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レベリング


 セト様意地悪説を支持する理由は他にもある。

 勇者達の戦いの巻き添えにならないために、私は少し離れてついて行ってるんだけど、その私にサンダーバードは襲いかかってこないのだ。

 最初は、もし襲いかかってこられたら二つのパターンを用意していた。


 勇者達が戦闘中でこちらに気づいていない場合はプリン化して撃退、彼らにすぐ助けを求められる場合ならラビーのままダッシュで彼らの元へ。

 サンダーバードの電撃を一撃でも食らうと、激弱なラビーは瀕死だ(というか死去すると思われる)。

 だからこの判断には素早さが求められる。


 アクションゲームが苦手だった私だが、今は自分の動体視力を限界まで解放させて挑む時だ!!と意気込んでいたのに、フワッと現われるサンダーバードは一直線に勇者達に向かっていく。

 なんだろう、この、仲間外れ感……。

 いや、結果オーライだし、近くにいる私の頭に激突してこないならそれはとてもありがたいことではあるんだけど。


「そこを右でござるよっ!!」


 だから安心して、後ろから進路を指示できる。

 17階、18階を無事に踏破した残りの1階である19階では、巨石を動かしてスイッチを起動しなければ20階に続く小部屋の扉は開かない。

 その巨石を軽々動かしているのは……ジャンだ。

 ディーノさんとソル君はジャンの後ろでゆったり構え、ルーナたんは手伝わなくていいのかソワソワしながらジャンを窺っている。


 ルーナたんあのね?

 軽そうに見えるけど、アレって重いこと知ってるよね?

 ルーナたんの手伝いは全然要らないからね?

 私の指示に応え、高速で移動していく巨大な石版。

 ゲームではカーソルの反応が遅くてゆっくりゆっくりしか移動できなかったものが、小走りぐらいの速度でずんずん移動している。

 その合間に鳥を倒していっている感じだ。




 ……そう、勇者達はレベルアップしていた。

 主に原因は性格の悪い鳥のせいだろう。

 こいつらがバンバン襲ってきてくれているので、奇しくもこの辺の階はレベル上げに最適な階になってしまったのだ!


「なぁソル。ちょっと最近余裕でこいつら倒せるようになったよな?」

「……分かった。言いたいことは分かった。……でも、あまりエーテルを浪費したくないんだけれどな」


 この会話が18階でなされた時、私は最初、なんのことだか分からなかったのだ。


「小休憩を頻繁に入れよう。ラビー、材料はまだあるな?」


 ディーノさんにおやつの材料を確認された時点でも、私はまだ分かっていなかった。


「あるけど……どういう意味でござる?」


 首を傾げる私の前で、勇者達――主に脳筋組は得々として語ったのだ。


「ここって戦闘効率いいだろ?」


と!

 そう宣言して勇者達は平均レベルを40後半にまで上げたのだった。

 18階で。

 セーフゾーンとの境目で戦闘し、ちょこちょこ休憩を挟んでまた戦闘。

 こんなお坊さんの滝修行みたいな苦行に、プリンセスであるルーナたんがつき合ってくれたのを、私は感嘆せずにはいられない。


 ……え?私?

 ……邪魔だから座っとけって階段に座ってましたが何か?

 座りすぎてお尻が痛いなんて愚痴は死んでも言えないな、とは思ったけどさ。


 まぁね?

 確かに、ゲーム中盤でのレベル上げの場所ではあるんだよ。

 でもね、現実的にさ、絶世の美少女連れてそんな苦行しようとする?

 ソル君もさ、最大限ルーナたんを庇ってはいるんだけど、やっぱり体力的な問題できついじゃん?

 鳥の攻撃から身を躱したり、ロッドを振ったり、呪文を唱えたり、戦闘中にならなきゃいけないことは多い。

 普通に腕振ってるだけでも疲れると思うんだよ。

 それなのにルーナたんは愚痴も言わずに、息を切らしながらニコッと笑うんだ。


「大丈夫、まだ平気だよっ」


って!

 この……っ、この、脳筋共めっ!!

 少しは美少女の体を気遣え!!

 プリンセスを敬え!!

 ……かくして彼らはレベルを10近く上げ(確認は階段の影からプリン化して行った)、意気揚々と冒頭の19階に挑むことにしたのだった。




 やはり、レベルが10近く違うと、雑魚戦が格段に楽になる。

 今では時々アビリティの無駄打ちまでしながら鼻歌交じりで鳥を倒せるようになった勇者達。

 根性悪い鳥が、飛んで火に入る夏の虫並みに諸行無常的な経験値の肥やしに見えてしまう19階。

 ここに来てついに、勇者達は巨石の仕掛けを解いてとある小部屋の扉を開いた。


 ――ジャジャ~ン!!

 避雷マント~!!

 ついに、ついにゲットしました!!

 直線距離で行けば半日前には入手できていたであろう避雷マント。

 昼食と夕食まで無駄に費やしてようやく手に入れた避雷マント!


 ……さようなら、サンダーバード。

 君達のこととルーナたんの献身は忘れない……あとついでに脳筋な勇者達のこともな!


「精霊王様と戦う前に、睡眠を要求するでござる!!」


 ルーナたんは限界だと見た!

 二日ぐらい徹夜しても全く堪えない脳筋と、繊細な美少女の体は違うのだ!

 ついでに私も眠い!!


「そうだね。ルーナ、よく頑張ってくれたね。今日はここで休もう」


 慈愛の籠もった目で微笑うソル君。

 その眼差しにちょっと頬を赤らめるルーナたん。

 ……ほほぅ、順調そうですなぁ!


「センセイもお疲れ。……つき合わせて悪かったな」

「いや、まずはルーナたんに謝れでござるよ。美少女に気を遣うのは鉄則でござろうが」

「――鉄則に従ったんだけどな」


 ??


 思わずジャンと見つめ合った。

 ……背筋にゾクッと寒気が走った。


「――警報!!変態警報!!」


 サカサカッと、ソル君と和やかに話しているルーナたんの背中に飛びついた。


「――この馬鹿ウサギ……!!」


 ソル君の呪詛は効かない。だってルーナたんが全部浄化してくれるからね!


「ラビーちゃんどうしたのっ?」


 ルーナたんの抱っこに癒やされつつ、私はまたもや首を傾げるのだった。

 ――ジャンってあんなキャラだったっけ?と。




読んでくださってありがとうございます!!

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