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20/22

16歳 命どぅ宝

次回のエピローグで完結となります。

つたない連載をお読み頂いた事に、心から感謝申し上げます。


なお、今回タイトルにした「命どぅ宝」は、我らが琉球王国のうしゅがなしーめー、国王陛下のお言葉の一部です。

感想でご指導頂き、何度も何度もどう書くべきか考えました。でもうちなーとして、あえて詳しい事を書くのはやめました。

私のつたない言葉で書くと、どうしても感情をおさえられないので。


命どぅ宝。命こそ、宝。


どうか、忘れないでください。

「今日も、帰ってこないか」


父さんと母さんがじぃちゃんずに呼び出されて、そろそろ1週間。二人はまだ帰って来ない。出かける時に「用事が終わり次第帰る」と言っていたのに。


「何かあった、と見るべきだろうな」

「勇希にーにー……」


愛良が、不安げな顔で俺を見上げてくる。

駄目だな、式をあげたばっかりの奥さんにこんな顔させちゃ。


「あの二人に何か出来るような奴がいるとは正直思えないけど、流石に遅すぎる。ちょっと凱さんの所に行ってくるよ、凱さんならギルドの情報網を使って、二人に俺達が心配しているって伝えてくれるから」

「……ん」


そっと抱きしめて微笑む。

ようやく笑ってくれた愛良に口付けて、ギルドにむかった。




「二人はしばらく帰って来られないと思うぞ」


凱さんに、父さん達と連絡がとりたい、と声をかけたら、苦い顔をされた。


「どうして?何か知ってるの、凱さん」

「……グリード国の軍隊が、倭の国国境付近に陣を構築した。兵数は3万、火の異能持ちも多く従軍しているそうだ」

「え」

「多分あと1週間もたたずに、倭の国とグリード国は戦争になる。だから、お前の両親は……正一しょういちさんと夏江なつえさんは、しばらく帰ってこない」

「参戦する、って事?」

「ああ。戦なんて、ここ100年位無かったんだがな……。あと、ギルドからも人を出す予定だ。……俺も、明日には発つ」


昔、二人をまだじぃちゃんばあちゃんと呼んでいた頃、家で銃弾をみた事がある。

流石に驚いてこれは何と聞いたら「じぃちゃんの体から摘出したもの」だと言われて更に驚いた。

じぃちゃんは少年兵として、ばぁちゃんは従軍看護師として、沖縄戦を生き抜いた。でも、二人の周囲の人々はほとんど亡くなってしまったと聞いている。


『命どぅ宝』


ぬちどぅたから、命こそ何よりも尊い宝。

平和祈念公園にある平和のいしじに掘られている友人の名前を撫でるじぃちゃんが、よく言っていた言葉だ。

じぃちゃんも、ばぁちゃんも、慰霊の日はかかさず戦没者追悼式に参列していた。俺もお昼ちょうどの黙祷をかかした事は無い。

こっちに生まれ変わった後も、二人は人を殺めた事は無い。倭の国はたとえ賊相手でも、正当防衛で無い限り殺人罪が適用される。もちろん他国でも同様だ。

二人は殺人経歴も正当防衛での殺害経歴も無い。職権乱用だけど家族や周囲の人間の情報は自然と入ってくる。伊達に冒険者ギルドで書類作成の手伝いしてない。

そんな二人に、人殺しをさせる?魔物ならばともかく、人を殺させる?


「させない」

「勇希?」

「凱さん、俺は「クラン・ゴールドキャッスル」の一員だよね?」

「あ、あぁ」

「しかもじぃちゃんずの孫だよね?」

「ああ、勇希、お前まさか」

「俺にも「現在軍議が行われている場所」に行く権利、あるよね?」


頭をかかえた凱さんに、俺が考えている事を説明する。


「相手が真っ正面から戦いに来たとしても、こっちが同じように相手してやる必要なんてないんだよ。

戦わないでも、殺さないでも「勝てる」方法や「無力化する」方法なんていくらでもある」


多分俺は今までにない位、悪い顔をしているだろう。


「農家兼医者なめたら酷い目にあうって、よーくよーく「判らせて」あげるよ、凱さん」

「……今まで時々疑ってたけどよ、勇希」

「ん?」

「お前、立派にあの二人の息子だよ。怖い」


失礼な。

とりあえず即座にじぃちゃんずに連絡をとり、軍議に参加させて貰った。

もし無理だと言ったら二度と口きかないと言った。……凄く効果的だった。




軍議には、十数名のお偉いさんが集まっていた。

もちろん全員転生者じゃないし、ゴールドキャッスルの者ばかりでもない。

それなりに偉いらしい大臣職?の一人が、早速いちゃもんをつけてきた。


「君の噂はかねがね聞いているよ。だが、戦えもせずレベルが100にすら届かない者が、ここでどんな提案をするつもりかね?遊びじゃないんだぞ!」

「では貴方達は、何をするつもりですか。うちの両親を使って殺し合いですか?」

「ゴールドキャッスルの一員ならば、軍事行動にくわわるのは当たり前だろう。

今私達がやるべき事は君の話を聞く事ではなく、すぐにあの軍勢を殲滅するよう君のご両親を説得する事だ。早く帰りたまえ」

「クラン・ゴールドキャッスルにはそのような規定は一切ありませんが」

「っ、この倭の国の重鎮たる者、倭の国を護る為に戦うのは当然だろう!」

「そうですか、ならば聞いて欲しい事があります」


じぃちゃんずにも父さん達にも絶対口を出さないで欲しい、と前もって言っておいた。

散々とめられたが、ここだけは譲れない。


「私は、貴方達がご存じのように転生者で、日本という国の小さな南の島、沖縄で生まれ育ちました。空と海しかない、人口もそれこそ国全体の0.1%にも満たないような、本当に小さな島です。

皆、少々身内びいきな所はありますが、それなりに人当たりはいいですし、一度身内として内側に迎え入れた人間に対してはとても情が深いです。

正直、小さな島であるがゆえに、本当にイロイロやられたんですけどね。それでも、沖縄の人は、先人の方々はこう言うんですよ。

『ちゅんかいくるさりーんだらにんだんが、ちゅんくるすんやにんだらん』

人に殺されたら眠る事は出来るが、人を殺したら眠る事が出来ない。

『命どぅ宝』

命は何よりも尊い宝物である。

そんな教えが、俺の生まれ育った島にはあります。たとえ敵だろうと何だろうと、うちの両親に、俺の家族に、俺の大事な友人達に人殺しをさせ手を汚させると言うなら、俺は一族郎党及び友人一同を連れてこの国を出ます」

「そんな身勝手は」

「自分の手を汚さずそこでふんぞりかえってるあんたは、身勝手じゃないっていうのか!!!」


悪いな、これでもそれなりにダンジョンで戦ってるんだ。

殺気を飛ばす事位出来るんだよ。


「何がお望みか知りませんが、命を奪わずとも兵を撤退させる位は出来ます。やってみせますよ、だが。

もし今度『国の為に』俺の大事な人達を使うと言うなら、貴様の一族郎党全員、一切の医療を受けられず食料や物資を買う事も出来ないようにして差し上げましょう」


農家兼医者の人脈なめんなよ?俺の師匠はあの先生だぞ?

徹底的に根回しして徹底的に排除してやる。


「ひ、ひぃっ」

「さぁ、お分かりになられたのでしたらどうぞご退席ください。今から「軍議」を始めますので」


腰を抜かしへたり込んでいる糞野郎を、控えていた兵士さん達に運び出して貰った。


「さて、じぃちゃんず。一滴も血を流さず相手に大打撃を与える方法があるんだけど、聞いてくれる?」


伊達にオタクやってたわけじゃない。いくらでも方法はある。

書いてきた作戦案を、テーブル一杯に広げた。




結論から言うと、グリード国軍はたった3日で撤退した。

9割以上の兵士が食中毒症状で身動きするのがやっとだし、戦う事自体無理だよね。


「最初、軍議に怒鳴り込んできた時は何事かと思ったんだが」

「流石私達の息子ね、実に立派でしたよ」

「ありがとう、父さん母さん」


俺が提案した事は、実に単純だ。

1つ、睡眠作用のある薬草を焚き、風の異能持ちが交代で常時グリード国軍全体を包むように漂わせる。

2つ、地の異能持ち全員で、国境からグリード国軍の兵糧庫の真下まで地下道を掘る。

3つ、兵糧庫の中にある野菜や肉を、見た目や味は大丈夫だけど実は痛んだものと取り替える。

4つ、2日で効果が無くなるように調合した下剤(ちなみに無味無臭)を水の異能持ち達が水に溶かして小さな水玉にした上で、遠方からこっそりばれないように飲み水として彼らが利用している井戸にたっぷり流し込む。(もちろん水も2日で元通り)

たったこれだけで、軍は壊滅した。

眠気をおこさせ判断力を低下させ異変に気付くのを送らせた上で、実は痛んでいるものを食べる。症状が出て食事がおかしいと気付いた人も、無味無臭の水がおかしいとなかなか気付けない。食事だけではなく水もおかしいのではと思った時には、もう水の下剤効果は消えているから原因が判らない。

正直1週間はかかると思って水の下剤も仕込んだんだけど、早かったな。まぁ真っ先に司令官が逃げ出した時点でこりゃだめだなと思ったけど。

もちろんトドメとして「グリード国軍は倭の国に宣戦布告して国境まで軍で来たにも関わらず何もせず自国に帰った。いったい何がしたかったのだろう」とギルド経由でグリード国内に広めて貰った。一か月後、とうとう革命が起きて国王一族は追放されてしまった。この機会にいっそ併合してしまおうとじぃちゃんずが動いてる。

そしてあのうちの両親に人殺しさせたがってた奴は、グリード国で悪さをして荒稼ぎした挙げ句こっそり奴隷まで買い込んでいた事が判明した。うちの両親に派手に暴れて貰い証拠隠滅したかったんだろうがそうはいくか。もちろん生涯牢屋で暮らして貰う事になった。


「さーて、とりあえず片付いたな」

「勇希にーにー、お疲れ様」

「ん」


事後処理が終わるまで、本当に忙しかった。

久々に妻と幸二人に、癒して貰おう。

県外に嫁いだ今も、6月23日は私にとって特別な日です。

以前安倍総理が追悼式に参列してくださった時、亡くなった私の母と握手してくださいました。

天皇陛下も「日本人として忘れてはならない日」として、毎年祈ってくださり、宮内庁ホームページに6月23日をあげてくださっています。

ですが果たして日本人で「6月23日は何の日か」と聞かれすぐに沖縄の事を思いだす方がどれだけいらっしゃるでしょうか。県外に移住して、6月23日に飲み会(実質合コン)に誘われた時の衝撃は今でも忘れられません。既に私が既婚者だったというのもありますが。

もし読んでくださった方で、沖縄戦について少しでも知りたいと思ってくださった方がいらっしゃいましたら、沖縄を訪れた際にちゅら海や美浜だけではなく糸満の平和祈念公園に一度足を運ばれてみてください。

何故毎年(人気取りの一環かも知れませんが)総理大臣が6月23日に沖縄を訪れるか、判って頂けると思います。なお、地元民の私でも衝撃を受け過ぎる程ですので、一人で行くのは絶対にやめた方がいいです。

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