第23話 辺境伯領事変
敗北しても尚、シセリア達はわたくしを睨む。そんなに憎まれても困惑する事しかできない。でも、これでもう終わり。
彼女達をこの辺境伯領付近から追い出すだけ。
「もう無駄な争いは止めて下さい」
「なんですって……余所者の分際で! なにが大聖女よ!」
「ええ、なんとでも罵りなさい。けれど、わたくしはそれでも辺境伯領に居続けます。エドワード様が大好きだから」
「……くっ」
悔しそうに唇をかむシセリア達。
エドワード様も槍を向け、敵意さえ向けていた。
「君達はコーンフォース帝国へ歩いて帰るんだ。いいな」
「そ、そんな……」
矛を収め、エドワード様が寄ってくる。
これでやっと先へ進める。
そう思った時だった。
上空から“ポーション”が降ってきた。
う、そ……。
「エドワード様!!!」
「――なッ。爆弾ポーションがなぜ!! フィセル!!」
こちらへ飛び込んで、わたくしを庇うエドワード様。付近で大爆発が起き、吹き飛ばされる。ゴロゴロと地面を転がって、ようやく止まった。
……痛い、あっちこっち打ちつけて痛い。どうなったの、どうして爆弾ポーションが降ってきたの。意味が分からない。
……もしかして、あの三人の他に誰かいたの!?
砂埃が舞い、視界は悪い。
アドニスくんの姿も見えない。
どこかへ飛ばされてしまったの。
「エ、エドワード様……ご無事ですか」
「……くっ」
「……あ! エドワード様、そんな……背中が」
酷い傷。血が滲み、重症だ。
このままでは死んでしまう。
「ふは、ふははははは……油断したな、エドワード!! ざまぁみろ、エドワード!! 我が娘・アンリエッタを殺した報いなんだよ!!」
遠くから現れた男。
少し小太り。目が異常に充血し、明らかに狂気に満ちていた。あれは……もしかして。
「アンリエッタ……そう、貴方がイーグル伯爵なのね!」
「御明察。銀髪のお嬢さん……いや、大聖女フィセル様。そうだよ、そうなんだよ。この私こそがイーグル伯爵様だァ!」
「エドワード様を殺しに来たのね。じゃあ、あの『教会裁判所』の手紙も……」
「あんなものは、お前達を釣る為の“偽装”に決まっているだろう!! こうして『守護』された辺境伯領から引きずり出す為のな!!」
……偽装。そんな、そんな事って。ただの復讐の為に……こんな事を。酷い、どうして逆恨みなんて。アンリエッタは自ら命を絶ったというのに。
エドワード様は何も悪くない。
愛する人を傷つけられ、黙っているわたくしではない。
「ふざけないでください!」
「なんだと」
「もう貴方を許しませんよ、イーグル伯爵」
「ほう? この私を許さんとな? いいか、こっちには“爆弾ポーション”のストックがまだまだるんだ。私はね、魔導具の開発をして成り上がった貴族なんだよ。この服の“ポケット”は魔法でね。このように爆弾ポーションを取り出せる」
ニヤリを不気味に笑うイーグル伯爵は、服のポケットからポーションを取り出した。……そうか、彼がシセリア達に供給したんだ。女性の感情を煽って、利用して……最低な男だ。
「イーグル伯爵、お覚悟を……」




