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14歳 新しい家族、新しい仲間

幸誘拐事件の後、愛良ちゃんはなんと今までいたパーティから抜けてしまった。愛良ちゃんが倭の国で結婚するならお祝いする、と、みなさんこころよく送り出してくれた。

(まだ赤ちゃん時代の愛良ちゃんが頭から抜けないんでせめて結婚はもうちょっと待って欲しい、と心から思うけど最近外堀埋められている気がする)

彼らは元々別の国を拠点として生活しているので、流石に倭の国には残れない、と帰っていった。パーティ人数が全体で十数名ほどだったので、愛良ちゃんが抜けてもすぐに困るような事はないらしい。

更に愛良ちゃんは俺達のパーティにくわわってしまった。記憶を取り戻した時にレベルがプラス77(喜寿で亡くなったんだそうだ)されたらしく、どのみち今までのパーティメンバーと力量が違いすぎて一緒に戦える状態では無かったらしい。


「っしゃ、押さえこんだぞ!」

「幸、行くよ!」

「ばぅぅっ!!」


壁の一也が魔物を押さえつけ、幸と愛良が攻撃をおこない。


「3・2・1……みんな、よけて!」


俺が地の異能で作り出した岩石を上空からぶつけ、トドメを刺す。最近ダンジョンでよくやるフォーメーションだ。


「よっしゃ、魔石げっとー!みんなお疲れ様、特に一也さんほんっと最強の壁!」

「いやいや、愛良ちゃんや幸が攻撃してくれるからだって。それにトドメ刺したのは勇希だ」

「一也が押さえ込んでくれるから、トドメ刺しやすいんだよ。みんなじっとして、今怪我を癒すから」

「わふわふぅ」


全員の怪我を癒し、上の階に戻る為のゲートをくぐった。

一也がギルドに魔石を提出してくる間、俺達は先にギルド内にあるカフェに入って待つ。

一也は商人スキルを持っているから、こういう時のやりとりは全部任せっぱなしだ。悪いとは思うけど、その分は分配の際に調整している。


「やっぱり攻撃系異能保持者がパーティに欲しいね。俺の異能じゃ、どうしてもすぐ攻撃出来ない。

俺自身が、攻撃系の操作得意じゃないってのもあるけど。」

「あそこまで出来たら十分だと思うけど……やっぱり、もっと深い階に行くなら、火の異能者は必須だと私も思う」

「どうしても、攻撃となると火の異能者に威力では誰もかなわないもんね」

「わふ~……」


火の異能は、地水火風光闇の6異能の中で、もっとも攻撃した時の威力が高い。どれ位高いかと言うと、さっき4人がかりでやっつけたゴーレムを1撃で消し炭に出来るレベルだ。

だけど、いや、だからこそ、火の異能持ちを何処のギルドも欲しがっていて、なかなかフリーの冒険者はいない。


「無いもの強請りだって判ってるけど、どこかにいないかな、フリーの火異能持ち。プラスで光異能持ちだとなお可」

「小父さんじゃあるまいし、いないってそんな人」

「だよね」


うちの父さんはまさに火と光の異能持ちだ。火で敵の頭をピンポイントで焼き殺し(やろうと思えば全身焼けるけど素材がもったいないからやらないそうだ)自分の全身を光で包んで、出来た怪我を瞬時に癒しながら敵を殴り殺す事も出来るらしい。

ちなみにうちの母さんは水と闇の異能持ちで、水を氷に変化して針状にして敵の心臓を貫いて殺すのが得意らしい。素材をとる時は基本母さんがトドメを刺すそうだ。なお、闇の異能で全身を包み特攻も出来るんだって。

うちの両親である「爆炎王」と「氷結姫」は、たった二人で100頭以上のドラゴンの群に突っ込んで全滅させた事もあるんだとか。ナニソレコワイ。


「俺がもうちょっと、攻撃目的で異能使いこなせればいいんだけど」

「今でも十分勇希にーにーは頑張ってるよ。気にしなくて大丈夫だって」

「ん、ありがと愛良ちゃん」


俺は異能での攻撃が上手くできない。父さん母さん曰く、もともと農業や家事で異能を多用している分、「異能はそういうものだ」という固定観念が出来てしまって応用が利きにくいんだそうだ。

ちなみに俺と逆で、父さんは火をつけようとして積んであった薪を全部炭にした事があり、母さんは氷を作ろうとして台所全体を凍らせた事がある。片づけが非常に大変だった。


「それにしても、一也遅いな」

「そうだね、いつもはそろそろ帰って……あ、一也さーん」


席に着いた一也の顔は、蒼白だった。

蒼白で、更に何か凄まじい怒りを強引に抑えこんでいる感じだった。それなりにつき合い長いから判る。


「……待たせて、悪い」

「いやそれはいいけど、どうしたの、一也」

「一也さん、何かあったの?」

「わふぅん……」

「ああ、いや、……何でも、と言っても無理か」

「出来れば聞かせて欲しい」

「私も」

「わぅっ!」

「はは、……ありがとう」


頼んだドリンクを飲み終わると、ついてきて欲しいと言って一也が歩きだした。途中花屋で白一色の花束を買って、着いた所は合祀墓。


「勇希。今まで何も聞かないでいてくれて、ありがとな」

「ううん」

「ここに……俺の妻が眠っている。眠っていると、思っていた」


ぽつりぽつりと、一也が語り出す。

前世で、自分達と一緒に車に乗っていた従姉妹がいた事。

従姉妹は両親から虐待を受けていて、自分の親が養子縁組をして引き取った事。

事故が起きたのは、家族で役所に一也と奥さんの婚姻届を出した帰り道だった事。

従姉妹の魂が傷ついていて、罰則転生しか出来ないと言われ、一人で行かせる訳にはいかないと両親と一緒に罰則転生をし生まれ変わった事。


「だけど、そん時俺は愛良ちゃんと同じで魂のレベルが足りなくてな。俺と妻が互いの存在を知るまで俺達全員の記憶が戻らない。という転生条件を呑んだ。

俺が妻を思い出したのは、15歳だった。新聞に載っていた妻の写真を見たんだ。

ドラゴンの群に襲われた村を最期まで護り抜き、ドラゴンと相打ちになった勇敢な冒険者として」

「そん、な……」


愛良ちゃんが息を呑む。

俺も言葉が出なかった。


「絶叫した。

信じたくなかった。ようやく思い出せたのに、もう最愛の女がいないなんて思いたくなかった。

ドラゴンと戦った場所まで行った。何も残ってなかった。ただ周囲がクレーターになっていて、形見ひとつ無かった。そもそも俺と妻の……美香みかの繋がりを証明出来るもんもないから、形見があっても貰い受ける事なんて出来なかっただろうけどさ。

凱の手助けで、この合祀墓に名前を刻む事は出来た。だが、それだけだった。それしか出来なかった。

だが、今日、凱に聞いた。『あの騒動は作られたものであった可能性がある』と。」

「なっ!?」

「な、何それ、酷い!」

「ドラゴンに襲われて全滅したのではなく、北のグリード国奴隷商による焼き討ちだった可能性があるそうだ。

ドラゴンの仕業にみせる為、わざわざ略奪後周囲全部を炎の異能で焼き払い、炎姫の二つ名で呼ばれていた美香を捕らえ連れ去る為に死亡記事まで大々的に出した。

もしそれが事実なら、あいつは、美香は隷属の首輪をはめられグリード国で奴隷として使役され、使い潰された可能性が非常に高い。

あれからだいぶ経っている、まだ生きているかもしれないなんて希望的観測はもたない。でも、それでも、俺はあいつの夫だ。

悪い、勇希、愛良ちゃん、幸。俺をパーティからはずしてくれ。どうしても、やらなきゃならない事が出来た」

「待ってよ、一也。何で一人で行こうとするのさ」

「勇希……」

「私達、仲間でしょ?一也さん。一緒に行くよ」

「愛良ちゃん……」

「わふぅ」

「幸、お前まで……ありがとう」


馬鹿な事を言う一也の足に、すりすりと幸が懐く。

全員で行って奴隷商をぶちのめそう、と決意したその時だった。


「か ず や く ん。その話、よーく、よーく、聞かせてはくれないかい?」

「か ず や く ん。ちょっと、小母さんにも、聞かせてくれないかしら?」


極炎王と氷結姫が光臨した。俺達に逆らう術は無かった。

それからたった2日後、グリード国にて違法な取引をやっていた奴隷商が全員捕縛され、美香さんを陥れた主犯は「お好きにどうぞ」と隷属の首輪をはめられリボンを巻かれて當間家に届けられた。

ねぇ、じぃちゃんず。俺、じぃちゃんずが倭の国を統治している一族のツートップだって初めて知ったし、俺が王族の一員だって事も初めて知ったし、更に俺達が所属しているクラン・ゴールドキャッスルが倭の国王族直属のクランだって事も初めて知ったよ。


「美香!!」

「一也、一也ぁっ!!」


美香さんも無事、一也の元に帰ってくる事が出来た。

なんと剣闘士として賭け試合で戦わされていて、連戦連勝を続けて生き延びていた。下世話な話だけど「そういう」被害は無かった(一也に頼まれて診察した)本当に良かった。

二人は即座に籍を入れ、身内だけで式をあげた。俺達も参加させて貰った。愛良ちゃんがブーケをゲットしていた。


「これからよろしくお願いいたします、皆様」

「よろしくお願いします、美香さん」

「よろしくお願いしまーす!」

「わふわふ♪」


ゴタゴタが片づいた後、美香さんは俺達のパーティにくわわった。壁の一也、アタッカーの愛良ちゃんと幸、後衛攻撃の美香さんと後衛補助治療の俺。

十分すぎる程補強も出来、10階以降に降りる事も増えた。


「次は私が……」

「愛良ちゃん?」

「なんでもなーい」


なんだか更に外堀埋められた気がする。

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