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接近遭遇


 宿屋の受付カウンターから奥の廊下を行くと食堂、階段を上がると客室になっている。

 うんうん、大体こういう構造って似通ってるよね。


「食事は夕食と朝食がついてるよっ。飯時になったらおいでな」

 女将さんが、私の背中に声をかけてくれた。

「かたじけない」

 振り返って頷き、さて、と考える。

 恐らく二階の客室のどれかにルーナたんが眠っている。

 彼女は朝まで目が覚めないはずだから、二階をうろついた所で出会えはしない。

 つまり私は朝まで自由行動なわけだ。

 さて、何をしよう?


「……ふむ」

 まずは路銀作りのためにも、当初の予定通りデザート作成を試してみるべきだろう。

 客室でやれば目立つこともないはずだ。

 私が一つ頷いて階段を上がり始めたその時。

 上の方からガチャッという、扉の閉まる音が響いた。


「――なぁ、本当に医者に連れて行かなくて大丈夫なのか?お前だって専門に勉強したわけじゃないだろ?」

「専門に勉強したわけじゃなくても、精霊の声を聞けば分かる。彼女は眠ってるだけだよ、ジャン」

 おおぅ!

 ソル君とジャンの声!

 見上げるとその後ろには背の高いディーノさんのおでこまで見えるではないかっ!

「つってもなぁ……」

 渋るジャンを置いてこちらに歩いてくるソル君。


「明日、目覚めなければ医者を呼ぼう」

 突っ立ったままのジャンの肩をポン、と叩いて歩き始めるディーノさん。

 くあぁぁぁっ!

 そのポン、この目で美味しくいただきましたぁぁぁぁ!!

「――ん?ごめんね?」

 ボーッと立ちすくんだ私の隣を、少し怪訝そうな顔でソル君が通り過ぎていく。


 な、なんだこの王子様!?

 ソル君ってこんな美形キャラだったんだ……。

 カクカクの二頭身では顔立ちまでは分からなかったよ……。

 ルーナたんは心の目で見てたから美女だって分かったけどね!

 ソル君はさらっさらの金髪を長く伸ばし、左肩で緩く結んで垂らしていた。

 目は真っ青。

 明らかにザ・王子様っていう見栄えだ。

 ある意味、冷たい美貌とも取れる。

 あまり表情がなさそうな感じ。

 美貌過ぎて女性は遠巻きに見守るしかないって感じだよねぇ。


「……ラビウサ族か……久しいな」

 ディーノさんが通り過ぎざまにポン、と私の頭に手をそっと乗せて撫でていってくださった!

 なんのご褒美?

 私、あなたを瀕死に追い込んだプリンなんだけどなんのご褒美なの?!

 ディーノさんは左目に大きな傷を負った、隻眼の剣士だ。

 黒髪に黒い目。

 剣士らしくもちろん髪は短く刈り込んでいる。

 ポツポツと白髪が交じっているのがまた良し!

 頬に入った縦の皺がものすごくカッコいい。

 ディーノさんなら無精髭も似合うだろうけど、今日は綺麗に剃ってあった。


「ラビウサ……いたんだ、ホントに」

 なぜか衝撃を受けたようなジャンが私をガン見している。

 ちょぉっとぉぉぉ?

 なんでジャンがいかにも女子ウケしそうなやんちゃ系イケメンなわけ?!

 ……ジャンのくせに生意気だ……。

 私の中で奴は永遠の悪ガキだったのに、しなやかな動きとか、ちらっと覗く胸元が男の色気を醸し出している。

 くそぅ、生意気だぁ……。


 ジャンは茶髪に茶色い目。

 優しそうな垂れ目に騙されてはいけない。

 こいつは何人もの女の子を泣かせてきたワルい男なのだ。

 ルーナたんをモンスターからだけではなく、こいつからも守らねば……!

 こいつのつんつん立った髪型といい、シーフらしい体にぴったりした服装といい、いかにも成熟した女性にモテそうだ。

 あぁっ、大人って不潔っ!

「――なんで俺、睨まれてるんだ……?」

 戦闘力皆無なラビーの視線に怖じ気づいたようにそそくさと奴は去って行った。

 ふっ、チョロいな、あいつ。



 

 ふ、ふふふふふふっ

 ふふ、ふはははははっ

 ふわははっはははははっ!


 ついに、ついにBF6の勇者達をこの目に収めたよっ!

 階段に蹲ってピルピルと、抑えきれない喜びに震えていた私だが、ふととんでもないことに気づいた。

 あいつら、まさかルーナたんと同室に泊まるつもりじゃなかろうな?

 ルーナたんは月の巫女で、あっち()では王女候補として大切にたぁ~いせつに育てられたプリンセスなのだ。

 そのルーナたんとむくつけき男三人がまさか同室なんかではないだろうなぁぁ?

 ”看病”とかいう言い訳は聞かないよ?

 むしろ黙って寝顔を見ただけで重罪だよ?!


「っと、忘れ物、忘れ物~」

 私の側を、足音も気配も立てずにシーフが風のように走って階段を駆け上っていった。

 び、びびったぁ……!

 ジャンはさっき出てきた部屋の隣の鍵を開けて入っていった。

 うむ、杞憂なようで何よりである。


 私は何事もなかったように階段を上り、ルーナたんの向かいにある部屋の鍵を開けた。

 シンプルな木目調の部屋。

 ベッドに小さいクローゼットと、小さな洗面台。

「……うむ」

 これぞBFだよね!!




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