第21話 槍の誓い side:エドワード
辺境伯領を出発。
と言っても、距離があるが故にまだ領地を出てはいない。その間は、フィセルと閑談を交えた。今日の事、これからの事を――。
今日も宝石よりも綺麗に輝く銀髪が風に靡いていた。手を重ね合わせ、コーンフォース帝国の街並みや人口、どんな民がいて、どんな貴族がいるか一つ一つ丁寧に教えた。
けれど、フィセルはずっと何かが気掛かりのようだった。時折、外を気にして雲行きを伺っていた。どうやら大聖女の力らしい。
その奇跡は未来すら見通すのかもしれない。
「心配かい、フィセル」
「……はい、ずっと胸騒ぎがしているんです」
「紅蓮の槍・プロメテウスに誓おう。必ず守るとね」
オルテンシア家に代々伝わる宝槍。聖槍と同等の扱いを受け、もはや神器に等しい。人を守る思いが強ければ強いほど真価を発揮し、期待に応えてくれる最強の槍。今までの僕にはその信念が足りなかった。だが、今は違う。
「もちろん、信じております」
もう僕は誰も失いたくない。
フィセルもアドニスも必ず守る。
この命に懸けて。
そうして、辺境伯領を抜けた。
荒野が続き……帝国まで半日ほど。けれど、フィセルと一緒なら退屈はない。寧ろずっと幸福。永遠の至福。フィセルと話し合っているだけで僕は幸せになれる。
かつて、僕は妹を失って自暴自棄になっていた時期があった。ひとりぼっちになった僕は、コーンフォース帝国にある屋敷で朽ち果てようと考えた。だが、ある雨の日。
死にかけていたアドニスを拾った。
アドニスは奴隷として取引されていたらしいが、偶然にも魔法の力に目覚めて逃げ出したようだった。けれど、当てもなく彷徨って餓死寸前。瘦せ細って、服もボロボロのアドニスを裏路地で見つけた。
不憫に思った僕は、アドニスを拾った。
――今でもあの安堵した顔は忘れられない。
世の中には、アドニスのように困った子がいるんだと、僕は思い知った。だから、辺境伯領で『農地』を始め、元奴隷の子供や戦災孤児を引き取ろうと考えていた。しかし、そうなる前に『プロセルピナ共和国』の大聖女・フィセルが危険だと風の噂を聞いた。
皇帝陛下の命もあり、あの日は共和国へ向かったんだ。そして今がある。だからこそ、この辺境伯領も守らないといけない。
気づくと馬車が激しく揺れていた。
「……!」
嫌な気配を僕も感じた。
これは微量だが、魔力を感じる。
「フィセル、君を抱える」
「エドワード様?」
「信じてくれ」
「……はい」
フィセルを抱え、僕はアドニスに指示。
「馬車を止めるんだ、アドニス。外に敵がいるようだ」
『了解しました』
だが、次の瞬間には馬車の目の前が大爆発を起きた――。




