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10歳 初めての二年参り

※作中で使用している民謡「じんじん」に関しては、著作権消滅(作詞作曲)の確認をとり、更になろう運営に問い合わせ、使用に問題がない事を確認してあります。

なお、今回も作中に沖縄でしか通用しないような言葉があるので、後書きで一通り説明しております。ご了承ください。

「うわぁ……」

「人酔いしてねぇか?」

「ん、大丈夫……凄いね……」


一也に誘われて、初めて深夜に外出した。


「まぁ、たまにはいいだろ、ダチ二人で二年参りってのも」

「うん!誘ってくれてありがとう、一也」

「気にすんな」


いつもは日中に来ていた近くのおっきな神社に、今年は初めて二年参りする。

凄まじい人、人、人、で(人以外の種族も中にはいるけど)自分一人だと身動きがとれず、一也に背負われて現在移動中だ。


「後でおみくじひいて、お守り買うか。あ、ついでに出店も廻って行こうぜ。眠くなったらちゃんと言えよ?」

「ん、ありがとう。今日は昼に軽く寝ておいたから、今の所大丈夫」

「そうか、ならいいんだが」


1時間位かけて、ようやくお参りが終わる。今年も家内安全無病息災を祈念しておいた。


「ぎゃあああ、マジかよっ」

「ま、まぁ、大凶は一番悪い状態だから、これ以上悪い事は起きないって。でも気になるならこうしよう」

「勇希?」


大吉だった俺のおみくじと、大凶だった一也のおみくじを二枚かさねて折りたたみ、一緒に樹に結ぶ。


「俺の大吉、半分わけてあげる。そうしたら吉位にはなるだろ?」

「勇希ぃぃぃぃぃ」

「だーもうこれ位で涙ぐむなって」


抱きついてくる一也をいなしつつ、授与所へ向かう。


「うわー、色んなお守りがある」

「ここはお守りの種類が多いことで有名だからな」


びっちりと色んなお守りがあって悩む。凄く悩む。

とりあえず買う場所に行く前に、上に貼られているお守り一覧?みたいなものでどれを買うか選ぶ。


「あ、あれ可愛い!」

「お?どれだ、ってあんなもんまであるのか」


色々悩んで、結局父さんと母さんに身代わりお守り、幸にペット用のお守り、じぃちゃんばあちゃんずに健康祈願のお守り、自分用に開運厄除けお守りと、あとひとつお守りを買った。一也は両親に身代わりお守りを買っていた。なんだかんだ言いつつ大事にしてるよね、ちゃんと。


帰りに出店をまわり、綺麗な色の綿あめをお土産に1つ買った。流石に眠くなってきた俺を、一也がまた背負ってくれる。


「かずや」

「ん?寝てていいぞ」

「ちがう、これ」


買った御守りを、ひとつ。一也の目の前にぷらんとぶら下げる。

小さな熊手の形をした、商売繁盛お守り。


「とって」

「お?おお、どうしたこれ」

「かずやに」

「俺に?」

「ん、おまもりは、ひとからもらったほうがこうかがあるってゆーし……かずや、しょうばいしてるから、これがいいかなって……」

「勇希……」

「かずやに、おれのだいじなしんゆうに、たくさんたくさんしあわせがおとずれますように、って、ちゃんとおいのりしてあるから、もらって」

「……おう、ありがとう」


受け取ってくれたのは覚えている。

でも結局そこまでしかもたなくて、一也の背中で眠ってしまった。




「全く……お前は、どんだけ人の事ばっかり考えてるんだよ」


勇希の鞄に、俺が買った御守りをひとつ入れておく。必死に頑張ってるこいつには不要かも知れないが、学業お守りを買っておいた。

努力が必ず実を結ぶとは限らない。それでも、こんだけ頑張ってるんだから、ちょっとくらい神様だって力貸してくれるだろ。


「小父さん、小母さん、ただいまー」

「お帰りなさい、一也君。……あらあら、勇希ったら気持ちよさそうに寝ちゃって」

「ありがとう一也君、どうやら相当楽しかったようだ」

「お帰り一也、ちゃんと人混みから護ったか?」

「お帰りなさい一也、お疲れ様。ちゃんと勇希君の言う事聞いた?」


上から小母さん、小父さん、親父、お袋だ。


「お袋、一応肉体年齢は俺もう26なんだけど。あとついでに精神年齢、勇希と同じなんだけど」

「年齢なんて関係ないわ、あんたより勇希君の方が千倍しっかりしてるわよ」

「ぐぅ、言い返せねぇっ」


勇希を傍のソファに寝かせ、布団をかけてやった後、親父達の酒宴に混ざった。

みんないるのに部屋に帰すのは、何だか可哀想な気がして。


「うっわ、すげぇ、これ全部小母さんが?」

「半分以上は勇希よ。あの子私より料理上手だから」

「うちの勇希は何時でも嫁に出せるな」

「いやいや小父さん嫁に出すんじゃなくて嫁を貰えよ」

「だが一也君、勇希以上の嫁さんスキルを持っている女性、いるか?」


周囲が一気に静まり返る。


「家事全般完璧で、料理も美味くて、仕事もばりばり出来て、更に人当たりもよくて優しくて穏やかで可愛くて……非の打ちどころがないわね勇希君」

「そこらの女じゃ、まず勇希君に勝てねぇな」

「……そもそも恋人がいない俺が言う台詞でもないけど、でっかくなったらどうにかなるってきっと。むしろ家事料理駄目だけど強くてたくましくて腕っぷしがよくてバリバリ稼いでくる、男勝りな女とかが向いてるんじゃねぇか?」


りんがくをつつき、魚天ぷらを喰い、しまーを呑みつつどうにか心友の為に言葉を並べる。


「そんな強すぎる娘は……性格も相当強くなりそうで……」


小母さんの一言でまた空気が元に戻ってしまった。


「お、小母さん、ちょっと勇希の三線借りるよ」


場の雰囲気を変える為に、一曲披露する事にした。


じんじんじんじん さかやぬみじくわてぃ (蛍蛍、酒屋の水を呑んで)

うちりよー じんじん (落ちて来い蛍)

さがりよー じんじん (降りて来い蛍)


話をそらし全員を酔い潰すまで頑張った。俺超頑張った。

だからそんな冷たい目で見てやるな、勇希。




翌日。ソファから起きると、周囲が死屍累々の有様だった。

酒瓶が転がり作っておいたものは全部喰い散らかされ、親4人がテーブルに突っ伏して寝ている。


「お、起きたか勇希、おはよう」

「おはよう、昨日はありがとう……そしてナニこの有様」

「悪い、ちょっと酒を勧め過ぎた」


唯一元気そうに起きていた一也が、周囲を片付けつつ一人一人抱き上げて寝室に運んでくれた。(小父さん小母さんは客用寝室に運ばれていった)


「全くもう……良い年こいて何やってるんだようちの両親」

「まぁまぁ、そう言ってやるなよ、正月なんだしさ」

「一也優し過ぎ」

「いや俺の所為だから。あ、畑の世話と家畜の餌やり、やっておいたぞ」

「うわごめんほんとありがとう、じゃあ何か作るよ」

「お、さんきゅ。じゃあその間に風呂借りていいか?」

「ん、着替えはいつもの所にあるから」

「おー」


よく泊まる(だいたい週に1回は泊まってるんじゃないだろうか)當間家の皆さんは、我が家に専用の衣類棚がある。客用寝室もほぼ當間家の皆さん以外使わない。もう客用じゃなくて當間家用寝室でいいんじゃないだろうか。

正月料理が喰い散らかされたので(重箱も空だった……一生懸命作ったのに……)仕方なく冷蔵庫をあけて食材を確認し、ちゃっちゃと朝食を二人分作る。両親と小父さん小母さんには、起きたら中身汁でも飲ませておこう。確実に二日酔いだろ、あれは。


「簡単なもので悪いけど」

「うわー、すげぇ」


出汁巻き卵、納豆、焼き鮭、ほうれん草のおひたし、中身汁、麦ご飯。

ちゃっちゃと作ったんで本当に簡単になっちゃったけど、美味しそうに食べてくれる一也に嬉しくなって、俺の箸もすすむ。


「……なぁ、勇希」

「ん?」

「昨日、小父さんが『勇希以上の嫁さんスキルを持っている女性はいない』っつってたんだけど、今しみじみ俺もそう思う」

「いやむしろ俺結婚する気ないし」

「そうなのかよΣ」

「んー、ぶっちゃけて言えば女性に夢が持てない」

「……まぁ俺も多分独り身だろうどさ。じゃあいっそ、老後はうちの両親も入れて6名で生活するか?」

「あ、いいね、それ。頑張って稼いできてよ?」

「おう、任せろ」


一也の恋愛関係は、一也が話題に出さない限り聞かない事にしている。何かあったんだろう、とは思うけど。

年に一回、白一色の花束を持ってふらりと何処かに行く姿で、十分内容は判るから。


「ありがとな、勇希」

「俺こそありがとう、一也」


二人で朝食を食べ、正月くらいは良いだろ、と言う一也に誘われて、思いっきりゲームをした。ちなみに両親と小父さん達が起きてきたのは昼をかなり過ぎた頃で、全員二日酔いで潰れていたんで仕方なく酔い醒ましを作ってあげた。

もちろん、良い年なんだから酒量の限界くらい見極めるべきだとお説教もしておいた。

りんがく=田芋を潰して作るお祝い料理。個人的には栗きんとんに味が似ていると思う。

魚天ぷら=沖縄てんぷら。県外の人が見ると「フリッター」と高確率で言われる。衣にもしっかり味がついていて美味しい、沖縄のファーストフード。

しまー=沖縄の地酒、泡盛全般をさす。でもたいていのうちなーんちゅは銘柄で泡盛を注文する。なお、とある居酒屋では蛇口からみかんジュースならぬ蛇口から泡盛がガチである。行った時感動した。ただし作者はうちなーんちゅにあるまじきレベルの下戸の為、友人が蛇口をひねり楽しげに呑むのを指をくわえてみていた。

優しい友人ずは作者に蛇口をひねり泡盛の水割りを作る権利をくれた。あれ、楽しんで作っていたけど、もしや単に水割りを延々と作らされていただけじゃ……?(笑)

中身汁=沖縄の伝統料理で、モツのカツオ風味吸い物。行事の度にモツをがっしゃがっしゃと大量に洗う。なお、本家と呼ばれる一族内直系の家では、この中身汁を作る為だけに給食センターか!と突っ込みを入れたくなるような子供が入れるレベルの鍋(シンメーナービと言う)と専用コンロがある(ガスボンベつき)うちの本家にもある。

なお、その鍋から片手鍋をお玉代わりに使い、カレーが10人前くらい作れそうな両手鍋にうつして客一人一人ごとに温め提供する。

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