついていた。

「あった。これ」

「――これ?」

あまりの小ささに、アリアは唖然としていた。

「そう。そうだよ…昨日もらった株だとわからなかったんだよ、あんまりにも小さすぎて…これですよこれ。ほぉ。。。」

私はついつい、そんな挙動不審なことが口から出てしまったことに気づいて、それがばっちり撮られていることに気づく。


――ところで小舌孔の有無を除いてユーラメリカのパラリコポディテス(ベルゲリアとかウロデンドロンと呼ぶ人もいる)と南米のブラジロデンドロンは区別が難しいのだが、全体を見ると全く違っている。

さきほど植えた小苗でも、塊茎状の担根体はあっても、スティグマリア型の胞子嚢穂はなかった。ここにある株を見ても、そうだ。

パラリコポディテスでみられるような、側方に縦一列に並んだ脱落性の生殖枝は見当たらないし、松ぼっくりのような胞子嚢穂も見当たらない。

うーむ、木を見て森を見ず、とはいうが、見てみれば明らかであるなあ。


――と、思ったとき、ふと、不思議なことに気づいた。

雑草がまるでないのだ。

全てがリンボクもどきで構成されている。

「ロドリゲスさん、ここの雑草管理ってどうやってるんです?」

すると爺は、にっひっひ、と笑いを浮かべた。

「企業秘密じゃよ。」

「なるほど、うまく管理されてるわけです」

というと、

「なに、塩を撒いとるんじゃ」

といった。

泥を舐めてみても、しょっぱさには気づけなかった

――が、ブラジロデンドロンの気孔は塩生植物や乾燥地の植物に見られる落ちくぼんだタイプであったなあ、と、ふと思い返す。

「その、被害とかないんですか?」

「塩を入れすぎると成長が鈍るからな、試験区を設けて濃度を変えて、計算して撒いとる。その量は…企業秘密だな」

そういって、また欠けた歯を見せたのであった。




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