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捧げ物


 まずエラクレスは手にした炎の棒で殴りかかってきた。

 いかにも重そうに、照準も甘く大ぶりされたそれを、ソル君が軽々と避ける。

 いったん後ろに下がったエラクレスが、

「こんのっ、ケダモノ共がぁぁぁっ!」

と言いながら再び殴りかかってくる。

 次の相手はジャン。


 というか、ケダモノなのはお前だよ、と言いたい。

 わざとギリギリで避けるジャン。

 何だろう、アレ?

 楽しんでいるのか馬鹿にしているのか。

 ……たぶんアレだな。馬鹿にしてるな。


「っざけんなよっ、俺の本気を見せてやるっ」

 そうして魔法の詠唱。

 まぁあいつの魔力は弱いから、ちょっぴりの火傷ですむだろう。

「いけっ、ファイア!」

 声の割に小さい火の玉がヒョロヒョロとディーノさんの方に飛んでいって、ディーノさんが素早い腕の動きで物理的にかき消した。


「っ今でござるっ!ジャン、盗め~!」

 私がラビウサにしては野太い声でジャンに活を入れた。

「ようやくかっ」

 跳ねるような声で返事をしたジャンは、超高速でエラクレスに近づいた。

 目にも残像しか見えなかった。

「悪ぃな」

 そうしてジャンは、白い布きれを見事に盗んで戻って来た!!


「ぃよしぃぃっ!褒めてつかわすでござるっ!」

「で、もう容赦しなくていいかな?」

 喜びに燃える私に、ソル君の冷め切った声が響いた。

 ブリザーデスト!

 冬の嵐がソル君の背後に見える!

 だ、大丈夫だよ、ルーナたんには何にも聞こえてないから!


「……殺しちゃ駄目でござるよ?」

「――分かった」

 ソル君が据わった目で、エラクレスに向かって歩き始めた。

 お~い、カーリーお姉様はお薦めしないよ~!

 



 結論。

 追い剥ぎできないか考えていた、エラクレスの氷耐性装備だったが。

 悲しいことに、ソル君の召喚によってボロボロになってしまった。

 氷耐性の分、カーリーお姉様の火には弱かったようだ。

 炎の杖も、木のためか焼け焦げてしまっていた。


 くすん。

 悲しい。

 ソル君の馬鹿。

 恋に盲目なへたれ男め!

 まぁそれはともかく、ルーナたんの防具である、うさ耳フードが無事に盗めたのは喜ばしいことである。




 このフードは、物理攻撃に対する回避力を大幅に高め、なおかつ装備することで装備者の精神力を上げ、さらにはルーナたんに状態異常回復魔法のリカバーを覚えさせてくれる。

 今の時点で覚えられるのは非常にメリットが大きい。

 なんせ毒だって石化だって睡眠だって治してくれるからね!

 スロウリーはアクセルで上書きするしかないけど。


 それにしてもエラクレスはこのうさ耳フードを何に使うつもりだったのだろうか。

 もしかして、ルーナたんに裸うさ耳フードをさせる気だったとか?

 駄目だ。

 あいつ、本気で変態だ……っ!

 


 

 このイベント戦闘のポイント。

 それは、盗む以外の行動をしないこと。

 そしてエラクレスが魔法を唱えた直後に盗むこと。

 この二つである。

 この二つの条件を満たせば、本来は”稀に”盗めるうさ耳フードが、”必ず”盗めるようになるのだった。

 いわゆる裏技だ。


 しかし……私が知る攻略情報と、この現実世界に齟齬がないかを確かめる目的もあったエラクレス戦だが、とりあえずはまだ私の知るBF6であったようだ。


 私は、ルーナたんの幸せに責任を持つとディーノさんに約束した。

 前世での、BF6の攻略情報が常に正しいという保証はない。

 だから私は、検証を怠るべきではないと思っている。

 絶対に、幸せにするのだ。

 ノーマルエンドの、あの美しすぎる青空を、ソル君に決して見せるわけにはいかないのだ。


 うん。頑張ろう。

 とりあえず、ジャンは本気で変な趣味がありそうだから、その辺も含めて注意しようと思う。




 焼け焦げた赤髪の男が、悔し涙に暮れながら走り去るのを、ルーナたんだけが心配そうな顔で見送っていた。

「ルーナたん、心配しないでも大丈夫でござる。

 きっとまた雑草みたいにピンピンして現われるに違いないでござるよ」

 私はルーナたんを慰めるように、隣に立って彼女の背中を優しく撫でた。

 エラクレスは、また次も現われる。

 そうして高価なアクセサリーを貢いでくれるのだ。

 なんてありがたいストーカーだろうか。

 死なない程度に幸せになってほしいものである。


「うん、ラビーちゃんがそう言うのなら……」

 頷くルーナたんの上着は早速うさ耳フード。

 めんごいとか、可愛らし、とかあなおかし、な感じで最強にキュートだ。

「えへへ~、ラビーの耳とお揃いでござるねっ」

 白いうさ耳フードなので、私と合わせて白いうさ耳が四つ。

 嬉しくてピコピコ動かしてみたら、ルーナたんも喜んだみたいでフードを被って笑ってくれた。

 あぁ至福……。


「――っぐふっっ!」

 異音に驚いて目を向けると、なぜかソル君とジャンが蹲って悶えていた。

「……本気で時々、殿御は意味不明でござるなぁ」

 まぁソル君はルーナたんの可愛さにノックダウンされちゃったんだろうけど。

 ジャンよ、私は本気で君が分からない。

 変態なのか?

 亜人好きだか獣人好きだか毛皮好きだかのマイナーリーガーなのか?

 否定して欲しいぞ、本気で。

 ポンポン、とディーノさんのゴツゴツ固い掌がラビーの頭を撫でていった。

「……うちの女性達は鈍いのも可愛いな」

 いやディーノさん、なでなでは嬉しいけど、本気で意味不明なんで。



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